『死刑執行中脱獄進行中』

一条真也です。

死刑執行中脱獄進行中荒木飛呂彦著(集英社)を読みました。
日々、わたしは多くの漫画を読みます。著者の存在は当然知っていました。
代表作『ジョジョの奇妙な冒険』もほとんど揃えてはいますが、あまりの巻数の多さに恐れをなし、「読むのは老後の楽しみに」と書庫の奥に置いたままです。


                  荒木飛呂彦の奇譚の世界


それが、ブログ『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を読み、非常に著者の考えと共感したので、アマゾンで評価の高かった本書を取り寄せて読んでみました。
いや〜、ブッ飛びました! こんな凄い漫画を読んだのは生まれて初めてです。
いつの間にか、日本の漫画がこんなに凄くなっていたとは!



本書は短編集で、表題作の「死刑執行中脱獄進行中」「ドルチ〜ダイ・ハード・ザ・キャット」「岸辺露伴は動かない〜エピソード16:懺悔室」「デッドマンズQ」の4つの作品が収められています。いずれも、「どうして、こんな奇想天外な物語を思いつくことができるのか?」と著者の頭を開いて中を覗いてみたくなるほどのクオリティの高さです。
とにかく、物語を創造するのが天才的にうまい!
こんなに面白い漫画の短編集があったなんて、まったく知りませんでした。
それなのに、著者は初短編集である『ゴージャス・アイリン』を世に問うてから、12年かけてやっと第2短編集である本書を刊行したのです。



なぜ、こんなに面白い短編をどんどん描かないのでしょうか?
その答えは、著者が「あとがき」で次のように述べています。
「なぜ自分は短編をあまり描かないのか? 答えはアイデアを連載長編のほうに使っちゃうからだ。長編の方には愛すべき主人公がいるし、読者も短編よりは長編の方が魅力を感じてくれている。長編も短編もストーリーを0から作り上げていくのは同じ労力でも、短編は数十ページで終わりにしなくてはならない。だから、短編向きの良いアイデアがあってもつい長編の方に使ってしまう」



とはいっても、100巻を超える長編を誰でも気軽に読めるというわけではありません。
本書は、「短編、描いてよ」という編集部の依頼により、長編からはみ出していたアイデアを「ンじゃ、これ短編に使おう」という感じでふくらませたのだとか。
いずれにしても、恐るべき作品群を体験して、わたしは震撼しました。
この感想は、もはや文章では表現できません。
ぜひ、本書を一読されることをおススメします。


2011年7月3日 一条真也