パゴダ再開報道

一条真也です。

ブログ「世界平和パゴダ再開」に書いたように、昨日、休館中だった世界平和パゴダが再開しました。昨夕は、NHKをはじめ各テレビ局のニュースでも報道されました。


パゴダ再開を報道する各紙の朝刊



また、「朝日」「毎日」「読売」「西日本」など、今日の各新聞の朝刊でも大きく報道されています。日本で唯一の上座部仏教の寺院である世界平和パゴダの再開に大きな期待が寄せられていることがわかります。
毎日新聞」には、次のように書かれています。
「今回の活動再開は、休館の長期化を懸念したミャンマー側が新たに『僧侶2人の派遣』『半年間の2人の滞在費負担』『日本とミャンマー企業の寄付金による僧院整備』――などを決定して実現した。
29日から僧侶2人がパコダでの生活を開始。また、日本の有識者などでつくる『ミャンマー・日本仏教交流委員会』(佐久間進委員長)も同日発足した。今後は同委員会が運営の資金確保などを進めるという。佐久間委員長は『課題は多いが、幅広い企業、個人に資金協力を依頼し永続的な活動を実現したい』と述べた」


記者会見で挨拶する佐久間委員長



たしかに佐久間委員長の言葉通り、課題は多いです。
でも、何としてもブッダの本心に近い上座部仏教の聖地を守らなければなりません。
今日の早朝、仙台市三陸沖で震度5強地震がありました。
1年半近く前になる東日本大震災の余震だそうです。
地震津波放射能、いじめ、孤独死・・・・・日本人の心は不安に揺れ動いています。
ミャンマーと日本の友好のためにも、戦没者の慰霊のためにも、また日本人の「こころの未来」のためにも、世界平和パゴダの存在意義は限りなく大きいと言えるでしょう。


再開した世界平和パゴダ



なお、「世界平和パゴダ」についてのお問い合わせは以下までお願いいたします。
ミャンマー・日本仏教交流委員会」事務局
TEL:093−551−9950 
(担当)石田、冨樫


*このブログ記事は、1994本目です。


2012年8月30日 一条真也

図書館コミック

一条真也です。

いま、コミックの世界では「図書館コミック」というジャンルが生まれつつあります。
ブログ『鞄図書館』で紹介したコミックもそうですが、その他にもあります。
その代表作ともいえる名作が、『夜明けの図書館』埜納タオ著(双葉社)です。


ほんのりあったか、図書館コミックの誕生



帯には「その疑問、新米司書がお手伝いします。」と大きく書かれ、続いて「利用者の調べものをサポートする『レファレンス・サービス』。難問・奇問の裏に隠された真実とは・・・!?」とあります。
そう、本書は市立図書館で働く新米司書・ひなこの物語です。
日々、ひなこは利用者からはいろんな質問を投げかけられます。
それも、「ある写真を探している」「光る影の正体が知りたい」などの難問ばかりでした。
こうした疑問に対し、適切な資料を紹介するのも図書館員の仕事なのです。
ひなこは、迷宮入りしそうな利用者の疑問に敢然と立ち向かっていくのでした。
まさに、新感覚の「ライブラリー・コミック」の誕生と言えるでしょう。



本書には、次の4つのエピソードが収められています。
第1話「記憶の町・わたしの町」
第2話「父の恋文(ラブレター)」
第3話「虹色のひかり・・・」
第4話「今も昔も・・・」



いずれのエピソードも、読者の知的好奇心を刺激し、最後はじんわりと感動させてくれるハート・ウォーミングな話ばかりです。そして、そこには少しのヒントでも見逃さずに、なんとか利用者の力になりたいという主人公ひなこのプロ根性があります。
わたしは、ひなこの情熱に「ホスピタリティ」を強く感じました。
そう、ホスピタリティとはけっしてホテルや飲食業だけのものではありません。
お客様のいる仕事なら、どんな仕事にだって求められるものなのです。
若い女性をはじめ、いろんな仕事に就いている人がいるでしょうが、本書を読めばきっと自分の仕事に前向きになれるのではないでしょうか。



本書のアマゾン・レビューの中に、こんな意見がありました。
「こんなに一生懸命になって、本を探してくれる司書がいたら、本を探してもらった人は、どんなにうれしいと思うだろう・・・。この作者さんの描き出す繊細な絵も、紡ぎだす言葉も、一つ一つの人生も、どれもが美しく、この本が好きになりました。『図書館に行きたいな』そう思ってしまう、暖かい物語でした」
わたしも、このレビュアーの方にまったく同感です。
こんなに読後爽やかな気分になったコミックは久しぶりです。
著者には、ぜひ続編を書いていただきたいと思います。


「児童書のソムリエ」の物語



次に紹介する図書館コミックは、『図書館の主』1・2巻、篠原ウミハル著(芳文社)。
ある私立の児童図書館に勤める名物司書・御子柴の物語です。
彼は地味なメガネをかけた無愛想な男ですが、仕事は一流です。
図書館を舞台に「児童書のソムリエ」が活躍します。



