読書について

一条真也です。

いよいよ秋が本番ですが、秋といえば「読書の秋」です!
取材を受けていた「ザ・リバティ」の11月号が送られてきました。
今回は、「読書時間が多い人ほど成功する〜なぜ本を読まないと損をするのか」という特集で見開き2ページにわたってインタビューが掲載されています。


                 「ザ・リバティ」2011年11月号


わたしのインタビューは、「『忙しいから本が読めない』のではなく『本を読まないから忙しい』」というタイトルでまとめられています。
じつは、ほぼ毎日、書評ブログを書いていることもあって、他人からは大変な読書家だと思われているようです。よく、「一条さんはムチャクチャ忙しいはずなのに、読書の時間をよく確保できますね」などとも言われます。
会社にいるときは、読書は一切しません。もちろん自宅の書斎では読みますが、主に読むのは年間の約3分の1を占める出張の移動時間とホテルの部屋にいる時間です。
とにかく読めるときは読みます。テーマパークとかラーメン店などの行列に並んでいるときも本を読んでいるので、人からあきれられますね(泣笑)。



別に速読法などを学んだわけではありませんが、読むのは早い方で、数年前に数えてみたら年間に700冊は読んでいました。まあ、最近は書評ブログを書く時間を取られて、ずいぶん冊数は減少しましたけど(笑)。
それも定規と赤のボールペンで傍線を引きながら読むのです。
わたしはとにかく読書によって、人生のさまざまな岐路をくぐり抜けて来ました。
社長に就任してすぐ読んだのは、ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』でした。
非常に感銘を受け、『ハートフル・ソサエティ』(三五館)というアンサー・ブックまで書いたほどですが、その後、ドラッカーの著書はすべて読破しました。
40歳になる直前、「不惑」という言葉の出典である『論語』を読みましたが、これまた感ずるところ大であり、一気に40回も読み返しました。
良きにつけ悪しきにつけ、わたしの読書は「過剰」なのです(苦笑)。


わたしは本を読むときに、その著者が自分ひとりに向かって直接語りかけてくれているように感じながら読むことにしています。
高い才能を持った人間が、大変な努力をして勉強をし、ようやく到達した認識を、2人きりで自分に丁寧に話してくれるのです。何という贅沢でしょうか!
ですから、わたしは昔の日本の師弟関係のように、姿勢を正して先生の高説を1人で聞かせていただくのです。もともと哲学や文学には目がありませんが、歴史書や伝記なども努めて読むようにしています。



中国の書物を漢文で読むこともあります。幕末維新までのわが国の教育に大きな力となったものは、漢籍素読儒学の教養でした。
なかんずく中国の歴史とそれに登場する人物とが、日本人の人間研究に大きく役立ったのです。『史記』『十八史略』『三国志』『資治通鑑』『戦国策』などは当然読むべき教養書だったのです。あの漢学嫌いの福沢諭吉ですら『左伝』15巻を11回も読み通して、その内容はすべて暗誦していたといいます。
これが福沢の人間を見る目をつくったので、漢籍でまず鍛えられた頭脳で、蘭学や英語をやったから眼光紙背に徹する勢いで、たちまち西洋事情を見抜いてしまったのです。
中国は広大な大陸に広がる天下国家で、異民族による抗争の舞台であり、その興亡盛衰における権力闘争は、それ自体が政治のテキストであり、これに登場する人物は、大型、中型、小型、聖人もあれば悪党もあり、そのヴァラエティさは万華鏡の如くです。
まさに人間探求、人物研究の好材料を提供してくれるわけで、日本人は中国というお手本によって人間理解の幅を大きく広げ、深めてきたと言えるでしょう。



プロイセンの鉄血宰相ビスマルクに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉がありますが、西欧の人々は主にローマ帝国の衰亡史などを参考に人間理解をしてきました。あらゆる生物の中で人間のみが、読書によって時間を超越して情報を伝達できるのです。本当に、すごいことだと思いませんか?
人間は経験のみでは、1つの方法論を体得するのにも数十年かかりますが、読書なら他人の経験を借りて、1日でできます。つまり、読書はタイム・ワープの方法なのです。
というわけで、忙しいから本が読めないというのは間違っているのです。
正しくは、本を読まないから忙しいということですね。



人生を商売にたとえてみると、すべて仕入れと出荷から成り立っています。
そこで問題となるのは仕入れであり、その有力な仕入先が読書なのです。
わたしは自分が読んでよいと思えば、その本を社員のみなさんにも紹介します。
毎月の社内報でも「仕事に役立つ、社長のおススメ本」というコーナーがありますし、「ハートライフ」という互助会の会員情報誌でも本の紹介をしています。
さらには、新聞や雑誌でも読書案内のページを持っています。
わたしの紹介する本を楽しみにしてくれる読者の方がたくさんいますので、これからも、本を読むことはやめられません。なお、わたしの読書に対する考え方は『あらゆる本が面白く読める方法』(三五館)に詳しく書いており、インタビューで触れた「DNAリーディング」についても説明しています。興味がある方はぜひお読み下さい。

  
                      万能の読書術


2011年9月30日 一条真也