幸せを呼ぶコイン

一条真也です。

ある読者の方から素敵なプレゼントをいただきました。
小さなコインのストラップなのですが、これがなんと「幸せを呼ぶコイン」だそうです。
その正体は、デンマークの現行通貨である1クローネコインです。
これが、世界で唯一ハートの刻印が入ったコインなのです。
幸せのシンボルであるハートマークが刻印されたコインということで、幸せを呼び込むラッキーチャームとして大人気なのだそうです。
これはもう、わが「ハートフル・ブログ」で紹介しなければ!
わたしも早速、わがケータイにストラップを取り付けました。


            ハートマークが刻印されたデンマークのコイン


デンマークは、「世界一幸せな国」として知られているそうです。
「世界一幸せな国」といえば、先日のブログでも紹介したブータンが思い浮かびますが、デンマークもまた幸福大国のようです。その根拠とは何か。
2006年7月、英国国立レスター大学で社会心理学を研究するエードリアン・ホワイトという人が、健康・財産・教育などの各種の統計をもとに「幸福マップ」を発表しました。
それによれば、178カ国中、世界で最も幸せ指数が高い国はデンマークでした。なるほど、物質的には最貧国の一つであるブータンの幸福度はあくまで精神的な自己評価ですが、デンマークの幸福度には財産など物質的なファクターも入っているわけですね。



2008年、米国ミシガン大学政治学を研究するロナルド・イングルハートという人が中心となって実施した国民の幸福度調査でも、デンマークが「世界一幸せな国」であることが明らかになりました。
「World  Values Survey」と名づけられたこの調査は、世界52カ国の35万人を対象に、「いま自分が幸せか」「自分の最近の生活にどの程度満足しているか」という2つの質問を行ったものだとか。
この他、さまざまな要因から「幸福度」を定量的に調査し、デンマークを「世界一幸せな国」として判定したそうです



デンマークといえば、わたしにはハンス・クリスチャン・アンデルセンの名前が真っ先に浮かびます。そう、童話の王様アンデルセンですね。彼ほど、自分の作品が世界中の人々から読まれた作家は存在しないのではないでしょうか。
そのアンデルセンは、幸福の本質というものを考えるヒントとなる言葉を残しています。「涙は人間がつくるいちばん小さな海」というものです。この言葉は、アンデルセンによる「メルヘンからファンタジーへ」の宣言ではないかと、わたしは思います。
というのは、グリム童話に代表されるメルヘンはたしかに人類にとっての普遍的なメッセージを秘めています。しかし、それはあくまで太古の神々、あるいは宇宙から与えられたものであり、人間が自ら生み出したものではありません。
涙は人間が流すものです。どんなときに人間は涙を流すのか。それは、悲しいとき、寂しいとき、つらいときです。それだけではありません。他人の不幸に共感して同情したとき、感動したとき、そして心の底から幸せを感じたときではないでしょうか。
つまり、人間の心はその働きによって、普遍の「小さな海」である涙を生み出すことができるのです。人類をつなぐことのできる「小さな海」をつくることができるのです。



これは、人類の歴史における大いなる「心の革命」であったと思います。
ブッダ孔子ソクラテスイエスといった偉大な聖人たちが誕生し、それぞれの教えを説いたときもそうでしたが、アンデルセンがみずから創作童話としてのファンタジーを書きはじめたときも、同じように人類の心は救われたような気がしてなりません。
わたしたちは、自分で小さな海をつくることができます。
その小さな海は大きな海につながって、人類の心も深海でつながります。
たとえ人類が、宗教や民族や国家によって、その心を分断されていても、いつかは深海において混ざり合うのです。
まさに、その深海からアンデルセンの人魚姫はやって来ました。人類の心のもっとも深いところから人魚姫はやって来ました。彼女は、人間の王子と結ばれたいと願いますが、その願いはかなわず、水の泡となって消えます。
  

アンデルセンの想いは、後世のファンタジー作家たちにも受け継がれました。
メーテルリンク宮沢賢治サン=テグジュペリたちです。
『人魚姫』『マッチ売りの少女』『青い鳥』『銀河鉄道の夜』『星の王子さま』の5つの童話は、じつは1つにつながっていると思います。
それらの童話には、宇宙の秘密、いのちの神秘、そして人間として歩むべき道などが、やさしく語られています。
これらの童話は、人類すべてにとっての大切な「こころの世界遺産」かもしれません。
そして、そのキーワードは2つあります。「幸福」と「死」です。
詳しくは、『涙は世界で一番小さな海』(三五館)をお読み下さい。
それにしても、人間の幸せを追求した作家アンデルセンを生んだデンマークのコインが世界中の人々に幸せを呼ぶ・・・・・なんと素敵な話でしょうか!


             「幸福」と「死」を考える、大人の童話の読み方


2010年4月8日 一条真也