「かんかん照り」

一条真也です。

東京に来ています。
今日の15時に渋谷のNHK放送センターを訪れ、NHKスペシャルの関係者にお会いするためです。大反響を呼んだ「無縁社会」をはじめとして、これからの番組の企画に関する意見を交換する予定です。今後、「無縁社会」を乗り越えて「有縁社会」を呼び込めるような番組作りのお手伝いができるといいのですが。

それにしても、東京も相変わらず暑いです。
浜松町から乗ったタクシーの運転手さんに聞いたら、34度はあるそうです。
今日、鎌田東二さんと交換している「ムーンサルトレター第61信」がUPしていました。
わたしは冒頭に、「毎日、本当に暑いですね。これほどの猛暑は、今までのわたしの記憶にはないです」と書きました。
それに対する鎌田さんのレターは次のようなものでした。
「確かにこの暑さは異常ですね。わたしも59年生きてきて、この夏が一番暑いと思います。昨日、東京に来ていて、国立博物館の『中国文明の誕生』をじっくりと観賞したのですが、東京でタクシーに乗った際、わたしとほぼ同年齢くらいに見える運転手さんが、『わたしはけっこう夏は好きなんですけどね。でも、今年の夏は、そんな夏好きのわたしでも「生命の危機」を感じるくらい暑いですね。ちょっと、こわいくらい』と言っていましたが、まったく同感です。知り合いの一人は、さらに怖いですが、『殺意を抱きたくなるような暑さ』と、この夏の暑さを表現していました」



「生命の危機」を感じるくらいというのは、わたしもまったく同感です。
わたしの愛犬ハリーは亡くなりました。
もちろん熱中症が直接の死因ではないでしょうが、この猛暑で衰弱していたことは間違いありません。それが死につながったことも間違いないと思います。
ブログでハリーの死を知った鎌田さんからは「心よりお悔やみ申し上げます」という丁重なメールをいただきました。
鎌田さんは、この凄まじい猛暑を「地球からのメッセージ」としてとらえ、「地獄の釜の蓋が開いた」という表現をされています。
そして、猛暑による京都の東山の危機的な状況や干上がった鴨川のことを述べられた後、以下のように書かれています。
「ロシアやポルトガルやスペインでも40度を越す猛暑で森林が自然発火して山火事となりました。ロシアの旱魃や山火事での農産物の被害総額はおおよそ1000億円といいます。これを世界的に見れば、何兆円もの被害がこの夏に発生したといえるでしょう。経済だけでなく、人への被害も大きく、何万人もの方々が亡くなっています。中国甘粛省甘南チベット自治州の洪水・土石流の被害、北朝鮮の洪水被害。日本での熱中症



羽田空港から浜松町に向うモノレールの中で、鎌田さんのレターを読みながら、iPodで井上陽水の「かんかん照り」を聴きました。
まさにジャスト・タイミングな歌でした。まるで、今年の夏を歌っているような曲です。
この歌の中には、ひとつの「死」が出てきます。
それは、わたしの場合のような愛犬の死ではなく、1人の「子ども」の死です。
「帽子を忘れた子どもが道で 直射日光にやられて死んだ 僕の目から汗がしたたり落ちてくる 本当に熱い日だ」という歌詞です。
「目から汗がしたたり落ちてくる」という表現が強烈な印象を残します。
自分の子どもなのか、近所に住む他人の子どもなのかはわかりません。
でも、幼い命が失われたことを淡々と描写することによって、「地獄の釜の蓋が開いた」恐怖を実感させるような詩ですね。
わたしにとっても、今年の夏は忘れられません。
では、これからNHK放送センターに行ってきます。


2010年8月27日 一条真也