「タイガーマスク」実写化

一条真也です。

世間は大阪ダブル選挙の結果で持ちきりですね。
でも、まったく興味がないので、また他のことを書きます。
梶原一騎の代表作である『タイガーマスク』が実写映画化されるそうです。
映画「タイガーマスク」は、落合賢監督で来年公開の予定だとか。
主演の伊達直人役はウエンツ瑛士に決まりました。


                 「スポーツ報知」11月27日号


タイガーマスク』は、1968〜71年に『ぼくら』、『週刊少年マガジン』などに連載された、梶原一騎氏原作の人気コミックが原作です。
児童養護施設の「ちびっこハウス」で育った少年・伊達直人は、悪役レスラー養成機関「虎の穴」にスカウトされます。直人は鬼教官・ミスターXの殺人的トレーニングに耐え、タイガーマスクとしてプロレスのリングにデビューします。ところが、「ちびっこハウス」に多額の寄付をするために、彼は「虎の穴」を裏切ることになるのです。
69年に日テレ系でアニメ化されると、最高視聴率31・9%を記録し、国民的人気番組となりました。ブログ「梶原一騎の格闘ロマン」には、少年時代のわたしの「タイガーマスク」への思い入れが書かれています。



今年1月には、突如として「タイガーマスク」の名が全国で語られました。
ブログ「タイガーマスク現象」ブログ「タイガーマスク運動」にも書いたように、2010年末から今年にかけて「伊達直人」を名乗る人物による養護施設などへのランドセルや現金などの寄付が相次いだのです。わたしは一連の寄付行為を「隣人愛の表れ」ととらえ、そのことを『隣人の時代』(三五館)に詳しく書きました。



そして、プロレスラーのタイガーマスクは現実のリングでも活躍しました。アントニオ猪木率いる新日本プロレスが、アニメ「タイガーマスク二世」とのタイアップで1981年に若手レスラーの佐山聡に覆面を被せ、「タイガーマスク」としてデビューさせたのです。
その後、全日本プロレスでも三沢光晴が2代目タイガーマスクになり、以後も多くのタイガーマスクが生まれました。しかし、やはり何と言っても初代タイガーマスクがデビューしたときのインパクトの大きさは格別でした。



昨日、原作者・梶原一騎の弟である真樹日佐夫氏の著書『格闘家は女々しい奴が9割』(東邦出版)という凄いタイトルの本を読んだのですが、その中に「スターの象徴、タイガーマスク」という一文がありました。
真樹日佐夫氏日佐夫氏は、次のように書いています。
タイガーマスクは、私の兄の梶原一騎の劇画から生まれた。『あしたのジョー』は不朽の名作だが、『タイガーマスク』も大変良く出来た素晴らしい作品である。
自分が育った孤児院の子供たちのために虎のマスクをかぶってプロレスラーとして戦うというストーリーは、プロレスはなぜ切ないまでにファンの心を揺さぶるのか、その根源的な意味を教えてくれた。格闘家は自分のために戦う。だが、プロレスラーは、ファンのため、愛する者のために戦うのだ。それはプロレスが夢を売るビジネスであり、ビッグマネーを得る手段でもあるからだ。タイガーマスクほど、プロレスラーの在りようを象徴的に示したプロレスストーリーを私はほかに知らない」
わたしは、真樹氏のこの言葉にいたく感銘を受けました。



また、真樹氏は現実のタイガーマスクとなった佐山聡を「天才」と称え、「兄が創造したタイガーマスクを、大方の予想をはるかに超えた形で具現化してくれた」と述べています。
さらに、真樹氏は佐山聡という「天才」について次のように書いています。
「プロレスの人気は、力道山ジャイアント馬場アントニオ猪木がつくったものだ。その事実は動かせない。だが、プロレスの持つ根源的な楽しさと美しさを、最も具現化して見せたのは佐山のタイガーマスクといっていいだろう。
佐山はその後、シュートに目覚め、ヒクソン・グレイシーを来日させたり、シューティングを立ち上げたり、総合格闘技の道を歩み始める。シュートに傾倒した男が、誰よりもプロレスラーらしいレスラーだった、というのは何とも皮肉な話ではある」


               『TeLePAL』1986年5月24日号


ブログ『1976年のアントニオ猪木』にも書いたように、わたしは「狂」のつくほどのプロレス&格闘技マニアで、今はなきSONYのBetaでガンガン録画しまくっていました。
大学の4年生ぐらいのときに、テレビ情報誌『TeLePAL』(小学館)に稀代の格闘技ビデオ・コレクターとして紹介されたことがあります。
そのとき、わたしは愛用の虎の仮面を被って写真撮影してもらいました。当時はチョビ髭を生やしていたので、まるでブラック・タイガーみたいになりましたが(笑)。
このタイガーマスク写真には、わが家族や友人たちも衝撃を受けたようです(苦笑)。
その頃、小倉の松柏園ホテルで実際の佐山聡氏にもお会いしました。
すでに第1次UWFも崩壊し、自ら新しい格闘技である「修斗」の確立に奔走されていた頃で、ちょうど新日鉄の起業祭の講演のために北九州に来られており、松柏園に宿泊されていたのでした。松柏園の貴賓室でお会いした佐山氏は、タイガーマスクそのままの人なつっこい笑顔だったことを憶えています。



今度の実写映画版では、伊達直人が特殊なスーツを着ると、運動能力や筋力が格段にアップするタイガーマスクに変身するという設定だそうです。
スパイダーマンバットマンのような“アメコミ風アクションヒーロー”を意識し、マスクのデザインも変える予定とのこと。さらにストーリーの上では、原作を知らない世代にも魅力を伝えるため、「なぜタイガーマスクが誕生したのか」に焦点をあて、全体の約3分の1を伊達直人が虎の穴で過ごすエピソードに費やすそうです。


ミスターX役は哀川翔、ヒロインの若月ルリ子役は夏菜が演じるとか。
21世紀のタイガーマスクが劇場に再び現れるのは楽しみですが、個人的には、主人公の伊達直人役は、華奢なイメージのウエンツよりも適役がいると思いました。
大のプロレス好きで、実際にアントニオ猪木とも特別エキシビションで闘ったことのある「タッキー」こと滝沢秀明です。


滝沢秀明といえば、ジャニーズ事務所の中核をなすタレントです。
同じ梶原一騎の格闘ロマン巨編である『あしたのジョー』が実写映画化されたときは、主人公の矢吹丈ジャニーズ事務所の後輩である山下智久が演じています。
あと、真樹日佐夫氏も映画化には絡んでいるでしょうから、真樹氏のプッシュで、ぜひ「初代タイガーマスク」の佐山聡氏も映画に出演させてほしいと思います。


2011年11月29日 一条真也