灯をともす

一条真也です。

昨日の株式会社はせがわの長谷川社長に続いて、今日も精神文化産業の大物である1人のお客様がサンレー本社に来られました。
ロウソク製造・販売最大手であるカメヤマ株式会社の谷川社長です。


               ロウソクのカメヤマの谷川社長と


冠婚葬祭業を営むわたしは、結婚式でも葬儀でもロウソクが必ず使われることを昔から興味深く思っていました。
結婚披露宴では、キャンドル・サービスや、最近ではキャンドル・リレーといった演出も普及しています。ちなみに、キャンドル・サービスという演出は、カメヤマの社員さんの結婚式で初めて行われたそうです。
葬儀はもちろん、法要や追悼式、供養祭などでもロウソクは欠かせません。
さらに言えば、神道でも仏教でも儒教でも、ユダヤ教でもキリスト教でもイスラム教でも、その宗教儀式においてロウソクはきわめて重要な役割を果たします。
そういえば、ゾロアスター教という火そのものを崇拝する宗教もありました。
あらゆる宗教儀礼において、火が使用されるのです。
照明は火の模倣からはじまっています。焚き火以前にも、自然界には火山もありましたし、山火事のような自然発火もありました。
そのように、もともと存在していたものを人間がコントロールできるようにして製品化し、生活に活かしてきたものがロウソクなどの照明なのです。



イギリスの科学者ファラデーは、少年少女たちに「ロウソクのような人になってください」と呼びかけました。このメッセージは、わたしたちすべてが「人として、どう生きるか」という道を示してくれています。
ロウソクは自らの身を細らせて燃えるもの。自己を犠牲にして周囲を照らすものです。
ただひたすら他者に与える存在であり、それは「利他」の実践に他なりません。
人間がみなロウソクのように生きれば、世界は平和になるはずです。



そして、人間はロウソクの灯をともさなければならないと思います。
逆に言うと、人間は灯をともすことしかできないのです。
太陽は光を放ちます。月や星は、その太陽光を反射します。
しかし、地上の人間にできることは灯をともすことだけです。
それは、ささやかな灯かもしれません。
風が吹けば、すぐに消えてしまうかもしれません。
それでも、ともさなければならないのです。
すべては一燈から。
それが万燈になり、大いなる文化や文明がつくられてゆくのです。
灯は人間の営みそのものです。



昨年刊行された『灯をたのしむ』(現代書林)では、谷川社長と対談させていただきましたが、そのようなロウソクに対する思いを語りました。
わたしも、ぜひロウソクのように「利他」を実践する人間になりたいと思います。
最後は、「これからも日本人の心に灯をともしましょう!」と言って、谷川社長と固い握手を交わして別れました。


                  ハートフルライティングのすすめ


2010年4月13日 一条真也