AC大量CM

一条真也です。

「Yahoo!ニュース」を見ていたら、「AC大量CMに苦情殺到・・・脅迫電話も」という記事が出ていました。「デイリースポーツ」の配信によるものです。
それによれば、公共広告により啓発活動を行っている社団法人のACジャパン(旧公共広告機構)に抗議の電話が殺到しているというのです。


                  「Yahoo!ニュース」より


東日本大震災の影響によって、民放テレビ各局は民間企業のCMを流していません。
これはテレビ局の判断というよりも、企業側が自粛しているわけです。
代わりに、同法人のCMを「穴埋め」として大量放送してきたのですが、「しつこい」「不快感がある」「内容がそぐわない」というクレームが集中していたそうです。
同法人の提言CMはテレビ、ラジオ、新聞社など加盟社の会費で制作しています。
いわば「とばっちり」を受けた形だけに、同法人も困惑を隠せないようです。



「Yahoo!ニュース」には次のように書かれています。
「抗議の理由としては、同じ内容のCMが流れることに対する『しつこい』、同法人CMの最後に流れる『エーシー』という高いメロディーが『不快さを感じる』、さらには子宮がんや脳卒中予防の内容に対し『こんな大変な時にがん検診なんか行けるか』といった内容があるという。また、同法人が国の管理下にないにもかかわらず『そんなCMを流すのに税金を使うなら、少しでも被災地に回せ』という勘違いの抗議や、中には『今から刃物を持って押しかけるぞ』という脅迫電話もかかってくるという。視聴者が勘違いしている場合は、正しい実態を説明しているが、同法人関係者は『分かってくれる人は、わずかなんです』と困惑の色を隠せなかった」


わたしも広告業界の出身ですので、もちろんACのことはよく知っています。
きわめて良心的な団体ですのに、まったく同情に耐えません。
ACジャパンは、年間にCMを13本制作しています。
いずれも、マナーやモラル向上などといった社会啓発的な内容です。
制作費は約1200社の加盟社から得られる年会費で賄っています。
また、今回はテレビ局会社が大量にCMを放送したわけですが、テレビ局との間で金銭的なやりとりは一切発生していません。
わたしは、ACのCMは名作揃いだと思います。
今回多く流れた作品の中でも、「だれにも『こころ』は見えないけれども、『こころづかい』は見える。『思い』は見えないけれども、『思いやり』はだれにでも見える」という「見える気持ちに。」は何度観ても飽きません。
また、「親を亡くした彼女を、見知らぬ人たちが高校に行かせてくれた」という“あしなが育英会”を紹介した「ありがとうあしながさん」など、本当に心が温かくなります。


日頃から、「バラエティのような馬鹿番組ばかり流さずに、こういった社会啓発CMをガンガン流せばいいのに」と考えていたわたしにとっては、まさに「時が来た!」という感じだったのですが、まあ、いかんせん数が多過ぎましたね。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」というところでしょう。
アニメを使った「あいさつの魔法」などもなかなかの名作なのですが、ちょっと明るすぎて、ヒンシュクを買ったようです。「ポポポポ〜ン」が気にさわったのかも?



たしかに流されてきたCMの本数は異常な多さかもしれません。
そのこと自体が東日本大震災の被害の巨大さを物語っているわけですが・・・・・。
日本人のほとんどは、仁科明子さんが38歳とのときに子宮頸がんになったことを知りました。おそらく、がん検診をCMで呼びかけた仁科さん母娘も困惑していると思います。
アニメや無名のタレントを起用したCMとは違って、仁科さんは有名人なわけですから、変な「とばっちり」を受けないことを願っています。
それにしても、「今から刃物を持って押しかけるぞ」という脅迫電話をかけるなど、明らかに異常です。日頃から馬鹿番組ばかり観ている人はストレスを感じるのでしょうか。



東北の避難所の方々がストレスを感じるならまだしも、ここのところ、それ以外の日本人もどうもストレスフルになっているようです。
昨日、こんなことがありました。この4月から小学6年生になる次女はバス通学をしているのですが、昨日、友だちと2人でバスに乗っていました。午後の西日を受けてまぶしかったので、窓側に座っている友だちがブラインドを下げたそうです。
すると、近くにいた40代後半くらいの男性が「なんするんか、きさん!」と言って、彼女を怒鳴り上げたというのです。どうもその男性は窓の外の景色を見ていたようで、急にブラインドを下ろされたので、立腹したようです。
怒鳴られた友だちは、びっくりして、固まってしまいました。
隣にいたわたしの次女も、一緒に固まったそうです。しかし、その男性はしつこく「ふざけんなよ、きさん!」とか何とか言って恫喝をやめないというのです。
すると、近くにいた20代くらいの若い男性が、「やめなさいよ」と言ってくれたそうです。
彼は、「まぶしいからブラインドを下ろしただけじゃないですか。あなたは、いい年をして、小学生相手に恥ずかしくないんですか!」と言ったそうです。
相手の中年男が逆ギレして口論となり、なんと若い男性に体当たりして「おぼえとけよ、クソガキ!」と捨て台詞を吐いて、バスを降りていったというのです。
バスは西鉄バスで、その男性が下車したのは北九州市小倉北区の魚町でした。
残された若い男性は、体当たりされたのに平然としていたそうです。
次女とその友だちは、その男性に向かって2人で拍手をしたそうです。
下車した中年男はスーツにコート姿のサラリーマン風だったそうです。
それにしても、彼は何をそんなにイライラしていたのでしょうか。
この人こそ、ACのモラル・アップ広告を見るべきなのではないでしょうか。
まったく、世界では日本のことを「マナー世界一」などと称賛しているのに、困ったものですね。じつは日本ではなく東京限定の「マナー世界一」でないことを願っています。


小学生といえば、ACに「黒い絵」というCMの最高傑作があります。
最初これを観たとき、わたしは非常に感動しました。
ストーリー性があって、まるで1本の映画を観たようでした。
ACのCMにおけるクリエイティヴィティの高さがよくわかります。
東日本大震災の発生を受けて、災害用のCM6本の制作も決定したそうです。
通常は月単位での制作期間を2、3日に短縮するとか。
来週にも新バージョンのCMを放送する予定だそうです。
わたしは、ACの味方です。がんばれ、AC!


*このブログ記事は、993本目となります。


2011年3月19日 一条真也