柔道vs空手

一条真也です。

柔道と空手は宿命のライバルです。
ライオンとトラ、カブトムシとクワガタがライバルであるのと同じくらいの宿敵です。
平家と源氏、東京と大阪、巨人と阪神、早稲田と慶應、ソバとウドン・・・、何でもいいですが、ある人がそのどちらを好むかで当人の「こころ」がわかるような本質的な二項対立を、柔道と空手には感じますね。
オリンピックの正式種目であり警察武道としても採用されている柔道には、保守的なイメージがあります。
そもそも「徒手空拳」を意味する空手には、アナーキーで革新的なイメージがある。
柔道は体制派、空手は反体制派といったところでしょうか。
一方、「柔道ストラテジー」で示されるように、柔道は相撲のアンチテーゼでもあります。
相撲も柔道も空手も、単なる格闘技や武道のジャンルを超えた一種の思想なのです。
いつか、『相撲、柔道、空手』といったタイトルの日本人論を書いてみたいです。


柔道王・木村政彦と空手王・大山倍達


特に柔道と空手はともに同じ白い道衣を着る武道であり、永遠のライバルですね。
柔道小説の金字塔である冨田常雄の『姿三四郎』や梶原一騎原作の『柔道一直線』では、空手家は完全に悪役として描かれ、正義の柔道家に投げ飛ばされてしまいます。
反対に、同じく梶原一騎原作の『空手バカ一代』では、柔道家は空手家に一方的にやられる負け役でした。
あと重要なのは、不世出の柔道家とされた木村政彦力道山が破ったことです。
「昭和の巌流島」と呼ばれたその一戦はリアルファイトではなくプロレスでしたが、力道山が柔道王・木村を倒した技が空手チョップだったことが大きかった。
力道山は空手出身ではなく、相撲出身でしたが、空手チョップという必殺沢の名に「空手」がついていたことによって、大衆は幻想を抱いてしまったのです。
そう、空手が柔道よりも強いと思ってしまったんですよぉぉぉぉぉ!(ターザン山本風に)
では、本当はどちらが強いのか?!
わたしは、アントニオ猪木が「格闘技世界一決定戦」を展開していた頃に、その相手であったルスカ、アレン、モンスターマン、ランバージャック、そしてウィリー・ウイリアムスといった挌闘家同士を闘わせるシミュレーションをよく想像上でやりました。
モンスターマンやランバージャックは正しくは「マーシャルアーツ」という競技の選手でしたが、当時は「全米プロ空手」と紹介されていたのです。
「熊殺し」ウィリーは、正真正銘極真空手の猛者でした。
ルスカvsモンスターマン、アレンvsランバージャック、ルスカvsウィリー・・・・・。
世界の荒鷲坂口征二も元・柔道日本一として、異種格闘技路線に参戦してきましたが、モンスターマンに敗れ、ランバージャックには勝ちましたね。
柔道少年だったわたしは、真剣勝負でやれば猪木よりも絶対に坂口のほうが強いと信じていましたので、個人的には坂口vsウィリーが見たかったですね。



「PRIDE11」で激突した小川vs佐竹



それから時が過ぎて、夢のような「柔道vs空手」のドリームマッチが実現しました。
2000年10月31日の「PRIDE.11」での小川直也vs佐竹雅昭です。
平成の「柔道王」と「空手王」の直接対決が実現したのです。
いやあ、もうこの試合には、むちゃくちゃコーフンしましたね。
当時の小川は「破壊王橋本真也をセメントで破った「暴走王」!
また、佐竹は日本人最強のK−1戦士であり、マンガにもなった「となりの格闘王」!
なんとなく「大言壮語」を売り物にする2人のキャラが似ていたこともあり、大いに盛り上がりました。後に吉田秀彦と佐竹の試合も実現しましたが、そのファンタジー性からいって小川vs佐竹の比ではありませんでしたね。
試合前に、なんと、われらが桑田佳佑がリングに登場して、2人にオリジナル応援歌である「PRIDEの唄」を歌ったこともなつかしい思い出です。素晴らしい名曲でした。


2010年4月10日 一条真也