絶望する必要ない

一条真也です。

今朝の新聞に、スタジオジブリ宮崎駿監督の談話が出ていました。
自ら企画したアニメ映画「コクリコ坂から」の主題歌を発表する記者会見で、宮崎監督が東日本大震災について思いを述べたそうです。


                  「朝日新聞」3月29日朝刊


宮崎監督は、「埋葬もできないままがれきに埋もれている人々を抱えている国で、原子力発電所の事故で国土の一部を失いつつある国で、自分たちはアニメを作っているという自覚を持っている」と述べ、さらに「今の時代に応えるため、精いっぱい映画を作っていきたい」と語ったそうです。感動しました。
同じ新聞には、「遺体の25% 身元不明」という記事も出ており、大震災の遺体の保管を警察側も苦慮していると書かれていました。胸が痛みます。
葬式は必要!』(双葉新書)にも書いたように、葬儀とは「人間の尊厳」を守ることに他なりません。宮崎監督がコメントの最初に「埋葬もできないままがれきに埋もれている人々を抱えている国で」と発言したのは、そのことが何よりも重要な問題だからだと思います。
今日、福岡県の田川市に「田川西紫雲閣」という新しいセレモニーホールの竣工披露式典が行われます。これから現地に向かう車内でこのブログを書いていますが、式典での施主挨拶で「人間の尊厳」についてお話したいと思っています。
わが社のミッションは、「人間尊重」です。わたしたちは、一件一件のお葬儀を「人間の尊厳」を守るという使命感をもってお手伝いしたいと考えています。


                  「朝日新聞」3月29日朝刊


宮崎監督は談話の最後に、「僕たちの島は繰り返し地震と台風と津波に襲われてきた。しかし、豊かな自然に恵まれている。多くの困難や苦しみがあっても、より美しい島にしていく努力をするかいがあると思っている。今、あまりりっぱなことを言いたくないが、僕たちは絶望する必要はない」と語りました。
僕たちは絶望する必要はない!
そのことを証明するような感動的な記事が、同じ新聞の社会面に大きく出ていました。
「水の中 命抱きしめた」という大見出しの記事です。
岩手県山田町を大津波が襲ったとき、平屋建てアパートに住んでいた28歳の母親が、4歳の長女と3歳の次女とともに生き延びたという話です。
部屋に海水が流れ込み、とっさに2人の子を抱き抱えましたが、高さが2メートル以上もある天井に頭がつきました。3人とも水没し、両腕で抱きかかえた2人の子は、水中で息ができず、苦しくて足をバタバタさせていました。
母は「私たち3人、こんなんで死ぬんだ。人生あっけなかったな。こんなので死ぬんだ」と思いながら、「どうせ死ぬなら絶対離れたくない。この手は離さない」と思ってわが子を強く抱き締めました。そして、母の意識は遠のきました。
目をさますと、いつの間にか水が引いていて、3人は奇跡的に生きていました。
わたしは、この記事を読んで朝から涙がとまりませんでした。
そう、わたしたちは、絶望する必要はないのです!


2011年3月29日 一条真也