『のこされた あなたへ』

一条真也です。

のこされた あなたへ』(佼成出版社)の見本が届きました。
「3・11 その悲しみを乗り越えるために」というサブタイトルがついています。
そう、本書は東日本大震災愛する人を亡くした方に向けて書いた本なのです。


3・11 その悲しみを乗り越えるために



本書の帯には、「死別はとてもつらく悲しい。けれど、決して不幸な『出来事』ではありません。」と大きく書かれています。また、「グリーフケアの入門書にして決定版」というコピーが赤く囲まれています。そして、「大切な人を突然失ったとき、どうやって立ち直ればよいのか。」とも書かれています。
わたしにとっては、『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)に次ぐグリーフケアの著書となります。わたしの持てるすべてを総動員して、本書を書き上げました。



本書の「目次」は、以下のようになっています。
「まえがき〜遺族からすべてを奪った3・11」
序章
第一章:葬儀ができなかったあなたへ
第二章:遺体が見つからないあなたへ
第三章:お墓がないあなたへ
第四章:遺品がないあなたへ
第五章:それでも気持ちのやり場がないあなたへ
「あとがきにかえて〜別れの言葉は再会の約束」



2011年3月11日は、日本人にとって決して忘れることのできない日になりました。
三陸沖の海底で起こった巨大な地震は、信じられないほどの高さの大津波を引き起こし、東北から関東にかけての太平洋岸の海沿いの街や村々に壊滅的な被害をもたらしました。その被害は、福島の第1原子力発電所の事故を引き起こし、いまだ現在進行形の大災害は続いています。
大量死の光景は、『古事記』に描かれた「黄泉の国」がこの世に現出したようでもあり、また仏教でいう「末法」やキリスト教でいう「終末」のイメージそのものでした。
津波の発生後、しばらくは大量の遺体は発見されませんでした。
いま現在も、多くの行方不明者がおられます。
火葬場も壊れて通常の葬儀をあげることができず、現地では土葬が行われました。
さらには、海の近くにあった墓も津波の濁流に流されました。



葬儀ができない、遺体がない、墓がない、遺品がない、そして、気持のやり場がない・・・・・まさに「ない、ない」尽くしの状況は、今回の災害のダメージがいかに甚大であり、辛うじて助かった被災者の方々の心にも大きなダメージが残されたことを示していました。現地では毎日、「人間の尊厳」というものが問われました。亡くなられた犠牲者の尊厳と、生き残った被災者の尊厳がともに問われ続けていたのです。
この国に残る記録の上では、これまでマグニチュード9を超す地震は存在していませんでした。地震津波にそなえて作られていたさまざまな設備施設のための想定をはるかに上回り、日本に未曾有の損害をもたらしました。じつに、日本列島そのものが歪んで2メートル半も東に押しやられたそうです。それほど巨大な力が、いったい何のためにふるわれ、多くの人命を奪い、町を壊滅させたのでしょうか。あの地震津波原発事故にはどのような意味があったのでしょうか。
そして、愛する人を亡くし、生き残った人は、これからどう生きるべきなのか。
そんなことを考えながら、残された方々へのメッセージを書き綴ってみました。



もちろん、どのような言葉をおかけしたとしても、亡くなった方が生き返ることはありませんし、その悲しみが完全に癒えることもありません。
しかし、少しでもその悲しみが軽くなるお手伝いができないかと、わたしは一生懸命に心を込めて本書を書きました。時には、涙を流しながら書きました。
大震災の犠牲になった方の遺族・関係者のみならず、すべての“愛する人を亡くした人”に本書を読んでいただきたいと思います。すでに版元には「ブログで刊行を知ったのですが、いつ書店に並びますか」とか「知人に贈りたいのですが、クリスマスにまでには出版されますか」などの問い合わせもあったそうです。
今年、本書を書き上げ、なんとか年内に上梓できたことに深い安堵感を覚えています。
本書のプロデューサーで編集者の長谷川紗耶香さんには大変お世話になりました。
長谷川さんに心より感謝申し上げたいと思います。
なお、本書は8日から全国主要書店に並ぶ予定です。
ぜひ、ご一読下さいますよう、お願いいたします。


2011年12月5日 一条真也