雛祭り

一条真也です。

東京から北九州へ帰ってきました。
午前中、「出版界の青年将校」こと三五館の中野長武さんと新刊『隣人の時代』の最終打ち合わせをしました。カバーデザインも決めましたが、「隣人の時代」の幕開けを予感させる素晴らしいものができました。「無縁社会」とか「孤族」といった絶望を乗り越えるような、まことに希望に満ちたデザインです。
14日には見本が出ますが、すごく楽しみです。



夜は、家族4人で実家を訪れました。
その目的は2つありました。1つは、長女の大学合格を祖父母、つまり、わたしの両親にきちんと報告すること。もう1つは、わたしの母がコレクションしている雛人形を見に行くことです。そう、今日は、3月3日の桃の節句、すなわち「雛祭り」なのです。


                     実家の雛人形


わたしは、弟との二人兄弟です。
ですから本当は雛祭りには無縁のはずですが、わたしの実家には雛人形がたくさんありました。母が雛人形が大好きで、コレクションしていたからです。
毎年、3月になると、その人形たちを家中に飾るのです。

 
                      実家の雛飾り

                      実家の雛飾り

                      実家の雛飾り


わたしが子どもの頃、「どうして、女の子がいないのに、雛祭りするの?」と尋ねたことがありました。すると母は、「ここに一人いるよ」と言って自分を指さすのでした。
本当は、娘が欲しかったのかもしれませんね。
その母が飾った雛人形と一緒に、長女と次女を写真に撮りました。


                     わが家の雛人形


もちろん、わが家にも雛人形が飾られています。
妻が広島の実家から持ってきた人形です。
妻は姉との二人姉妹で、ずっとこの人形で桃の節句を祝ってきたそうです。
わたし自身は二人兄弟でしたが、わたしは二人の娘の父親となりました。
やはり、雛祭りの季節になると、娘たちの将来に思いを馳せてしまいます。
そして、親として彼女たちの幸せを祈らずにはいられません。

自宅の雛人形の前でも、長女と次女の写真をたくさん撮影しました。
長女は、この4月から東京の大学に入学します。
もうすぐこの家を出て、東京での新しい生活をスタートさせます。
もしかすると、このままわが家には帰って来ないかもしれません。
実際、わたしの妻も大学卒業の直後、22歳でわたしと結婚しました。
東京の大学に出たまま、実家には帰らなかったのです。
もちろん、長女が妻と同じような人生を歩むかどうかは、わかりません。
でも、一緒に写真に収まる次女は、なんとなく寂しそうでした。
ずっと一緒に生活してきたお姉ちゃんが、もうすぐいなくなるからです。
童謡の「ひなまつり」の歌詞には「お嫁にいらした姉さまによく似た官女の白い顔」というフレーズがありますが、雛人形をながめながら、わたしも次女につられて少しセンチメンタルになったのでした。


2011年3月3日 一条真也