魂のエコロジー

一条真也です。

9月23日は、「彼岸」の中日であり、国民の祝日としての「秋分の日」です。
これは、「祖先をうやまい、亡くなった人々をしのぶ」ことを趣旨としています。
3月11日に発生した東日本大震災では多くの命が失われ、「死」は身近な存在であることを、わたしたちは改めて強烈に思い知らされました。
いまや、「死」についての話題はタブーなどではなくなりました。


つい先日に取材を受けた「リビング北九州」紙が送られてきました。
北九州市民を中心に愛読されている約30万部発行のフリーペーパーです。
わたしは、ブログ「となりびとエピソード」で紹介した連載を同紙に書いているのですが、今回はインタビュー記事がトップ面で掲載されています。


「いざというときを考える」というテーマで、「死」や「葬儀」について語りました。
「いざというとき」に備える『思い出ノート』(現代書林)の読者プレゼントもあります。
葬儀の流れ、法事・法要について、さらには各種の質問にもお答えしていますが、わたしは最後に「月を見上げ、懐かしいあの人を思い出そう」と呼びかけています。



世界中の神話や宗教や儀礼には、月こそあの世であるというイメージが残っています。
月が魂の向かう場所というのは、まさに普遍的なイメージなのです。
心理学者ユングが発見した人類の「集合的無意識」の一つであるとも思います。
一条真也の真心コラム」の最新記事「被災地の月」も、ぜひお読み下さい。
そして、あなたを天上から見守ってくれるご先祖たちも、かつてはあなたと同じ月を見上げていたはずです。そう、昭和の、大正の、明治の、江戸時代の、戦国時代の、中世の、古代の、それぞれの時代の夜空には同じ月が浮かんでいたのです。
日本民俗学の巨人・柳田國男は、著書『先祖の話』で、子孫とは先祖の生まれ変わりであると述べました。ならば、月は輪廻転生の中継点であり、月を通って先祖たちは子孫へと生まれ変わってくるのかもしれません。
まさに月が、時空を超越して、あなたと先祖の魂をつないでくれているのです。
ぜひ、月を見上げて、あなたのご先祖を想ってみてください。あなたのご先祖は、月にいます。そして、月から愛する子孫であるあなたを見守ってくれています。いつの日か、先祖はあなたの子孫として転生し、子孫であるあなたは先祖となります。
 


自分は先祖の生まれ変わりであり、自分もいずれは先祖になる。
ならば、自分は先祖の一人だし、先祖供養は自分供養でもあるということになります。
しかも、そう考えると自分の子どもや子孫、自分たちの後を継いで生まれてくる者たちだって、先祖ということになります。先祖供養とはまた子孫供養なのです。
子どもを慈しみ、大切にすることは、ご先祖様を敬うことでもあるわけですね。
ですから、教育などを通じて子どもたちの世界を豊かにしてあげることも、子孫のために地球環境を破壊しないように配慮することも、さらには原発の問題について議論に議論を重ねることも、とても大きな先祖供養だと言えるわけです。
ある意味で、本当の先祖とは過去にではなく、未来にいるのかもしれません。
先祖は子孫となり、子孫は先祖となる。これは、まさに「魂のエコロジー」です。
大いなる生命の輪は、ぐるぐると永遠に廻ってゆくのです。



拙著『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)で、「魂のエコロジー」について述べました。先祖は子孫とともに生きています。さらには、先祖は子孫となり、子孫は先祖となる。大いなる生命の輪は、ぐるぐると永遠に廻ってゆくのです。そして、自分の子どもや子孫が生きるということは、自分が生き続けるのと同じなのだとも述べました。
わたしたちが、いま生きているということは、両親や先祖の生命も一緒に生きているのです。そうなれば、もう個体としての死など怖くなくなるのではないでしょうか。


                 先祖は子孫とともに生きている


2011年9月23日 一条真也拝