『進撃の巨人』

一条真也です。

進撃の巨人』1〜5巻、諫山創著(講談社)を読みました。
いま、ものすごく話題になっている漫画です。『このマンガがすごい! 2011オトコ編』(宝島社)でも1位に輝き、第35回講談社漫画賞少年部門を受賞しました。


                   21世紀の王道少年漫画


この作品は、2009年9月の「別冊少年マガジン」の創刊時から連載されています。
コミックスが1〜4巻でそれぞれ100万部を突破しており、8月9日に刊行されたばかりの第5巻も100万部突破は確実とされているそうです。
コミックスの 1巻あたり100万部を突破する「ミリオンセラー」は、『ONE PIECE(ワンピース)』や『NARUTO(ナルト)』など数えるほどしかないとか。
しかも、作者の諫山氏はデビュー1年半の新人でした。
ミリオンを売り上げるのは、異例中の異例と言えるでしょう。



その内容は、いわゆる人類の未来を描いたSFコミックです。
身長3〜15メートルの謎の巨人たちにより捕食され、人類は存亡の危機に瀕します。
生き残った人々は、巨大な壁の内側に生活圏を確保します。かろうじて安全を得たものの、かりそめの平和を享受しておよそ100年後に物語は展開します。ある日、60メートル以上の超大型巨人が出現して、50メートルの壁が崩されてしまうのです。
絶対に安全だと想定されていた壁を超える巨人の出現は、東日本大震災での想定外の大津波を連想せずにはいられません。想定=壁の高さがいとも簡単に乗り越えられてしまう恐怖を、この作品は冒頭から見事に描いています。
壁が崩されたことにより、多数の巨人が市街地に侵入します。
そして、巨人と人類との壮絶な戦いが繰り広げられていくのです・・・・・。



まだ完結していない作品ですので、ストーリーを詳しく説明することは控えます。
一読して、巨人たちの造形が素晴らしいと思いました。
彼らは、不気味なようでユーモラスでもあります。巨人に異常な関心を抱いていたというユングなら、そこにさまざまな人類の無意識の反映を見るかもしれません。


3メートル級の巨人は、かつて古館伊知郎に「人間山脈」とか「一人民族大移動」と称されたプロレス界の“大巨人”アンドレ・ザ・ジャイアントを思い出しました。
実際のアンドレの身長は2メートル23センチで、体重が240キロぐらいでしたか。
巨人レスラーといえば、他にもスカイ・ハイ・リー、ドン・レオ・ジョナサン、スウェーディッシュ・エンジェル、ザ・コンビクト、ジャイアント・ヘイスタック、エル・ヒガンテ、ジャイアント・シルバ、そして“東洋の巨人”ジャイアント馬場などがいました。
しかし、やっぱりアンドレが一番迫力があって怖かったですね。


また、10メートルぐらいの巨人は、子どもの頃に見た、丸大ハンバーグのCMに出てくる森の巨人を思い出しました。なんか、ムチャクチャなつかしいですが・・・・・。
やっぱり、巨人ってインパクトがありますよね!
それにしても、人類の敵が巨人とは意表を衝かれた気がします。
ヴァンパイア、ゾンビ、エイリアン、未知のウィルスなどが人類の存亡を脅かす話はよくありますが、巨人というのは珍しい。



そういえば、昔、石川球太の『巨人獣』というマンガがあったことを思い出しました。
しかし、編集者でマンガ原作者の竹熊健太郎氏によれば、『進撃の巨人』と『巨人獣』は明らかに違う作品であるとのこと。
『進撃』では巨人が人類の敵として描かれますが、『巨人獣』は突然巨人になってしまった青年が「生き延びよう」とする話であり、『進撃』とは正反対の構造になっているというのです。また、竹熊氏は次のようにTwitterで述べています。
「『進撃の巨人』のような、はじめに設定ありきの作品が登場して大ヒットしていることは、マンガ界が『次の段階』に移行する予兆に思えてならない。すなわち『キャラありき』の作り方から『設定ありき』へと再び移行するような気がするのだ」
「キャラありき」から「設定ありき」へ・・・・・。
この竹熊氏の指摘には、大いに納得しました。
それにしてもブログ『死刑執行中脱獄進行中』にも書いた「いつの間にか、日本の漫画がこんなに凄くなっていたとは!」という心境に再び陥りました。


2011年9月2日 一条真也