この漫画には、「うた時計」「宝島」「幸福の王子」「少年探偵団」「ニルスのふしぎな旅」「貝の火」「クリスマス・キャロル」などの児童書が続々と登場します。
どれもが子どもの頃に夢中になって読んだ本ばかりで、とても懐かしかったです。
子どもの頃、本は魔法のじゅうたんでした。本を開けば、どんな場所にだって、どんな時代にだって、自由自在に飛んでいけました。
本書には翔太という少年が登場します。最初は本などに興味を示さなかった翔太ですが、御子柴のすすめで『宝島』を読み始めます。その面白さのとりこになった彼が「なんか全部読んでしまうのがもったいねーんだよなー」と言う場面があります。
その言葉、涙が出るほど、よくわかりますね。
でも、御子柴は「安心しろ」とひとこと言います。
そして、「『宝島』を読み終わったら、また新しい本を借りに来ればいい。ここには、こんなにお前を待ってる本があるんだ」と言うのです。いやあ、素晴らしいセリフですね。



本書の主人公である御子柴は「児童書のソムリエ」ですが、じつはわたしも「本のソムリエ」と呼ばれることがあります。というのも、新聞や雑誌で「ハートフル・ブックス」および「一条真也の読書塾」といった読書案内を連載しているからです。
これまで、じつに多種多様な本を毎月紹介してきました。時々、北九州の飲食店をはじめ、理髪店とか立体駐車場などに行くと、「この前紹介されていた本を読みました。とても面白かったです!」などと言われることがあるのですが、本当に嬉しいですね。その方の心の養分をプレゼントしたような気分になってきます。



もちろん、わたしが紹介する本の中には児童書も含まれています。
児童書といえば「童話」が思い浮かびますが、わたしには『涙は世界で一番小さな海』(三五館)という著書があります。この本では、アンデルセンの「人魚姫」「マッチ売りの少女」、メーテルリンクの「青い鳥」、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」、そしてサン=テグジュぺリの「星の王子さま」といった童話の読み方について書きました。
まだ読まれていない方は、どうぞ御一読下さい。


世界で最初の本を読みたい



最後に紹介したいのが、『永遠図書館』1・2巻、赤星治人著(講談社)です。
ちょっと絵柄が萌え系で、正直言って、わたしの趣味ではありません。
しかし、「図書館」がテーマということで読んでみた次第です。第1巻の帯には「世界で最初の本を読みたい。」と大きく書かれ、「少女は幼い頃からの願いを胸に、『永遠図書館』の白道司書(ベルベット)を目指す」と続きます。



アマゾンでは、第1巻の内容を次のように説明しています。
「『宇』とは空。『宙』とは時。そこは宇と宙の狭間に在るコネプルシア図書館。そこには全宇宙の歴史と英知が集まるが故に、通称『永遠図書館』と呼ばれています。そして、本が大好きな少女メシェは、幼い頃からの憧れだったその図書館の『白道司書<ベルベット>』を目指しています。いつか、『世界で最初の本』を読む日を夢見て──」
また、第2巻の内容は次のように説明されています。
「全宇宙の歴史と英知が集まるが故に『永遠図書館』とも呼ばれるコネプルシア図書館。その禁断の中央書庫塔の深奥にあるという『世界で最初の本』を 読む夢を抱く白道司書<ベルベット>メシェは、未だ見習いの身。そんな彼女に、白道司書<ベルベット>として独り立ちできるか否かを決する試練の 時が訪れようとしていました──」



まず、『永遠図書館』というタイトルが素晴らしいですね。
わたしの敬愛する作家であるボルヘスの『バベルの図書館』を連想させます。
また、本書のストーリー自体もボルヘスの世界を彷彿とさせる神話とファンタジーの融合のような幻想的な物語になっています。あまりにも超現実的な世界を描いていて、舞台は図書館というイメージを超越してしまっています。
まるで「図書館星」とでも呼ぶべき惑星の歴史を読んでいるようです。


前代未聞! ワンダーランドのカタログ



わたしの監修書に『よくわかる伝説の「聖地・幻想世界」事典』(廣済堂文庫)という本があるのですが、その本の中に紹介したいような図書館でした。
もともと、本とは「ここではないどこか」に連れていってくれる魔法のじゅうたんであり、その本が集まった図書館とはワンダーランドに他なりませんが、本書のようにここまで図書館という場所をファンタジーにしてしまったのは凄いと思います。


*このブログ記事は、1995本目です。


2012年8月30日 一条真也

読書コミック

一条真也です。
ブログ「図書館コミック」で、図書館をテーマにしたさまざまなコミックを紹介しましたが、本そのものをテーマにしたコミックも存在します。
わたしは「読書コミック」と呼んでいるのですが、なかなかの名作です。


