ひきこもり大国

一条真也です。

今日の「読売新聞」朝刊のトップ記事を見て、驚きました。
「ひきこもり 70万人」という大見出しが出ていたからです。
その横には、「内閣府推計 予備軍も155万人」と出ています。
内閣府が初めての「ひきこもり」の全国調査を行い、23日に発表したのです。



「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」
「普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」
「自室からは出るが、家からは出ない」
「自室からほとんど出ない」
以上の状態が6か月以上続いている人が、「ひきこもり群」と定義されたそうです。



「家や自室に閉じこもっていて外に出ない人の気持ちがわかる」
「自分も家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」
「嫌な出来事があると、外に出たくなくなる」
「理由があるなら家や自室に閉じこもるのも仕方がないと思う」
以上の4項目すべてを「はい」と答えたか、3項目を「はい」、1項目を「どちらかといえば、はい」と回答した人が、「ひきこもり親和群」と分類されました。



その有効回答と人口推計を掛け合わせた結果、「ひきこもり群」は70万人、「ひきこもり親和群」は155万人と推計できるというのです。
それにしても、想像以上に大きな数字でした。
日本は、「ひきこもり大国」と呼ばれても仕方がありませんね。
「ひきこもり群」には男性が多く、66%を占めるそうです。
自殺にしろ、孤独死にしろ、無縁死にしろ、女性に比べて男性が圧倒的に多いことが知られています。
女性のほうが社会性があり、人間関係を作るのが得意なようですね。
それから、「ひきこもり」になったきっかけとしては、「職場になじめなかった」と「病気」がともに23.7%となっています。
「職場になじめなかった」というのは、おそらく人間関係に起因する部分が大きいと思われます。「人間関係がうまくいかなかった」という直接的な表現の人は11.9%です。
でも、わたしは「職場になじめなかった」「不登校(小学校・中学校・高校)」、「大学になじめなかった」とも、広くは「人間関係がうまくいかなかった」に分類すべきではないかと考えます。そうすると、人間関係がうまくいかなかったために「ひきこもり」になった人の割合は、なんと54.3%にものぼるのです。



今回の調査の企画分析委員の座長を務めた明星大学の高塚雄介教授(心理学)は、次のように警鐘を鳴らしています。
「『ひきこもり親和群』は若者が多い。そうした若者が社会に出て、辛うじて維持してきた友人関係が希薄になったり、新しい環境に適応できなかったりして、『ひきこもり群』がじわじわ増える」
「ひきこもり群」または「ひきこもり親和群」が、将来的に「うつ」につながる可能性もあります。そして、「うつ」は自殺の最大原因とされています。
これでは、日本社会は「最小不幸」どころか「最大不幸」の社会になってしまいます。
調査にあわせて、内閣府自治体や学校への支援の手引書をまとめたそうです。
読売新聞政治部の青木佐知子記者は、「家庭、学校、地域社会が、人ごとでないとの意識で連携する必要がありそうだ」と述べ、記事を結んでいます。



本当に、人ごとではありません。そして、問題は「ひきこもり」だけではありません。
つまるところ、自殺者の増加、孤独死の増加、無縁社会、そして葬式無用論といった一連の問題は、すべて「人間関係の希薄化」に集約されるのです。
なんとか、わたしたちは「ゆたかな人間関係」を再構築していかなければなりません。
それこそが、「最小不幸」どころか「最大幸福」の社会を創造する礎になると信じます。
やっぱり、ツィッターでつながるだけでなく、生身の人間同士が会わなければ!
そんなことを考えて書いた本が、『人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)です。
「人と会うのが楽しくなる本」として、おかげさまで好評を得ています。
アマゾンの「マナー一般のベストセラー」ランキングでも、『葬式は必要!』(双葉新書)とともに、上位をキープしているようです。「ひきこもり大国」を変えるためのヒントをたくさん書きました。ぜひ、ご一読下さい。



                  人と会うのが楽しくなる本


2010年7月24日 一条真也