一条真也です。
福岡空港からANAに乗って、先程、小松空港に着きました。
金沢市内のホテルに入ると、「朝日新聞」の夕刊データがメールに届いていました。
昨日の午後3時から「朝日」の取材を受けたのですが、もう記事が出ていて驚きました。
「朝日新聞」12月13日夕刊
「介護に新顔、続々」という大見出しで、「月7万8千円ホームも」「働き手の確保が課題」という見出しが続きます。
「月7万8千円ホーム」というのは、もちろん、わが社の「隣人館」のことです。
どうも、介護業界では大きな話題になっているようです。
最初の「様々な介護サービスに異業種の企業が参入する事例が、九州や山口で相次いでいる。高齢化で介護の市場自体が拡大しているためで、企業ノウハウを活用した『安さ』を売りにする企業もある」というリードが書かれています。
それに続いて、次のようにわが社のことが紹介されています。
「冠婚葬祭業のサンレー(北九州市)は2012年3月、福岡県飯塚市に有料老人ホーム(18室)を新設する。ここでは日帰りの介護サービスや職員が自宅を訪ねる訪問介護も手がける。北九州市でも開業準備を進めており、今後5年間で福岡県を中心に約100施設を開きたい考えだ。
売りは家賃、食費、管理費をあわせて月7万8千円という安さ。普通は月に十数万円かかるというが、建物を小規模にすることで建築コストをおさえた。敷金は9万9千円かかるが、数千万円することもある入居金はとらない。
サービスの質を落とさず、1円単位の経費節減にこだわる企業ノウハウを持ち込む。『今の介護施設のサービス費用は高い。スケールメリット(規模の効果)を出して、費用を年金の範囲内に収めたい』。サンレーの佐久間庸和社長は語る」
とまあ、こんな感じです。わが社の隣人館は介護事業のイノベーションを目指しており、けっして「安さ」だけが売りではありません。また、「“精神集約型産業”としての冠婚葬祭業の延長として介護に取り組みたい」というわたしの話に記者の方が非常に共感してくれたので、そのあたりを書いてくれるかなと期待していました。
しかし、どうもマスコミ的には「安さ」に注目してしまうようですね。
昨日は「朝日」以外にも2つの経済誌から同じような取材を受けました。
記事には、「主な政令指定都市の高齢化率」も出ていました。
それによれば、以下のような順位です。北九州市(24.8%)、静岡市(24.3%)、京都市(23.2%)、新潟市(23.1%)、大阪市(22.6%)、神戸市(22.6%)、札幌市(20.1%)、横浜市(19.8%)、福岡市(17.4%)。
北九州がダントツで高齢化都市のトップを走っていることがわかります。
ふつう、高齢者が多いことは良くないこととされることが多いようです。
しかし、わたしは高齢者が多いことは素晴らしいことだと考えています。
そう、北九州市の「強み」とは、最も高齢者の多い街であるということです!
隣人館イメージ・パース
ブログ「北九州へ!」にも書きましたが、わたしは日本中の高齢者の方々に北九州市に来ていただきたいです。現在、全国には約470万人もの独居老人が分散しています。それらの方々の中には、孤独死をする危険性が高い方も多いです。
そういった方々に北九州に参集していただき、余生を過ごしていただきたいのです。
高齢化先進都市である北九州市は、高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきだと思います。
そこで、大事なポイントは「孤独死をしない」ということです。
隣人祭りをはじめとした多種多様なノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。そうなれば、「北九州にさえ行けば、仲間もできて、孤独死しなくて済む」というふうになるのではないでしょうか。
全国の独居老人には、どんどん北九州に移住していただきたいと真剣に願っています。
もともと、わたしは北九州市を「高齢者福祉特区」にするべきだと訴えてきました。
そして「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」をイメージし、そのモデルとして高齢者複合施設である「サンレーグランドホテル」を北九州市の八幡西区に作りました。いわゆるセレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。
それは、ものすごく深い問題と関わったプロジェクトだと思っています。というのは、この試みは「人類の幸福」とダイレクトに関わっているのです。
わたしは「幸福」というものに関心が深く、かつて「幸福」に関するジャンルの本を読みあさったことがあります。そこで、どうしても気になったのが、日本では、人が亡くなったときに「不幸があった」と人々が言い合うことでした。
わたしたちは「死」を未来として生きている存在です。もし死が不幸な出来事だとしたら、死ぬための存在である私たちの人生そのものも、不幸ということになります。
わたしは、不幸な人生など送りたくありません。幸福な人生を送りたいと思っています。最初から「不幸」という結末の見えている負け戦になど参加したくないのです。
死が不幸なら、それに近づく過程に他ならない「老い」も不幸ということになります。
ですから、人が亡くなって「不幸があった」などといっているあいだは、日本人の幸福などはじめからありえません。
近代工業社会はひたすら「若さ」と「生」を謳歌し、讃美してきました。
しかし、高齢化社会では「老い」と「死」を直視して、前向きにとらえていかなければなりません。今こそ幸福な「老い」と「死」のデザインが求められているのだと考えています。
日本は世界でもっとも高齢化が進行している国ですが、その中でも北九州市はもっとも高齢化が進行している政令指定都市です。つまり人口100万人以上の都市でいえば、北九州市は世界一の超高齢化都市であるといえます。その多くの高齢者が生活する北九州市において「老い」が不幸だとしたらどうなるでしょうか?
北九州市は不幸な人間がもっとも多くいる世界一不幸な街になります。しかし逆に、「老い」が幸福だとしたら、世界一幸福な街になるのです。
世界一幸福な街と世界一不幸な街。まさに、天国か地獄かです。「老い」のとらえかたひとつでこんなにも変わるのであれば、わたしたちは天国を選ぶしか道はありません。
ですから、「老い」と「死」に価値を置く施設であるサンレーグランドホテルが北九州市に誕生したことは多くの方々から評価されました。なぜなら、高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのものだからです。
こういった考え方そのものが、ドラッカーの「強みを生かす」という思想をベースにしていていることがおわかりいただけるかと思います。
わたしは、北九州市は「老福都市」を、「助け合い都市」を、そして「隣人愛都市」を目指すべきだと確信します。平たく言えば、それは「社会福祉都市」ということになるかもしれません。そんな都市が日本にできるなんて素敵じゃないですか!
ちなみに、隣人館の第2号は、サンレーグランドホテルの隣接地に作る予定です。
わが社は、これからも「生老病死のポジティブ・シフト」に挑戦します。
2011年12月13日 一条真也拝