NHK放映

一条真也です。

北九州に帰ってきました。
金沢、横浜と講演続きの出張で、ちょっと疲れました。


スターフライヤーの東京ー北九州便に乗ると、いつも誰か知り合いに会います。
今日も、高田工業所の高田社長にお会いしました。
高田社長は、先日、同社の会長であったお父上を亡くされました。
北九州市商工会議所の会頭も務められ、地元経済界の重鎮でした。
葬儀などは親族のみで済まされ、今度、ホテルで「お別れ会」を開かれるそうです。
わたしは、謹んで高田社長にお悔やみを申し上げました。




さて、出演したNHKの討論番組が、本日20時から放映されました。
NHK「徹底討論 ふるさと再生スタジアム〜どうする?あなたのお葬式・お墓」です。
大ベストセラー『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)の著者である島田裕巳氏と、そのアンサーブック、『葬式は必要!』の著者であるわたしが直接顔を合わせるというので話題性はあったようです。



しかしながら、やはり、わたしは言いたいことがほとんど言えませんでしたね。
テレビというのは、つくづく反射神経が求められる世界だと痛感しました。
なにしろ、前の発言者が言い終わってから何か言おうと思っても、0.5秒と経たないうちに他の人が話し始めてしまうのです。
結果、アナウンサーの質問に答える形に終始してしまいました。


ああいった状況でガンガン発言するには、どうしても誰かが喋っているうちに間に割って入らなくてはなりません。
でも、「礼」を重んじる自分の信条としては、そんなことはできません。
また、テレビのために自分の信条を曲げることもできません。
もともと、わたしは口が達者なほうではありません。とういうより、口下手です。
あれだけの口が達者な人たちを相手にすること自体が無謀だったかもしれません。
ただ負け惜しみではありませんが、声が大きいかどうかとか、雄弁かどうかとか、そんなことよりも正しいことを言うほうが大切ではないでしょうか。
正しいことさえ言えば、理解してくれる人は必ずいるのではないかと思います。
昨日の講演でも葬儀について話しましたが、80分間、自分の考えを述べました。
せめて、80分とはいわずとも30分、いや10分は一人で話せる時間があれば・・・。



この番組の収録は5月26日に行われましたが、その日のブログで、わたしは「アウェー感があった」と書きました。そのブログを読んだ京都の美学研究家である秋丸さんから次のようなメールをいただきました。
「恐らく、葬儀の自明性自体が問題とされる番組では、一条先生が正論を主張されても、それが正論であればある分だけ、番組構成上、ややアウェー感を感じられたのは仕方がなかったかもしれないと思います。しかし、たとえ今はどんなに風当たりが強くても、私は一条先生の『志』を支持致します。一条先生の『志』は、必ず大多数の良識派に届くはずです。私がイメージするのは、例えば、ナチス全盛時代にユダヤ人差別に反対した詩人が、戦後にその良心の一貫性を評価される姿です。ご苦労も多いことと存じますが、私は一条先生を応援しています」
いま、秋丸さんのメールを読み返すと、本当に涙が出るほど心に沁みます。
でも、こういった番組によって、国民の間に「お葬式」や「お墓」について考える機会が与えられたことは素晴らしいと思います。
日本では「死」は「不幸」と呼ばれ、当然ながら「葬式」という言葉も口に出すのも縁起が悪いというようにタブー視されてきました。
それが、金曜日のゴールデンタイムにNHKで、「ワールドカップ」でも「参議院選挙」でもなく、堂々と「お葬式」の番組が放映されたのです。
ワールドカップが人類の祭で、選挙が国家の祭だとしたら、葬儀とは個人の祭です。
その個人の祭をどう行っていくか。変えるべきところは変える、変えてはいけないところは変えない・・・それについて逃げずに考えることは、わたしたち一人ひとりの「幸せ」の根っこの部分に深く関わっています。
もっともっと多くの日本人が「お葬式」の問題に関心を持ち、自らの旅立ちについて想いを馳せ、それによって幸せで充実した人生が送れることを願っています。
なお、この番組は7月17日(土)10時05分より再放送されます。


2010年7月9日 一条真也