人と犬と・・・

一条真也です。

東京に来ています。
昨夜、12月刊行予定の『世界一わかる「論語」の授業』(PHP文庫)の打ち合わせをしました。その際、編集者から「中国人こそ「論語」を学ぶ必要がありますよね」と言われました。そして、ネットである映像が大きな話題となっていると教えてくれました。


今日ランチ・ミーティングした「出版寅さん」こと内海準二さんからもその話題が出たので、YouTubeで見たのですが、非常にショックを受けました。
それは、9月13日に中国広東省内の路上で車にはねられ瀕死の重傷を負った2歳の女児の映像でした。倒れている女児を、なんと多くの通行人が無視して通り過ぎていくのです。じつに18人の通行人が誰も女児を助けようとしませんでした。
女児は後続車にもう一度ひかれ、現地時間の21日未明に死去したそうです。
その様子が、現場の防犯カメラの映像で明らかになったのです。
わたしは、路上に倒れている女児と、彼女の側を通り過ぎていく通行人の姿を見ながら、アンデルセンの『マッチ売りの少女』を連想してしまいました。
詳しくは、ブログ『マッチ売りの少女』をお読み下さい。



網易など多くの中国メディアが女児の死去を速報で伝え、映像がネット上に出回りました。中国国内メディアも一斉に注目し、「社会道徳の欠如」を象徴する事件として大騒動に発展したそうです。人口の多い中国では、「他人の災難には関わらない」という教育が徹底されているとも伝えられます。
なぜなら、中国では人口が多く本格的な捜査が大変なため、第一発見者や通報者をいきなり容疑者として取り調べることが多いというのです。
また、救急車が有料のため、通報者が料金を払わされることもあるとか。
これは、もう国家のシステムそのものがおかしいと言うしかありません。



それにしても、孔子孟子を生んだ国が、どうしてこうなってしまったのか?
ブログ「義を見てせざるは・・・」では、正義感の強い中国人男性を紹介しました。
それだけに、今回の出来事は本当に残念でなりません。
わたしは多くの中国人留学生を相手に「孔子研究」の授業を担当していますが、今後はいっそう気合を入れて「人の道」を説いていきたいと思います。
唯一の救いは、この映像が中国でも大騒動になったこと。倒れている女児を見殺しする行為が“異常”であるとの認識は現在の中国にあるということですから。


この映像を見たとき、以前、やはりYouTubeで見た映像を思い出しました。
南米のチリで高速道路で車にはねられた犬を仲間の犬が救った映像です。
「人は犬にも劣るのか」などと言う気はありませんが、暗澹たる気分になりました。
わたしは、「倫理」についての啓蒙活動も、互助会の大切な使命だと思っています。
これから、新橋の全互協本部に行って、広報・渉外委員会を開催します。


2011年10月28日 一条真也