実家の書庫

一条真也です。

今日は、「母の日」ということで実家を訪れました。
そこで、久しぶりに実家の書庫に入り、しばし父と読書談義をしました。
実家の書庫は昨年新築され、「気楽亭」と名づけられています。


                  実家の書庫「気楽亭」


設計は、日銀の白川方明総裁の弟さんである白川直之さんです。
以前、ブログ「アーキテクト」で紹介した方です。
前庭には、円形の御影石の舞台があり、夜になるとそこに月が映し出されます。
その御影石に映った月をながめながら、父は酒を飲み、本を読むのです。
なんというルナティックぶり!
まさに気楽亭の主は、「気楽な父さん」じゃありませんか!
はっきり言って、うらやましい。
わたしの月狂いは、完全に遺伝なのであります。


                  「気楽亭」の入口付近

                約7万冊の蔵書が収められています

                     美術書コーナー                  

                    個人全集コーナー


あらゆる本を面白く読める方法』(三五館)を読んだ方や、わたしのオフィシャルサイト「書斎公開」を見た方が、「一条さんの書斎はすごいですね。本がたくさんありますね!」とよく言われます。
でも、親父の書斎や蔵書に比べれば、文字通り「子ども」みたいなものです。(笑)
父も母も読書家で、昔から自宅は膨大な本であふれ返っていました。
各種の全集もあったので、わたしは、それらを片っ端から読みました。
中学2年生のとき、岩波から新しい『芥川龍之介全集』が出たので、それを小遣いで毎月購入。それで、配本された本を1ヶ月程かけて読むというリズムが身につきました。
芥川全集を読破した勢いで、家にあった『漱石全集』にも取り掛かりました。
虞美人草』とか『明暗』とかは難しかったですが、必死にページを繰って、なんとか目だけは通しました。この「漱石と芥川の全集を読破した」という経験は、自分の大きな自信になったことを記憶しています。
「これで、オレは一人前の本読みになれた」という実感が湧いてきました。一人の作家の全集を読破できたということは、漱石や鴎外だろうが、ゲーテドストエフスキーだろうが、もう誰の全集でも読めるわけですから、中学生ながら変な自信を持ったのです。
そして、「せっかく中学で芥川の全集を読んだのだから、これから小説を書いて、高校時代には芥川賞を最年少で取ってやろう!」という途方もない妄想を抱くに至りました。この妄想は、もちろん実現しませんでしたが……。



高校に入学すると、漱石の次は『鴎外全集』を何とか読み、運命の『三島由紀夫全集』に出会います。高校時代は、とにかく三島にかぶれたのと同時に、澁澤龍彦や国内外の幻想文学にも親しみました。
国書刊行会の『世界幻想文学大系』とか『ドラキュラ叢書』『ゴシック叢書』などが最大の愛読書で、創土社の怪奇幻想シリーズや、晶文社の『文学のおくりもの』、月刊ペン社の『妖精文庫』、早川書房の『異色作家短編集』なども読みまくりました。
これらの本は、今では古書市場でかなりの高価格になっているようです。



とにかく、わたしの青春時代は本を読みまくりました。「気楽亭」に並べられた数万冊の本をながめながら、わたしは自分の読書遍歴をふりかえることができました。
外に出ると、色とりどりの花々が咲いていて、目を楽しませてくれました。


                   実家の庭に咲く花々


2010年5月3日 一条真也