孤独死の防人

一条真也です。

常盤平団地を訪れ、自治会長の中沢卓実さんにお会いしました。
中沢さんは、昔は「週刊サンケイ」の記者でした。
今は、孤独死問題における我が国の第一人者です。
いわば、日本一の孤独死の防人です。



                      中沢卓実さん

ブログ『ひとり誰にも看取られず』、ブログ『孤独死ゼロ作戦』ブログ『団地と孤独死』と、これまで中沢さんについて書いてきました。
中沢さんは、孤独死をずっと見ていると、現代社会に生きる人々は「ないないづくし」で暮らしていることがよくわかるそうです。
それは次の10点に集約されます。


  1.配偶者がいない。
  2.友だちがいない。
  3.会話がない。
  4.身内と連絡しない。
  5.あいさつをしない。
  6.近隣関係がない。
  7.自治会や地区社協の催しに参加しない。
  8.人のことはあまり考えない。
  9・社会参加をしない。
 10.何事にも関心をもたない。


               「あいさつ」の大切さを語り合いました


中沢さんによれば、「孤独死は行政がなんとかしてくれる」という、あなた任せになる危険性があるといいます。そうではなく、自分たちの生活習慣を改めて、地域の幸せを皆でつくるという発想が大事なのです。
そこで出てくるキーワードが「あいさつ」でした。中沢さんは、次のように述べます。
「わたしたちが結構腐心するのは、言ってみれば、おじいちゃん、おばあちゃんから、若い人たちまで共通して理解されるものは何かということです。そうして行き着いたのが『あいさつ』することでした。誰でも参加できる、納得できる、それは『あいさつ』をすること。地域でこの運動を高めていこう。あいさつは孤独死ゼロの第一歩なのですよ」
たしかに、「孤独死」は人間という『間』からドロップアウトする部分があるわけで、そうならないためには、もう一度『間』に戻る必要があります。
そのためには、『間』に入る魔法の呪文としての「あいさつ」が重要になるわけです。
まさに、「あいさつ」という「礼」の力こそが人間の幸福に直結していることを、中沢氏は孤独死の中から学んだのです。近隣との「ないないづくし」の関係を、あいさつすることによって、「あるあるづくし」に変えていけるのです。
これは「天下布礼」の旗を掲げるわたしにとって、心に沁みるような思いがしました。


               孤独死について教えていただきました


今日、お会いした中沢さんは笑顔の素敵な方でした。
初対面のわたしに、いろいろと気さくに話してくれました。
また、週刊誌の記者だっただけあって、非常に博識な方でした。
人間の「間」という字には、「めぐりあい」という意味があることも教えていただきました。
わたしが「死は最大の平等」という考えを述べると、大きくうなずかれて、「そうそう、死体もみんな平等なんだ」と言われて、孤独死の生々しい白骨死体やミイラ化した死体の写真を見せてくれました。
同席していた全互協の山村さんは仰天していましたが、わたしは、中沢さんがこんな貴重な写真まで見せてくれたことに感慨の念を覚えました。
おそらく、わたしのような若輩者を一人の同志だと思ってくれたような気がしたのです。


                孤独死の写真を見せていただきました


中沢さんとは意気投合し、「死」や「あいさつ」や「人間関係」などについて話しているうつに、あっという間に2時間が過ぎました。
中沢さんは、すれ違う団地の人たちから、「会長」と声をかけられていました。
みんな、中沢さんを尊敬し、中沢さんを頼りにしていることがわかりました。
わたしは、中沢さんのことを「なんだか、落語に出てくるご隠居さんみたいな人だなあ」と思いました。江戸時代には多くの長屋がありましたが、そこには住人たちから何でも相談される「人生の達人」としての隠居がいました。
その古き良き日本のご隠居さんの姿が、中沢さんと重なったのです。
来る7月27日、東京の大塚にあるホテルベルクラシック東京で、中沢さんと講演&トーク・イベントを行います。日本人で孤独死で亡くなる方が一人でも減少するような、未来へつながる対話ができればと願っています。


今日、8日は、昼から横浜みなとみらいへ行きます。
パシフィコ横浜で開催されている「フューネラルビジネスフェア2010」を視察します。
それから、同時開催される「フューネラルシンポジウム2010」で講演するのです。
15時半からですので、よければお越し下さい。
詳しくは、綜合ユニコム株式会社(TEL:03−3563−0420)まで。
それでは、おやすみなさい。


2010年7月8日 一条真也