ムーンウォーク

一条真也です。

昨夜から、「月」に関する映画や音楽の話題を書いてきました。
こうなると、もう頭の中は月で一杯です。
空に満月が浮かんでいると想像すると、どうも落ち着きません。
まさに、わたしこそ「月に囚われた男」です。
そこで、思い浮かぶのが地球上にいながら月面を歩いた一人の人物。
そう、ムーンウォークを発明したマイケル・ジャクソンです!
いわずと知れた、キング・オブ・ポップですね。
彼には、その名も「ムーンウォーカー」という映画もあります。
自ら主演・原案・製作総指揮をした唯一のミュージカル映画でしたね。


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昨年、50歳で亡くなったマイケル・ジャクソンほど、不思議な人はいませんでした。
異様なエピソードを多数残していることが示すように、ある意味で、彼は魔人でした。
少年たちへの性的虐待への疑惑もずいぶん話題となりましたが、わたしが記憶しているのは「エジプトの少年のミイラ」を7億円で購入したり、映画「フリー・ウイリー」で使われた体長8メートルのシャチを1億円で購入したこと。
そして、アインシュタインの両目を7億円で購入申し込み、「エレファントマン」のモデルとして知られるジョン・メリックの頭蓋骨を1億円で購入申し込みをしたという仰天ニュースでした。ともに申し込みは断られましたが、その行為は「どうしちゃったんだ、マイケル!」と思わせるショッキングなものでした。
その他にも、1ヵ月の生活費が2億円とか、おもちゃが大好きで1ヵ月のおもちゃ代が3000万円だとか、私設遊園地「ネバーランド」を作って、そこに少年たちを呼び込んでいるとか、とにかく怪しい噂が飛び交っていました。
まさに「魔人」です。わたしが監修した『世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本』(PHP文庫)に載せたいくらいでした。
しかし、マイケルは単なる魔人ではなく、「聖人」としてのたたずまいも見せていました。実際、彼の音楽には「世界平和」や「地球環境」といったメッセージがふんだんに込められていますし、彼の存在そのものが人種、国籍、性別を超越するものでした。


作家の五木寛之氏は著書『人間の運命』(東京書籍)で、マイケルの「聖人」性について触れています。
まず五木氏は、かの「ムーンウォーク」を取り上げ、街頭での少年たちのダンスからヒントをえたといわれる幻想的な動きに驚嘆しています。
そして、「歩く」という人間の古代からの動作に、まったく予想もつかなかった異様なイメージを創り出したことが、とんでもない革命のひとつだったのかもしれないとして、次のように述べています。
「その滑るようななめらかな動きは、水上を歩行する奇蹟の人の動きのようでもある。
月面を跳ねつつ移動する宇宙飛行士のぶざまな歩き方とくらべると、はるかに『月を歩く』感覚にちかい。
月へいく、そして月面を歩く、ということは、いまはまだ普通の人間には不可能なことだ。できないことを憧れる人間は多いが、それをマイケル・ジャクソン表現者として実現した。
彼は日常的に多量の薬物を必要としたという。
過度の整形や、皮膚移植や、漂白作用の反応が、それを必要としたという見方もある。
しかし問題は彼が運命をこえて『月をめざした』人間であったことにあるのだろう。」
いやあ、さすがは五木寛之氏です。
そう、マイケルの正体とは「月をめざした」人間だったのです!
そして、学生の頃に六本木のディスコでぎこちないムーンウォークを試みていたわたしは、あのとき、マイケルと一緒に月面を歩いていたのです!
月をめざしたマイケルの魂は、地球を離れて、いまは月に在るに違いありません。
次回の「月への送魂」の際には、ぜひ、マイケルの姿を思い浮かべたいと思います。




                  偉大なり聖人!恐るべし魔人!


2010年4月29日 一条真也