「死」は不幸ではない

一条真也です。

日本を代表するマーケティング・プランナーである谷口正和氏が、自身のブログ「発想の画帖」において拙著『のこされた あなたへ』(佼成出版社)を紹介して下さいました。


谷口正和氏のブログ「発想の画帖」より



谷口氏のブログの記事「『死』は不幸ではない」では、以下のように書かれています。
「精神世界と人間世界の架け橋について、多数の著書を著している一条真也氏から、さらに深い哲学的思考をこめて書いた著書『のこされた あなたへ』(佼成出版社)をお送りいただいた。この本の『あなたへ』とは抽象的な意味の『あなたへ』ではない。3・11で『葬儀ができなかったあなた』『遺体が見つからないあなたへ』『お墓がないあなたへ』『遺品がないあなたへ』『それでも気持ちのやり場がないあなたへ』という具体的な『あなたへ』呼びかけている本なのである。
まだ最後まで読み切ったわけではないが、深く考えさせられるものがある。
特に愛するものには必ず再会できるという箇所には深く胸を打たれた。『死』は不幸ではない、それは人生というもの、生命というものにとって、終わりの始まりなのだ。宗教的、哲学的考察を入れねば解決できない問題に、私たちは初めて出合った」



わたしは、この文章を読んで非常に感激しました。
じつは、「死」は不幸ではないという考えは谷口氏からヒントを頂いたのです。
わたしが大学生の頃に、谷口氏の『第三の感性』という本が出ました。
分厚い本でしたが、活字が大きくて読みやすかったです。
この本で、「コンセプト」という考え方に衝撃を受けたのを記憶しています。
東急エージェンシーに入社したのも、谷口氏への憧れが心の底にありました。
わたしがプランナーの道を歩みはじめてからも、『ザ・貴族』とか『大観光時代』とか『幸福への階段』など、刺激に富んだマーケティングの本を次々に世に問われ、わたしはそれらの本を片っ端から読んでいきました。
たしか、わたしが経営していたハートピア計画のプランナーだった東野和範君がエピック・ソニーから出ているカセットブックの仕事をしていたことから、谷口氏のカセットブック「コンセプトの未来」の収録にお邪魔したのが最初の出会いでした。
この「コンセプトの未来」は、中谷彰宏氏などにも多大な影響を与えたそうです。



収録後に谷口氏にご挨拶して雑談したとき、ちょうど、葬儀の話題が出ました。
そのとき、谷口氏は「われわれは死を未来として生きている存在です」とおっしゃったのです。その言葉は、わたしに大いなるインスピレーションを与えてくれました。
その後、拙著『遊びの神話』がPHPから文庫化されたとき、谷口氏は解説を書いて下さいました。1991年6月のことでしたが、その解説では、わたしのことを「人生なにゆえに楽しいか、幸福か。モノの豊かさをすでに通過してしまった氏の役割は、大きく到来しつつあるマインド・マーケティング時代の水先案内人であるのかもしれない。」と書いて下さいました。そして、最後に、こう締め括られています。
「本書の中に私は21世紀を爪先立ってみる少年の姿を見た。」
憧れの人からこんなことを言われて、当時のわたしは本当に嬉しかったです。



のこされた あなたへ』のコンセプトに何か感じていただけたなら、それは谷口正和氏のDNAを受け継いだものだということをお知らせしたいと思います。
ムーンサルトレター」も最新のレターがUPしましたので、よろしければお読み下さい。
最後に、ひと言。「死」は、けっして不幸ではありません。


2011年12月22日 一条真也