ソーシャルの達人

一条真也です。

今日は、合田周平先生に久しぶりにお会いしました。
合田先生は、わが国におけるシステム工学の第一人者です。
一昨年までヒューマンメディア財団の理事長さんでしたが、前任者の方が最近お亡くなりになり、今日はその「偲ぶ会」が北九州で行われたのです。


                      合田周平先生


現在、合田先生は電気通信大学学長顧問、英国クランフィールド日本センター所長を務められています。また、宮本武蔵「小倉顕彰会」特別顧問でもあり、わたしの住む小倉とは深い縁があります。さらには、中村天風の思想を引き継ぐ「天風会」の理事長も務める・・・・・・なんとも、すごい方なのです!



合田先生の略歴をざっとご紹介しますと、昭和7年6月8か台北市生まれ。電気通信大学卒業。カリフォルニア大学(バークレー)大学院MS修了、工学博士(東大)。
この間、TDK、東大生産技術研究所アメリカ、イタリア、イギリスの研究所・大学や各種財団を経ておられます。
イタリア共和国功労勲章を受章され、米国パターン認識学会賞、毎日出版文化賞なども受賞されています。 近著は『エコパラダイムの時代―自然と人間の共生をめぐって』『活学の達人―本田宗一郎との対話』『環境力―地球と共生するための哲学』など。



合田先生は、特にロボットについての第一人者です。
東京と北九州を往復する生活を長く続けておられましたが、そのおかげで北九州市がロボット最先端都市として知られるようになりました。
ロボットだけでなく、合田先生は宮本武蔵中村天風の研究者としても有名です。『こころの潜在力〜宮本武蔵中村天風』(PHP研究所)という著書も上梓されています。
なにしろ、「ロボット」について手塚治虫と対談し、「天風哲学」について稲盛和夫さんと対談されるような方なのです。本当に、すごすぎます!
特に、「武道」と「ヨガ」の共通点といったお話は、いつお聞きしても本当に刺激的です。



これから多くのヒト型ロボットが登場します。
中でも、介護ロボットなどのサービス・ロボットの可能性が注目されています。
しかし、合田先生は「鉄腕アトム」的なヒト型ロボットには懐疑的です。
また、「介護ロボットなどに自分は絶対に介護してもらいたくない」と断言されています。
合田先生は「サイバネティックス」という言葉を初めて日本に紹介された方であり、名著『サイバネティックスとは何か』(講談社現代新書)の著者としても知られます。
合田先生には今後も、人間とテクノロジーの関係における厳しい監視者の立場を守っていただきたいと願っています。


                    合田先生とともに


合田先生には、2007年の春頃、初めてお会いしました。「月の織女」こと築城則子さんやゼンリンプリンテックスの大迫益男会長の紹介だったと記憶しています。
親子ほども年齢の離れた合田先生とわたしでしたが、なぜか気に入っていただき、何度もお会いして色々なお話をさせていただきました。
ある大手出版社から共著を出すというプランが実現寸前まで行ったこともあります。
そんな御縁で、07年11月に開かれた父である佐久間進の「旭日小綬章」受章祝賀会の発起人の1人になっていただきました。



昨年、合田先生は体調を崩されたそうで、心配していました。
でも、久々にお会いしてみると、とてもお元気そうで安心いたしました。
今日は、外務省や地震予知に関する壮大なスケールの計画を話されていました。
例の京都大学をはじめとした入試問題投稿事件についても語られ、「情報化が進めば、こんな事態が起きることは最初からわかっていた」と言われていました。情報機器が進化すればするほど、その機能を試してみたくなるのが人情だというのです。
そういえば、「サロンの達人」こと佐藤修さんも、3月2日のブログ記事「入試問題ネット流出事件で考えたこと」で、世間で言われているほど腹立ちを感じないと言われています。「情報社会とはそうしたものだろうと思っているから」だそうです。



さて、合田先生はイギリスによく行かれます。
英国の学会関係者と交流があるそうですが、いまヨーロッパで最大のキーワードは「ソーシャル」だと言われていました。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるフェイスブックについても非常に詳しい話を聞かせていただきました。
今後、世界的にますます「ソーシャル」というコンセプトが大きくなるそうです。
また、なんと「ソーシャル・ソサエティ」という言葉も出てきているとか!
無縁社会」を乗り越えて、新しい「有縁社会」づくりをめざすわたしにとって、当然ながら「ソーシャル」というのは重要なコンセプトです。
「ソーシャル」とは、なによりも人と人との関係性の問題であり、「つながり」の問題。
「ソーシャル」をめぐるさまざまな話題をお聞きしながら、わたしは合田先生その人こそが「ソーシャルの達人」であることを痛感しました。
合田先生、今日はお会いできて嬉しかったです。
今度は、また東京でお会いしましょう。
今後とも、よろしくお願いいたします!


2011年3月4日 一条真也