『東亰異聞』

一条真也です。

九州の雨がだんだん強くなってきました。
骨折でしばらく行っていませんが、東京も雨でしょうか? 
さて、『東亰異聞』小野不由美著(新潮文庫)を読みました。
「東京(とうきょう)」ではなく、「東亰(とうけい)」を舞台にした物語です。
つまり、歴史上に実在する東京ではなく、あくまで架空の街が舞台なのです。
いわゆる「パラレル・ファンタジー」と呼ばれるジャンルですね。


                   もうひとつの帝都の物語


帝都・東亰の誕生から29年が経過し、夜が人のものであった時代は終わりました。
そこには、さまざまな魔界の者たちが横行しはじめたのです。
火炎魔人は人を突き落とし、全身火だるまのまま姿を消します。
闇御前は、夜道で辻斬りの所業をはたらきます。
さらには、人魂売り、首遣いといった魑魅魍魎が跋扈します。
人ともモノノケともつかない不思議な「香具師」たちも暗躍しています。
新聞記者の平河は、東亰の街で連続発生する奇怪な事件を追います。
そして、公爵家のお家騒動に行き当たるのです。
「ネタバレ」になるので、ストーリーはこのへんまでにしますが、本書には人の心の闇が妖しく描かれているだけでなく、官能美も漂う伝奇ミステリーとなっています。
ラストには、意外な結末が用意されています。
くれぐれも最後まで油断せずに読むべき本です。
なお、ブログ「暗い東京」にも書いたように、以前に比べて、現在の東京の夜は闇が支配しています。まるで、「東京」が本当に「東亰」になってしまったかのようです。
今の帝都の夜なら、魑魅魍魎が跋扈してもおかしくありません。



さて、坂東眞砂子の次は、小野不由美・・・・・。
これからしばらく、最近読んだ日本のホラーやファンタジー作品を紹介していきます。
次はいきなり、日本のホラー小説史に燦然と輝く大傑作が登場しますよ。
怖い話や不思議な話が好きな方は、どうぞ、お楽しみに!


2011年6月19日 一条真也