ドラッカーとは何者か

一条真也です。

金沢に来ています。
今日から、北陸大学の「ドラッカー研究」の講義がスタートしました。
全部で300名にもおよぶ学生たちが大教室を埋め尽くしました。


                 「ドラッカーとは何者か」を語りました


この「ドラッカー研究」の第1回目は、「ドラッカーとは何者か」と題し、ピーター・ドラッカーの生涯と思想を振り返りました。
「マネジメントの父」とも呼ばれたドラッカーこそは、世界最高の経営思想家でした。
経営学そのものの創始者でもあります。ウィーン生まれですが、ナチスを嫌ってアメリカに移住し、長らくカリフォルニア州クレアモント大学の大学院で教授を務めていました。
20世紀において、世界のビジネス界に最大の影響を与えた思想家であり、東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、「マネジメント」という考え方そのものを発明しました。
また、マネジメントに関わる「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」、そして「選択と集中」などの理念の生みの親で、それらのコンセプトを自ら発展させてきました。


                  ドラッカーの偉大さを力説しました


ドラッカーほどすごい思想家はなかなかいません。わたしは、19世紀を代表する思想家がマルクスなら、20世紀最大の思想家こそドラッカーであると信じています。
もともと、19世紀の「知」はダーウィンニーチェマルクスに代表され、20世紀のそれはアインシュタインフロイトドラッカーに代表されると思っていました。
ダーウィンは生物学者、ニーチェは哲学者、アインシュタインは物理学者で、フロイト精神分析学者です。いずれも人類に大きな影響を与えた偉大な思想家ではありますが、その「知」は世界をどう解釈するかという「解釈の知」だったように思います。
しかし、マルクスドラッカーの2人は、違います。他の「知の巨人たち」のように世界を解釈するだけでなく、2人は実際に世界を変革してきたのです。
ただし、2人ともフィルターの存在を通しての世界の変革でした。
すなわち、マルクスは、レーニンをはじめとした世界中の革命家を通して。
そしてドラッカーは、ウェルチをはじめとした世界中の経営者を通してです。
しかし、マルクスの思想は経営者と労働者の対立を生み、世界に憎悪をもたらす性悪説でした。一方、ドラッカーのそれは経営者と労働者の協調を生み、世界に友愛をもたらす性善説でした。ドラッカーの経営思想のおかげで、どれだけの労使紛争が回避されたか計り知れません。ドラッカーのほとんどの本を翻訳された上田惇生氏は、ドラッカーこそノーベル平和賞を受けるに値する人物だったと断言されましたが、まったく同感です。


               300名が一心不乱にノートを取りました


学生たちもドラッカーのスケールの大きさに圧倒されたようで、90分の間、じつに一言の私語もなく、一心不乱にノートを取っていました。まことに見事な授業態度でした。
これから、「マネジメント」をはじめ、「マーケティング」「イノベーション」「リーダーシップ」など、数々のドラッカー思考について話していくつもりです。


2010年10月27日 一条真也