ロボット大国?

一条真也です

菅首相の発言をめぐって大騒ぎになっています。
福島第一原子力発電所周辺の避難対象区域について、「当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのか」と発言したというのです。
実際には菅首相は発言しなかったようですが、「住民感情逆なで」とか「不用意」だとか「住めるようにするのが政府の仕事」などといった意見が出ています。
わたしは、これは絶対におかしいと思います。
本当に人が住めない危険性があるのなら、そのように正直に発言するべきです。
それを「住民感情逆なで」などと攻撃していたら、真の情報が隠蔽されてしまいます。
いま必要なのは、あくまでも真実を伝える情報です。
やみくもに人々に安心を与えるメッセージではないはずです。



                  「読売新聞」4月14日朝刊


さて、今朝の「読売新聞」の社会面に「ロボット技術結集を」という記事が出ていました。
13日、日本学術会議福島第一原発事故の早期収束と安全な廃炉作業に向け、ロボット技術の結集を呼びかけたというのです。
国、研究機関、企業が参加する横断的な支援体制の確立を盛り込んだ行動計画が発表され、それは次の3つの期間に分けられています。
現在から原子炉の冷温停止冷温停止から廃炉完了、周辺地域の除染完了です。
それぞれの目的に合わせたロボットを開発するとか。



日本は、これまで「ロボット大国」などと呼ばれていました。
北九州には「世界一のロボット企業」と呼ばれている会社もあります。
わたしは、今回の原発事故では世界一の日本製ロボットたちが大活躍するとばかり思っていました。そして、当然ながら、大いに期待していました。
しかし、結局はロボットの登場はなく、人間しか頼りにならないことが判明しました。
廃炉作業もですが、原発の周辺には死者と多くの行方不明者が放置されています。
強い放射能を浴びているため、生身の人間では近づけないのです。
放置されている方々の「人間の尊厳」は損なわれています。
こういうときこそ、ロボットの出番ではないでしょうか。
SF作家アイザック・アシモフによる「ロボット三原則」というものがあります。
人間への安全性、命令への服従、自己防衛を目的とする3つの原則です。
人間を守ってくれるもの、それがロボットなのです。


わたしが日本のロボットに対して過剰に期待しすぎていたのかもしれませんが、非常に残念でした。日本のロボット技術とは、ソフトクリームがうまく作れるとか、人間のように歩けるとか、サッカーができるとか、歌が歌えるとか、そういう「からくり人形」の延長線上でしか生かせないのでしょうか。
日本のロボットとは、どこまでもエンターテインメントなのでしょうか。


「日本はロボット大国ではなく、ロボット・アニメ大国だ」などと言う人もいます。
そういえば、「マジンガーZ」に「機動戦士ガンダム」に「新世紀エヴァンゲリオン」・・・・・・・日本のロボット・アニメは世界中で絶大な人気を誇りました。


そのロボット・アニメの元祖は、手塚治虫の「鉄腕アトム」です。
そして、「アトム」とは「原子」という意味です。
「科学の子」であるアトムとは、正確にいうと「原子力の子」なのです!



現在、日本のロボット産業のトップにいる方々は、少年時代に「鉄腕アトム」のマンガやアニメに熱狂した、いわゆる「アトム世代」であると言われています。
今こそ、日本のアトム世代は、その知恵を結集して、人間を放射能から救うロボットを作る必要があると思います。このままでは「ロボット大国」どころか「ハイテク先進国」として鳴らした日本の技術力も信頼を失い、国際的にも信頼を失うでしょう。
国、研究機関、企業が総力をあげて「アトム」を誕生させてくれることを願っています。



それにしても、未曾有の国難にあって、よりレベルの高い想像力が求められます。
アシモフの『われはロボット』といい、手塚治虫の「鉄腕アトム」といい、SFにおける想像力を“人類の叡智”として使う時期かもしれません。
なんといっても、SF作家は想像力のチャンピオンですから。
そういえば、小松左京の『日本沈没』というSFもありましたね。


2011年4月14日 一条真也