『吉祥寺の朝日奈くん』

一条真也です。

『吉祥寺の朝日奈くん』中田永一著(祥伝社)を読みました。
ブログ『百瀬、こっちを向いて。』で紹介した、恋愛小説の新星の第2作品集です。
帯には、「ため息をつくほど巧い。」「久々に『これは!』という小説でした。」「中田永一大好きだー!!」といった書店員からの賞賛の言葉が紹介されています。


                  書店員が賞賛する恋愛小説


本書には、次の5つの短編小説が収められています。
女子高生の遥が恋人と交わしていた交換日記が数奇な運命をたどり、さまざまな人の縁を生んでいく「交換日記始めました!」。
高校2年のときにクラスメイトだった男子は存在したのか? 同級生の誰もおぼえていない彼に5年後会いに行く「ラクガキをめぐる冒険」。
2人の男子高生と1人の女子高生をめぐる微妙なバランスの三角関係の物語をさまざまな三角なるものが彩る「三角形はこわさないでおく」。
おなかがひんぱんに鳴るせいで何事にも消極的な女子高生の前に、彼女のおなかの鳴る音が嫌いじゃないという男子が現れる「うるさいおなか」。
もと劇団員で吉祥寺に住んでいる朝日奈と、上から読んでも下から読んでも「ヤマダマヤ」の人妻・山田真野との淡い恋の物語「吉祥寺の朝日奈くん」。



ほとんどが高校生が出てくる話でしたが、わたしは高校の3年間を男子クラスで過ごし、高校時代に女子と話した経験がないため、どうしても高校生の恋愛というやつに共感できないというか、リアリティを感じにくかったです。トホホ・・・。
最後の「吉祥寺の朝日奈くん」だけが大人の物語なので、しっくり来ました。
不倫がテーマですが、まったくドロドロしておらず、さわやかな恋愛小説となっています。
ブログ『ほかならぬ人へ』で紹介した白石一文の小説にも通じるものがありました。
ちなみに、『ほかならぬ人へ』と『吉祥寺の朝日奈くん』の2冊は「祥伝社 創立40周年記念作品」として同じ版元から同時期に出されています。
いずれの作品もミステリーの要素が含まれており、ラストにはサプライズもあります。
ネタバレにならないように詳しいストーリーを書くのは控えておきますが、どれも面白い物語でした。著者は、そうとうのストーリーテラーだと思います。
今日で8月も終わりですが、この夏はたくさん小説を読んだ気がします。


2011年8月31日 一条真也