勇気の人

一条真也です。

東京に来ています。
本郷にある東京大学医学部附属病院を訪ねました。
ブログ『人は死なない』で紹介したベストセラーの著者である矢作直樹先生と面会するためです。矢作先生は、東京大学大学院医学系研究科・医学部救急医学分野教授にして、さらに東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部部長です。


                     矢作直樹先生


ブログ「矢作直樹先生からの手紙」にも書いたように、わたしたちは文通あるいはメール交換をしているのですが、ようやく今日お会いする運びとなったのです。
東大病院は非常に重厚な建物で、しかもその広大さに圧倒されました。
患者さんや見舞い客も、ものすごい数です。
1階の受付で名前を名乗ると、青い診療衣を着た矢作先生がわざわざ迎えに来て下さいました。そのまま救急部の図書室という部屋に案内されましたが、図書室とはいっても本は置かれていませんでした。不思議な運命の糸に手繰り寄せられてやっと会えたわたしたちは、1時間半もの間ずっと喋り通しでした。
こういうことを言うと不遜かもしれませんが、これほど話題や考え方が合う方とは久々にお会いしました。「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生以来の運命の出会いかもしれません。とにかく、2人でずっと「死」と「葬」について語り合いました。
矢作先生の宗教に対する造詣の深さには、感服いたしました。


                    これが東大病院だ!


矢作先生は、拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)を非常に高く評価して下さいました。たくさん購入されて周囲の医師の方々にも配って下さっているとのことで、まことに光栄です。また、『世界をつくった八大聖人』(PHP新書)も高い評価を頂戴し、現在は『ロマンティック・デス〜月を見よ、死を想え』(幻冬舎文庫)を読まれているとか。
矢作先生の『人は死なない』(バジリコ)誕生秘話もたっぷりお聞きしました。
矢作先生は田口ランディさんの小説『キュア』(朝日文庫)の主人公のモデルなのですが、その出版記念パーティーで知り合ったバジリコの社長さんに「死」についての考えを述べたところ、「ぜひ、本を書きませんか」と言われたそうです。
そして、じつに3年の時間をかけて、『人は死なない』が完成しました。


              ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索


何より、現役の臨床医が「死」を語ったところに本書の価値があります。
この世界では多くの臨床医が患者の「生」と「死」に直面し続けていますが、その背景にある神秘について語った人はこれまでいなかったのではないでしょうか。
ご本人にも申し上げたのですが、矢作先生はサン=テグジュぺリのような人です。
『夜間飛行』『人間の大地』、そして『星の王子さま』といった名作を書き残したサン=テグジュぺリは初期の飛行機乗りでした。
飛行というのは一種の臨死体験であると、わたしは思います。飛行機とは肉体から飛び立つ幽体そのものであり、天空から見下ろす地上とは幽体離脱後の肉体なのです。
もっとも、飛行機に乗ったのはサン=テグジュぺリが初めてではありません。
彼の前には、かのライト兄弟リンドバーグもいました。
しかし残念ながら、ライト兄弟には文才がありませんでした。リンドバーグには『翼よ、あれがパリの灯だ!』という有名な著書がありますが、あくまでもノンフィクションの古典とされる手記の類であり、サン=テグジュぺリのように飛行体験を文学体験、あるいは哲学的思考にまで高めたわけではなかったのです。
豊かな想像力によって地上の束縛を脱ぎ捨て大空に飛翔した物語は、古代中国の『荘子』をはじめとしてたくさんあります。しかし、実際に空に飛び立って新たな世界像を提示したのはサン=テグジュペリが人類史上初めてではないでしょうか。
大空から見た大地には、当然のことながら国境などは存在しません。
国家も民族も言語も宗教も超えた「地球」、そしてそこに住む「人類」をサン=テグジュぺリは天上から見てしまったのです。
それとまったく同じことが、矢作先生の執筆には言えるのではないかと思います。



わたしは、矢作先生に一番聞きたいことを質問しました。
それは、日々多くの末期患者さんたちと接する中に、死の恐怖に取りつかれて「死にたくない!」と言う人がどれくらいいるかという質問でした。
意外にもその答えは、「みなさん、それほど死を怖れていませんよ」というものでした。
かのエリザベス・キューブラー=ロスは、有名な「死の受容への五段階」説を唱えました。次の通りです。否認→ 怒り→ 取引→ 抑うつ→ 受容
しかし矢作先生によれば、非常に多くの患者さんが早い段階で「受容」に至るというのです。このお話は、わたしにとって新たな発見であり、大きな収穫でした。
そして、すべての人々に希望を与える言葉であると思いました。



ところで、矢作先生が担当されている患者さんの名前をお聞きして、わたしは本当に仰天しました。間違いなく日本で最高の超VIPの方々ばかりです。
矢作先生ご自身が日本を代表する臨床医なわけですが、そんな凄い方が「魂」や「霊」の問題を正面から語り、「人は死なない」と堂々と喝破されました。
これほど意義のあることはありませんし、ものすごい勇気が必要だったと思います。
しかし、現役の東大医学部の教授にして臨床医が「死」の本質を説いたことは、末期の患者さん、その家族の方々にどれほど勇気を与えたことでしょうか!
多くの死に行く人々の姿を見ながら、多くの尊い命を救いながら、またあるときは看取りながら、矢作先生は真実を語らずにはいられなかったのです。まさに、矢作直樹先生こそは「義を見てせざるは勇なきなり」を実行された「勇気の人」であると思います。



また、先生は「義」だけでなく「礼」の人でもあります。昭和31年生まれの先生は、38年生まれで7つも年下のわたしに対して非常に礼儀正しく接して下さいました。
最後は、わざわざ東大病院の玄関まで一緒に下りていただいたうえ、わたしの姿が完全に見えなくなるまで数分間もずっと立ったまま見送って下さり、大変恐縮しました。
その姿は医師というよりは、まるで一流ホテルのホテルマンか高級旅館の支配人のようでした。ホテルもホスピタル(病院)もルーツは同じですが、まさに矢作先生に「ホスピタリティ」の原点を見た気がしました!


                     矢作直樹先生と


そんな勇気の書である『人は死なない』は、いま、大変なベストセラーとなっています。
次回作のオファーも来ているそうですが、なんと、沖縄の霊性についての本だそうです。
沖縄といえば、わが社と縁が深いではないですか!
矢作先生は、「神の島」と呼ばれる久高島に行きたいと言っていました。
鎌田東二先生がよく行かれる島で、わたしも大好きなヒーリング・スポットです。
矢作先生、今度、ぜひ一緒に久高島に行きましょう!
また、沖縄本島もいろいろご案内させていただきます。
今日は、ご多忙な矢作先生の貴重なお時間を頂戴し、いろいろと意見交換させていただきました。本当に楽しく、また有意義な時間でした。ありがとうございました。
今後とも、末永いお付き合いを、どうぞよろしくお願いいたします。


2011年10月14日 一条真也



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