『日本のこころの教育』

一条真也です。

本日、天皇陛下東日本大震災の被災者の方々を慰めるお言葉を出されました。
悲惨な現状に心を痛められ、いずれ被災地を訪れたいと語られていました。
未曾有の地震の発生以来、日本への称賛の声が世界中で高まっています。
なぜ、日本人は極限状態の中でも規律を守ることができたのか。
それを知るためには、「日本のこころ」を知る必要があります。
ということで、『日本のこころの教育』境野勝悟著(致知出版社)を再読しました。


                   「日本のこころ」とは何か


ブログ「マナー世界一」に書いたように、日本人の礼儀正しさが見直されています。
アメリカでも日本の震災に関して取り上げる3大トピックは「震災の被害」「原発の危険」「日本人の素晴らしさ」です。CNN、NBC、BBC、NPRなど、あらゆる大手メディアのテレビ局が日本を以下のように絶賛しているのです。
「大地震の中で日本人は驚く程落ち着いて行動していた、あたふたしていたのは我々外国人だけだ」「これほどの被災にあっていながら、被害者達は水のボトルをそれぞれ分け合って、すばらしい規律と我慢強さを示している」「これほどの被害で、市民がこれほどの規律を示せるとは、アメリカでは考えれない事だ。日本市民のすばらしさは世界でも最高だ。日本でなければどれほどの被害になっていたことか」
実際に、アメリカで起こったハリケーンカトリーナでは、状況が混沌とし、殺人などの犯罪も多くて、とてもボランティアが近づけないという状況があったそうです。



さて、本書は東洋思想家である著者が、高校の全校生徒に向けた講演録です。
「日本人って一体何だろうか」と、著者はいきなり高校生に問います。
もちろん、高校生には答えられません。
著者は説きます。わたしたちの「恩」つまり生命の原因は、まず第一に太陽である。太陽のお蔭で、太陽のめぐみでわたしたちは生きている。
日本人は、ずっと古代から太陽を自分を生命のもととして、大切にしてきた。
だから、日本は「日の本」であり、国旗は「日の丸」という太陽マークなのだ、と。



語源から言葉にひそむ深い意味を次々に掘り起こす話はスリリングで興味深いです。
「おかあさん」は「太陽さん」、「おとうさん」は「尊い人」という意味だそうです。
「おかあさん」といえば、プロレタリア作家の小林多喜二の母親の話も胸を打ちます。
多喜二が処刑されたとき、彼の母親は五分間の面会のために北海道の小樽から駆けつけました。ほとんど文盲であったにもかかわらず、面会の最後に、「おまえの書いたものは一つも間違っておらんぞーッ。お母ちゃんはね、おまえを信じとるよーッ」と叫び、多喜二は「母親に信じてもらった人間は天国へ行ける」と言い残して死んでいきました。



国旗の重要性と小林多喜二の感動実話を並列に扱う著者のバランス感覚に、わたしはイデオロギーに縛られない自由で豊かな心を感じました。
2時間にわたる著者の熱弁に、全校生徒が声ひとつ立てず聞き入ったというのも納得できます。まさに、「日本のこころ」がよくわかる1冊だと思います。
最後に、この素晴らしい講演を聴いたのは、岩手県花巻市にある高校生たちでした。
今度の地震で、彼らは無事だったのでしょうか。それが非常に気にかかります。


2011年3月16日 一条真也