小津安二郎展

一条真也です。
鎌倉は鶴岡八幡宮のすぐ近くにある「川喜多映画記念館」を訪れました。
川喜多映画記念館は、日本映画の発展に大きく貢献した川喜多長政・かしこ夫妻の旧宅跡に建設されています。この家は、哲学者の和辻哲郎の旧居でもあったとか。
ここで、「小津安二郎監督の世界」展が開催されているのです。


                   川喜多映画記念館の前で

                   「小津安二郎監督の世界」展


わたしは、小津安二郎の映画が昔から大好きで、ほぼ全作品を観ています。
黒澤明と並んで「日本映画最大の巨匠」であった彼の作品には、必ずと言ってよいほど結婚式か葬儀のシーンが出てきました。
小津ほど「家族」のあるべき姿を描き続けた監督はいないと世界中から評価されていますが、彼はきっと、冠婚葬祭こそが「家族」の姿をくっきりと浮かび上がらせる最高の舞台であることを知っていたのでしょう。


                    さまざまな写真を展示

                小津映画のタイトル・クレジット集


また、小津映画には教師がよく登場すると、「おもしろ学校理事長」を名乗る名取弘文氏が雑誌のインタビューで答えていました。
冠婚葬祭や教師をふんだんに描いた小津安二郎は、「人の道」を求めた求道者だったのかもしれません。小津映画には、現代日本社会を考える上で大切なヒントがたくさん詰まっているように思います。


               映画ポスターを現代風にコラージュ化

                      資料コーナー


2013年は小津安二郎の生誕110周年だそうです。
それにあわせて、わたしは、小津映画の本を書きたいと思っています。
出版界の預言者」こと水曜社の仙道弘生社長と小津映画について話していたところ、「本格的な研究書を書いてみませんか」と言われたのです。
仙道社長いわく、「いくら難しくてもかまいません。蓮實重彦ぐらい難しくてもいいから、思い切り内容の濃い本を書いて下さいよ」とのこと。
「とにかく、わかりやすく書いてほしい」とリクエストする出版社が多い中で、仙道社長の気概ある言葉には勇気百倍です。ちょっと、プレッシャーもありますが・・・。
せっかくのお言葉ですので、小津映画という極上のファインダーを通して、「冠婚葬祭」と「家族」の意味と本質を考察してみたいと考えています。


               川喜多夫妻の資料も展示されていました

                 日本映画界を育てた川喜多夫妻


小津安二郎監督の世界」展はそれほど大規模なものではありませんでしたが、昔の映画ポスターやスチール写真をはじめ、なかなか興味深いものが展示されていました。
それから、川喜多夫妻の華麗な映画人脈を示す写真なども観賞しました。


2010年12月4日 一条真也