ムーンサルトレター

一条真也です。

東京の寒さから風邪を引いてしまったようです。
ものすごく喉が痛く、熱もあるみたいです。
明後日は、日本経済新聞社主催の「事業承継フォーラム」でパネリストを務めますので、なんとか早めに治さないと。でも、体に力が入りません。
やっとの思いでパソコンを開くと、新しい「ムーンサルトレター」がUPしていました。
宗教哲学者の鎌田東二先生と毎月1回交わしている文通です。
満月の夜に手紙を交わすから、ムーンサルトレターなのです。

  
                 世にも不思議な満月通信


最初、鎌田先生は占星術研究家の鏡リュウジさんと満月の文通をされていました。
「カマタトウジ」と「カガミリュウジ」、なんとなく二人の名前は似ています。
さらに二人の顔も似ているということから、ムーンサルトレターを始められたそうです。
そのうち、鏡さんは「時の人」となって超多忙になりました。
なかなかレターを書く時間が取れなくなり、鎌田先生は「Tonyのムーンサルト独りレター」というのを書いておられました。
でも、やはり一人では寂しかったのでしょうか。
次なる文通相手として白羽の矢を立てられたのは、わたしでした。

こうして、2005年10月18日の満月の夜、わたしが第1信を書きはじめました。
鎌田先生が20日に返信を書かれて、ついに「ShinとTonyのムーンサルトレター」がスタートしたのです。
レター・ネームの「Shin」というのは鎌田先生がつけて下さいました。
もちろん「一条真也」の「真」から取っているのですが、メソポタミア神話の最古の神である月神シンの意味もあるそうです。
「Tony」というのは、鎌田先生の前世の名前だそうです。なんでも、先生がパリのセーヌ河のほとりを歩いていたとき、自分がかつてフランス人であったことを思い出されたとか。そのときの名前が「トニー・パリ・カマターニュ」(笑)というのだそうです。
「ふんどしロック」の鎌田東二の前世がフランス人というのは、ちょっとピンと来ませんけどね。(苦笑)


さて、記念すべき第1信の冒頭で、わたしは「敬愛する鎌田先生の満月レターのお相手に指名していただき、正直おどろいています」と書き出しました。
そして、前任者の鏡さんがその第1信に「満月のごとに書簡を往復させようなんて、なんて素敵なアイデアなのでしょうか。こんなロマンティックな企画の相手に僕を指名してくださったこと、とても光栄に思います」と書かれてていたことに触れ、今の自分もまったく同じ気持ちであることをお伝えしました。

あれから早いもので、もう55信です。
鏡さんが全部で41信でしたが、わたしはとてもそこまでは続けられないだろうと思っていました。じつは途中でフェードアウトすることも想定していたのですが、いまや4年半を超え、5年目になろうとしています。よく、ここまで続いたものです!


一度、鏡リュウジさんが小倉の松柏園ホテルに来てくれてお会いしたことがありました。鎌田先生抜きで新旧二人の文通者がコーヒーを飲んでいるのは、まるで夫抜きで前妻と後妻が直接会っているかのような不思議な感覚でした。(笑)

               レターの前任者である鏡リュウジさんと


進化論のチャールズ・ダーウィンの祖父にエラズマス・ダーウィンという人がいました。
彼は月が好きだったようで、18世紀、イギリスのバーミンガムで「ルナー・ソサエティ(月光会)」という月例対話会を開きました。まさに、鎌田先生も鏡さんもわたしも、現代のルナー・ソサエティのメンバーなのかもしれません。

4年半の間、いろいろな話を鎌田先生としました。
お互いの著書のこと、プロジェクトのこと、考えていること。
話題も政治や経済から、宗教、哲学、文学、美術、映画、音楽、教育、倫理、さらには広い意味での「世直し」まで。

まあ、わたしがある話題に終始すれば、鎌田先生はまったく違う話題に終始するといった形であまり噛み合っていないことも多いですが(笑)、これからもお互いが言いたいことをつれづれなるままに書き、たまにはスウィングしながら、少しでも「楽しい世直し」につながっていけばいいなと思っています。


わたしが商売人の身であるにもかかわらず、さまざまな文化人や学者の方々とお話しても何とかついて行けるのは、鎌田先生との文通で展開している議論のおかげかもしれません。わたしには、「自分は日本を代表する宗教哲学者と文通を続けているのだ」という自負と、「だから誰と対話することになっても怖くない」という自信があります。

鎌田先生、いつも胸を貸していただき、本当にありがとうございます。
とりあえずは、60回目=5周年に向けて、よろしくお願いいたします!


最後に、このブログをお読みになられている出版関係者の方々にお願いがあります。
ムーンサルトレター」は必ず面白い本になりますので、ぜひ単行本化をお考え下されば幸いです。


2010年3月6日 一条真也