運命の本との邂逅を描く傑作漫画


まず、ご紹介したいのは『本棚の神様』深沢かすみ著(集英社)。
帯には「――人生を変えた1冊との邂逅を描く珠玉の読み切り漫画作品集――」と大きく書かれており、続いて「読書ガイドとしても最適!!」「元となった文学作品の解説コラム+BOOKガイド付き」と記されています。
また、カバー裏には次のような内容紹介があります。
「娘を兄に預け歌手の夢を追った母親、ちゃんと理解し合えぬまま姿を消した友人、互いの感情のすれ違いで崩壊寸前の家族・・・・・。さまざまな人生のさまざまな瞬間に訪れる、1冊の本との出会い、ふれあいを描いた漫画作品集」



本書の「目次」は、以下のようになっています。
BOOK  芥川龍之介杜子春
BOOK  太宰治「黄金風景」
BOOK  T・ウィリアムズ「ガラスの動物園
BOOK  野上弥生子「山姥」
BOOK  堀辰雄風立ちぬ
BOOK  八木重吉「定本 八木重吉詩集」
BOOK  イプセン「人形の家」
「BOOKガイド」



『本棚の神様』というタイトルから、わたしは最初、図書館の司書か書店員の物語なのかなと思いました。でも、それは勘違いで、この漫画には主人公はいません。それぞれの物語では、さまざまな人物が登場して、さまざまな人生の辛苦を味わい、そしてさまざまな本と出合って生きてきます。
ブログ『論語』ブログ『ネクスト・ソサエティ』にも書きましたが、文学作品ではないにせよ、わたし自身も本との出合いで人生の活路を得たという経験があります。
人生を変えた1冊というのは確かに実在します。もし、「自分には、そんなものは関係ない」と言う人がいたら、その人はまだその1冊に出合っていないだけでしょう。
その運命の1冊に邂逅するために、人は読書を続けるのかもしれません。
本書に収められた7つの物語は、いずれも読む者の胸を打ちます。
なんというか「人間が生きる意味」のようなものを問うているような気さえします。
これほどの名作が現在絶版中というのが本当に残念です。
本を愛するすべての人におススメしたいと思います。


読書の歓びを繊細華麗に描き出す



続いてご紹介したいのが、『草子ブックガイド』第1巻、玉川重機著(講談社)です。
帯には「青春は、一冊の本からはじまった。」と大きく記され、続いて「読書の歓びを繊細華麗に描き出す幻の漫画家12年ぶりの新作」と書かれています。
アマゾンには、以下のように本書の内容が説明されています。
「内海草子(うつみそうこ)は本を読むのが好きで好きでたまらない中学生。いつも本を読んでいて、本の中の世界にひたっている。内気で、他人と打ち解けるのが苦手な草子にとって、古書・青永遠屋(おとわや)の店主は良き理解者。読んだ本の感想を描いた草子の『ブックガイド』が、店主を喜ばせ、さらには周囲の人々に本を読むことの素晴らしさを伝える。濃密な絵柄で、読書の魅力を最大限に表現する」



どこにも居場所がない草子は、東京の小さな古書店で万引きを繰り返します。
その行為そのものは立派な犯罪行為であり、けっして許されることではありません。
しかし、草子の孤独に気づいていた店主は、彼女の良き理解者となります。
草子は、青永遠屋を通じて出会った本を、ひたむきに読み解きます。そして、その感想をメモに記すことによって、徐々に人々や世の中と結びついていきます。
草子独自の「ブックガイド」は、読んだ本のポイントを繊細にすくいあげ、イメージ豊かに語り尽くします。それも、草子が本の中に登場するキャラクターに毎回なりきるのです。本の登場人物になるきることによって、草子は鮮やかな「読み」を披露します。



この第1巻には、『新約ロビンソン漂流記』『ティファニーで朝食を』『山月記』『名人伝』『山家集』などが登場します。いずれの話もそれぞれ面白いのですが、その中でも特に興味深かったのは、『ティファニーで朝食を』のエピソードです。
草子は、この本でブックトークに挑戦するのです。
ブックトークとは、テーマを1つ決めて、それに関連した本を数冊選び、それぞれの本につながりを持たせながら紹介していく方法です。
語りのうまい司書が話術を駆使して本を紹介していきます。
司書の代わりに、児童や生徒がやることもあります。



このブックトークの場面を読んで、わたしは現在流行中の「ソーシャル・リーディング」の原点であると思いました。「ソーシャル・リーディング」というのは、インターネットなどで多くの人と本の感想などを共有する読書法です。
本好きの人は1人で読書をしますが、それだと寂しくて、普通は何か共感したいという欲求があるものです。ということから、現在はいくつかのソーシャルリーディングサイトがインターネット上に作られています。その原点こそ、本書で草子が行ったブックトークなのです。読書というと、なんだか孤独な行為のように思いがちですが、読書によって他人とつながることもできるのです。本書は、そのことを教えてくれます。
第2巻の刊行が「待ち遠しい」と心の底から思います。


*このブログ記事は、1996本目です。


2012年8月30日 一条真也