甘い創造集団

一条真也です。

大阪に来ていますが、これから京都に向かいます。
新大阪駅で、新進気鋭の編集プロダクション「クリエイティブ・スイート」の薮内健史社長と苫広健史さんに会いました。二人は、奇しくも同じ名前です。



                   左が苫広さん、右が薮内さん。


「クリエイティブ・スイート」とは、一緒に2冊の本を作りました。
『世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本』と『「天国」と「地獄」がよくわかる本』です。
ともにPHP文庫で、わたしは監修者でした。
どちらも、項目選びでかなり難航し、苦労しました。
特に『「聖人」「魔人」』では、人選そのものが非常にデリケートな問題であり、誰をリストアップするかで意見が分かれました。
たとえば、ブラヴァツキー夫人やグルジェフなどのオカルティストは「聖人」「魔人」のどちらに入れるべきなのかといった問題です。また、イラストで描かれた孔子の顔が険しすぎて悪人に見えたので何度も描き直してもらいましたし、老子聖徳太子についての記述でも葛藤がありました。
なにしろ、「聖人」とは多くの人びとが信仰の対象にしているわけですから、いいかげんなことは書けませんし、ましてや編集上の都合で勝手に「魔人」に振り替えることなど絶対にできません。
わたしも熱くなって、かなり厳しい言葉を彼らに発したりもしました。
「本作りを甘く見るなよ!」と。
でも、その結果、納得のゆく本作りができました。
そして、若い彼らとの間に戦友意識のようなものが芽生えました。

新大阪駅構内のビアガーデンで、打ち合わせと雑談をしました。
薮内さんは、現在の出版界を憂いていました。
数字の裏づけのない企画しか通らなくなり、冒険ができなくなったそうです。
彼には、かつて、「一冊の本を読んで、自殺を思いとどまる人もいれば、新たな挑戦をはじめる人もいる。本には人間を変える力がある」といった内容のメールを送ったことがありました。
その言葉をずっと憶えてくれていて、初心を忘れないようにしているそうです。
わたしも嬉しくなりました。

苫広さんは、すごく気のつく好青年です。
最近、結婚されたそうです。とても幸せそうでした。
二人は生ビールを、わたしはシーバス・リーガルのハイボールを飲みながら、いろんな本の話をしました。
若い出版人たちの本への情熱を感じました。大阪人は、やっぱり熱いですね。
また、この二人と本を作りたくなりました。
よろしく、たのんまっせ!


2010年2月19日 一条真也