「ものまね王座決定戦」

一条真也です。

ブログ「マイマイ新子と千年の魔法」に書いたように、昨夜は長女とDVDを観ました。
今夜は、次女と一緒に自宅でテレビ番組を観ました。普段はまったくといっていいほどにテレビを観ないわたしですが、今夜だけはどうしても観たい番組がありました。
そう、「12年ぶりに今夜復活! ものまね王座決定戦」であります。


12年ぶりに復活しました


ものまね王座決定戦」は、もともと1973年から2000年にかけて放送されたフジテレビ系列の「ものまねバラエティ」番組です。
トーナメント形式で行われ、決勝戦の審査結果発表でチャンピオンが決定します。
番組初期は、演歌歌手や売れっ子アイドル歌手たちの余興的色彩がありました。
その証拠に、初代チャンピオンは森昌子で、その後も藤圭子五木ひろし細川たかし石川さゆり西城秀樹小林幸子野口五郎研ナオコらが王座に就いています。
後にコロッケにものまねされることになる五木ひろし野口五郎清水アキラにセロテープ芸でものまねされた研ナオコなどは、じつは自らがものまね名人だったのですね。
その後、1985年7月2日の「第1回 爆笑!スターものまね王座決定戦」として番組がリニューアルされ、高い視聴率を叩き出しました。そこから生まれたのが、コロッケ、清水アキラ栗田貫一、ビジー・フォーの「ものまね四天王」です。


いっこく堂が一番すごかったです


今夜放映されたトーナメントには四天王のうち、清水アキラ栗田貫一が出場しました。
清水アキラは阪田利夫で「UFO」を、栗田貫一長渕剛の「CLOSE YOUR EYES」で勝負をかけてきましたが、残念ながら2人とも1回戦で敗退しました。
わたし個人としては、いっこく堂秋川雅史千の風になって」が一番すごかったと思います。審査員の菜々緒もコメントしていましたが、腹話術でビブラートを効かせるなんて、もう人間ワザではありません。超能力の域に入っていると思います。
あと、渡辺直美レディー・ガガ「テレフォン」には家族で爆笑しました。
ずっと中間試験の勉強で疲れ気味だった次女の笑顔も久しぶりに見た気がします。
こうやって、人を腹の底から大笑いさせられる芸人さんは、やっぱり偉大ですね。
渡辺直美が出番に備えてスタンバイしているとき、カメラを向けられると剥き出しの腹をボリボリ掻いていましたが、それを見て、「本物のプロだなあ」と感心しましたね。


最後に栄冠を勝ち取った“ミラクルひかる


激戦の末、トーナメントの決勝戦には、カール北川ミラクルひかる、田口佑希の3人が残りました。そして、最後に栄冠を勝ち取ったのは、ミラクルひかるでした。
わたしとしては、「カール北川かな?」と思っていました。
彼のビリー・ジョエルストレンジャー」は、大人好みの渋い芸でした。
でも結局は、ミラクルひかる念願の「世代交代」が実現する形になりました。
もう1人、一般参加の素人だという田口佑希の上手さには驚きました。
東京下町のトンカツ屋さんで働いているそうですが、凄い素人ですね!


この番組には、わたしの好きな高島彩アナ、「とくダネ!」を先日卒業したばかりの中野美奈子アナの2人が揃い踏みしていて、嬉しかったです。
でも、なんとなく寂しかったのは、やはり日本の「ものまね王」と呼ぶべきコロッケが出場していなかったこと。お笑いとしては格付けの低かった「ものまね」という芸の地位を向上させたのは、やはりコロッケの存在が大きいと思います。
真の「世代交代」の時期は、コロッケを破ってからしか訪れません。


わたしのインタビューが掲載されました



さて、もうお気づきかと思いますが、わたしは「ものまね」が大好きなのです。
落語よりも、漫才よりも、漫談よりも、ものまねが好きです。
かつて広告代理店のプランナーとして活動していた頃、フジテレビから取材を受けたことがあります。「ものまね王座決定戦」をはじめ、「オレたちひょうきん族」「オールナイト・フジ」「夕焼けニャンニャン」などが放映されていた当時のフジテレビは視聴率三冠王を誇っていましたが、今後のための提言をしてほしいというものでした。
わたしは、「アマチュア時代の終焉で、これまでの“フジテレビ的手法”は見直しを迫られるだろう」という見出しで、いろいろ語っています。


『フジテレビ解体新書』より



その最後に、わたしは次のように述べています。
「視聴率がいいためか『ものまね王座決定戦』が頻繁に放送されている。あと3年は保つところが、これでは1年で消えてしまいかねない。以前のマンザイブームのときもそうだったが、このような短い間隔で酷使しては芸を磨いている時間がなくなり、あまりいい結果は招かない。ものまねというのは大事に育てていけば、ひとつの文化として確立され得るものだと思う。面白いだけに、もっと長い目でみてもらいたい」
このコメントは、1990年のフジテレビ「リサーチ・レポート」に掲載されました。
わたしは、まだ27歳ぐらいでしたが、よくもまあ偉そうなことを言ったものです。
その後、わたしのインタビュー記事は、『形而上のテレビ百論』フジテレビ調査部著(講談社)および『フジテレビ解体新書』(フジテレビ編成局調査部)にも収録されました。
「あのとき、一条さんのアドバイスは参考になりました」とか「よくぞ言ってくれました」などと、何人かのフジテレビの方から言われた記憶があります。わたしは、今から22年前に「ものまね王座決定戦」の乱発を憂い、警鐘を発したわけです。



そして今夜、12年ぶりに「ものまね王座決定戦」を楽しませてもらいました。よく知っている芸人さんが次々に敗退して残念でしたが、新しい芸人さんをたくさん知りました。
次女には、かつての「ものまね四天王」の話などをしてやりました。
おかげで、昨夜の長女に続いて、今夜は次女との会話も弾みました。
二夜続けて、父娘のコミュニケーションが順調に進んだわけです。むふふ。


2012年7月7日 一条真也