韓国からの訪問者

一条真也です。

東京から北九州に戻ってきました。
空港からサンレー本社に車で駆けつけると、韓国からのお客様たちが待っていました。
旧知の仲である張萬石さんを中心とした5名の方々です。


          韓国からのお客様。帽子をかぶった人が、張萬石さん。


張さんは、韓国駐日大使館の一等書記官・参事官です。
また、大田保健大学の葬礼指導科の兼任教授でもあります。
韓国には、葬礼指導科を設置した大学が、なんと10校もあるのです。
葬儀文化や歴史などを教えているそうです。
さすがは「礼」を重んじる儒教の国!



あとの4名の方々は、韓国最大の財閥企業である三星サムスン)グループのサービス事業の最高責任者の方々でした。
韓国で葬祭事業のビッグ2といえば、三星と現代(ヒュンダイ)グループです。
それぞれが、大型のセレモニーホールを展開しています。
日本でいえば、三菱とトヨタが葬祭事業をやっているようなものですね。
ですから、韓国における葬祭業の社会的地位は非常に高いのです。



わたしは、韓国の葬祭業界とは縁があります。2005年12月16日に韓国から北九州市のわがサンレー本社を訪問する視察団がやってきました。
ちょうど、その頃の韓国の葬儀環境は激変していました。
土葬が一般的ですが、近年は土地不足などで火葬が増えており、両大学を中心に「火葬先進国」である日本の視察が企画されたのです。
大田保健大学と昌原専門大学の「葬礼指導科」の教授10名を含む、僧侶、学生ら52名の視察団です。
教授陣の顔ぶれは、哲学と宗教学の混成軍といった感じでした。
レセプション・パーティーで挨拶をしましたが、以下のような内容の話をしました。


北九州市は日本でもっとも韓国に近い都市です。
わたしは少年時代、海をながめるのが大好きな子どもでした。
少年にとって、海の向こうはいつだって憧れの国であり一種の理想郷ですが、それが韓国だったわけです。
そのせいか、わたしはキムチ、ナムル、ビビンバ、チヂミ、サンゲタンといった韓国料理が大好物ですし、韓国焼酎の「真露」などは1人で軽く1本空けてしまいます。
テレビドラマや映画においても、当時の日本は大変な韓流ブーム。
そして、「日本人から一番愛されているのはヨン様で、一番憎まれているのは将軍様です」と述べました。
韓国の人々に馬鹿受けすると思いきや、みなさん一斉に複雑な顔をされたので、慌てました。南北に分かれているとはいえ、やはり同じ民族という意識があるのでしょうか。


その後、「しかし、日本は韓流ドラマなど及びもつかない素晴らしい贈り物を二つも朝鮮半島からいただいています」と前置きし、「それは、仏教と儒教です。この日本人の心の二本柱ともいうべき両宗教は、中国から朝鮮半島をわたって、日本に入ってきました。そして、もともと日本にあった神道と共生して、三者は互いに影響し合い、また混ざり合いながら、日本人の豊かな精神文化をつくってきました。その果実が冠婚葬祭です」と述べました。
その後、わたしは「日本の葬儀文化」という講演を90分ほどやりました。


                  2006年の韓国講演


その翌年、招聘を受けて韓国に行ってきました。
韓国の新聞社や大学から招かれ、講演および特別講義を行いました。
プレスセンターやいくつかの大学で、日本の冠婚葬祭について語るとともに、韓国の冠婚葬祭業の人々と親交を結びました。
さらに、その翌年の2007年には、拙著『ロマンティック・デス』(幻冬舎文庫)のハングル版が出版され、その出版記念講演が企画されました。
わたしの本がハングルに翻訳されたのは、『リゾートの思想』(河出書房新社)と『ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー)に続いて3冊目でした。
なお、『ロマンティック・デス』のハングル語訳は張萬石さんがやって下さいました。
三星グループの方々から、「また韓国で講演して下さい」とのお言葉をいただきましたので、今年はその機会があるかもしれません。
あと、張さんが『最期のセレモニー』(PHP)を読まれたようで、「感動して泣けて仕方がありませんでした。大変な名著です!」と言って下さったのが嬉しかったです。
張さんには、『葬式は必要!』(双葉新書)と『また会えるから』(現代書林)の2冊の新刊をプレゼントしました。
三星グループがスポンサーになって、『最期のセレモニー』を映画化かドラマ化してくれると面白いのですが。
個人的にも、ペ・ヨンジュンイ・ビョンホンが演じる“おくりびと”が観たいなあ!


                  2007年の韓国講演


               各地の大学で講演し、歓迎を受けました


          2007年の『ロマンティック・デス』ハングル版サイン会で



2010年4月22日 一条真也