無縁社会レポート

一条真也です。

今日は、社員からのレポートを読みました。
テーマは、先日の平成心学塾で取り上げた「無縁社会」についてです。
それぞれがNHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」を観て、その感想を書いてもらいました。
まずはサンレー本社の課長以上の社員から数十本のレポートがあがってきました。
次は、本社以外の各事業部の社員からもレポートを書いてもらいます。


                 たくさんの「衆知」が集まりました


わたしは、それらのレポートを一つひとつ丁寧に読みました。
みんな、まず番組に衝撃を受けたことを正直に告白し、一つ歯車が狂えば、自分も氏名不詳の行旅死亡人となり、無縁墓地へ埋葬ということになるかもしれないという事実を改めて痛感していました。まさに「他人ごと」ではないのです。
そして、みんな、自分たちに何ができるかを考えてくれました。



たとえば、ある課長は、離れて一人ぐらしをしている母親を孤独にさせないために、「サムタイムズ」というファミリー新聞を不定期に発行しているそうです。
創刊号は、奥さんが直接おばあちゃんを取材し、「おばあちゃんの一日」というテーマで発行しました。発行先は、その課長の母、妹夫婦、息子、甥、姪(妹の子)夫婦で、発行部数は5部です。
第2号では姪、第3号では甥のお嫁さんを取り上げて発行したそうです。
こうやって、家族や親族を忘れないようにしているのですね。


また、ある課長が住む町内では、いまだに隣組が存続しているそうです。
戦前からある地域共同体ですね。
隣組の組長さんは、組内にある街灯の交換、組費の徴収、そして回覧板を管理します。
特長的なのは、組内で亡くなった人がいれば、町内会長さんと協力して、すぐさま地域社会にそのことを知らせるという点です。
誰がいつ亡くなって、通夜・告別式の日時や会場のお知らせを公民館長さんがマイクで放送するというのです。
そして、必要があれば、通夜・告別式のお手伝いをするのです。


さらに、ある部長は「死後、葬ってくれる人もお骨を引き取ってくれる人もいないとは、なんとも情けないし、やりきれない」と書き出しながらも、最後には「家族の幸せを願い人生の節目を祝う、子供の成長を祝い、お年寄りの長寿を祝う、そのような家庭で育った人は、家族愛や隣人愛も自然な形で育まれているように思う」と結んでいました。
わたしは、すべてのレポートを食い入るように読みました。
大変勉強になりました。
わたしも知らなかったことがたくさん書かれていました。



もともと、わが社はラーニング・オーガニゼーションとしての「学習する組織」をめざしていますが、各自の考える力は非常に高いレベルにあると社長ながらに思います。
『むすびびと』(三五館)や『最期のセレモニー』(PHP)の二冊にまとめられた体験談の筆力にも感服したことをおぼえています。
何よりも、「人間尊重」という大ミッション、そして「冠婚葬祭を通じて良い人間関係作りのお手伝いをする」という小ミッションを社員のみなさんが理解してくれることは何よりの喜びであり、わが社の強みだと思います。
松下幸之助は「衆知」というものの重要性を力説しました。どんなに賢い一人の人間の知恵よりも、多くの人間の知恵を集めることが大切だと説いたのです。
幸い、わが社には「衆知」を集められる企業文化があります。
本当に、ありがたいことです。
社長として、わが社の社員を心から誇りに思います。ぜひ、わが社のみんなの「衆知」で「無縁社会」への具体的な方策を考えたいと思います。



わが社は、北九州市に本社を置いています。北九州市は日本でも高齢率が高く、65歳以上の高齢者が現在24万人いるとされています。
一人暮らしの方も多く、団地などに住む独居老人はどのように考えているのか、自分たちにとっても身近な問題だと思っている社員も少なくありませんでした。
マンションなどでの孤独死は、今後も増加していくとされています。防犯や個人情報保護法、プライバシーを重視し、煩わしさから他者との関わりを断った結果、人間関係が希薄になったのです。
これは世界共通の問題です。ですから、ある意味で世界一の高齢化都市である北九州市において、「良い人間関係作り」のお手伝いができれば、世界中の人々を救うヒントになると思います。
いくら大風呂敷と言われようが、わたしは「人類を救う」のだという高い志をもって会社を経営しています。

昨日、(社)全日本冠婚葬祭互助協会から連絡があり、わたしに広報・渉外委員長をやってほしいと言われました。
山下副会長(117社長)から直々に連絡があったのですが、特に独居老人の孤独死の問題に取り組んでほしいとのこと。これ以上、仕事が増えると時間破産しそうですが、これも自分の使命と思って頑張ります。
孤独死のみならず、無縁死、非婚化、そして葬式無用論・・・冠婚葬祭互助会が社会に対してどのようなことができるのか。広報・渉外委員長として取り組むべき問題は、すべて日本人、そして人類全体の幸福につながっています。
わたしは、今こそ、「相互扶助」を理念とする互助会の出番ではないかと思います。


2010年2月27日 一条真也