凧のように生きる

一条真也です。

松柏園ホテルのロビーの天井近くには大きな凧が浮かんでいます。
もう10年以上も前、わたしが総支配人だった頃から掲げています。
今では、すっかり正月の名物になりました。
わたしは、この凧を見るたびに、人間の幸福というものを思います。

              
                       松柏園の大凧


誰でも幸福になりたい。「幸福」こそ、人間にとって最大のテーマでしょう。
「GNH」という言葉があります。グロス・ナショナル・ハピネス、つまり、「国民総幸福量」という意味です。ブータンの前国王が提唱した国民全体の幸福度を示す尺度で、世界的に注目されている考え方です。 
「GNP(国民総生産)」で示されるような「物質的豊かさ」を求めるのではなく、「精神的豊かさ」、すなわち「幸福」を求めるべきであるという考えから生まれたものです。
ブータンは経済的、物質的には世界でも最も貧しい国の一つですが、国民のなんと9割以上が「自分は幸福だ」と感じているといいます。驚くべき数字ですね。
ブータンは世界で唯一のチベット仏教を国教とする国です。
葬儀を中心とした宗教儀礼が非常に盛んなことで知られます。
そのせいか、ブータンの人々は良い人間関係に恵まれているようです。



ブログ「幸福の測り方」にも書きましたが、最近では、日本においても国民総幸福量を求めようという考え方が強くなってきました。
日本にも、ブータンのように住人は幸福感を強く感じている地域があります。沖縄です。
ある調査によれば、沖縄県の人々は「幸福である」という意識が全国一だそうです。
沖縄の人々もブータンの人々と同じく、儀礼を重んじ、人間関係を大切にします。
やはり、人間関係の良好さというものが幸福感に直結しているのです。



現代人はさまざまなストレスで不安な心を抱えて生きています。ちょうど、空中に漂う凧のようなものです。そして、凧が安定して空に浮かぶためには糸が必要です。
さらに安定して空に浮かぶためにはタテ糸とヨコ糸が必要です。
タテ糸とは時間軸で自分を支えてくれるもの、すなわち「先祖」です。
また、ヨコ糸とは空間軸から支えてくれる「隣人」です。
この二つの糸があれば、安定して宙に漂っていられる、すなわち心安らかに生きていられる。これこそ、人間にとっての真の「幸福」の正体ではないかと思います。



ブータンや沖縄の人々は宗教儀礼によって先祖を大切にします。
また、隣人を大切にして人間関係を良くしています。
だから、しっかりとした縦糸と横糸に支えられて、幸福なのです。
冠婚葬祭業とは、まさに「先祖」と「隣人」を大切にするお手伝いをする仕事です。
人間が心安らかに生きていくための縦糸と横糸を張る仕事です。
わたしたちは、「幸福」そのものに直結している仕事をしているのだと思っています。
昨年、タテ糸の張り方について、『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)を出しました。今年、ヨコ糸の張り方について、『隣人の時代』(三五館)を刊行する予定です。
いよいよ、日本人を幸福にする「世直し」大作戦のスタートです!


      縦糸と横糸張りて空に浮く凧のごとくに生きる幸福 (庸軒)


2011年1月1日 一条真也