『真・異種格闘大戦』

一条真也です。

東京から戻ってきました。
昨夜は「カラオケ・キング」こと日本経済新聞社の鈴木慎一さんと「東京の止まり木」ことカラオケ・スナックDANで飲みました。そのとき、鈴木さんから「最近のブログ、格闘技に入れ込み過ぎじゃないの?」と言われてしまいました(笑)。
そう言われても、好きなものは好きなのです。仕方ありません。
ということで、『真・異種格闘大戦』全10巻、相原コージ著(双葉社)を読みました。


怒涛の最終巻!!! いま、奇跡が起きる・・・・・!!



ブログ『地上最強の生物は誰だ!?』で紹介したコンビニ・マンガのオリジナルです。
冒頭では、「THE 最強」という格闘技トーナメントが開催されます。
それは、ボクシング、相撲、柔道、レスリング、伝統空手、フルコンタクト空手、サンボ、キックボクシング、ムエタイカポエラ、テコンドー、モンゴル相撲、中国拳法、日本拳法太極拳、プロレス、古流柔術ブラジリアン柔術合気道総合格闘技、バーリ・トゥード、軍隊格闘術、地下格闘技、ストリートファイト・・・・とにかく、全世界のあらゆる格闘技の現役チャンピオン64名が参加して争われる究極の最強決定トーナメントでした。



この前人未到のトーナメントを制したのは弱冠18歳の日本人、強矢鋼でした。人類史上初めて世界中の誰もが認める真の「地上最強の男」となった鋼は、一種の虚脱感に包まれます。そんな彼のもとに謎の覆面男が現れ、鋼はアフリカ大陸の奥地に連れていかれます。そこでは、なんと「地上最強の生物」を決めるトーナメントが開催されようとしていたのでした。地球上のあらゆる地域、あらゆる生物の中から、特に厳選された16の最強生物が「地上最強」の座を賭けて、闘いを繰り広げるのです。
参加する生物とは、ライオン、トラ、アフリカゾウアナコンダナイルワニ、ヒグマ、マウンテンゴリラ、インドサイ、カバ、スイギュウ、ヒクイドリ、クズリ、オオカミ、シマウマ、イヌ、そしてヒトです。果たして、トーナメントの結果は?
それは、ここには書きません。読んでからのお楽しみです。
意外な展開の連続に、わたしは時間の経つのも忘れました。



生物たちのキャラも立っていて、食物連鎖からの脱却をたくらむシマウマの革命家「チェ・ゼブラ」などは素敵すぎます! 相原コージの往年の名作『かってにシロクマ』のシロが登場するのも嬉しいサービスでした。
本書にはシートンの『動物誌』などの引用も見られるように、本格的な動物の知識が満載で、ずいぶん動物の生態に詳しくなれます。また、実在の生物のみならず幻獣まで出てくるので、一種の「博物誌」的要素もあります。
とにかく、こんなにスケールが大きくて面白いコミックは久しぶりでした。


格闘技だけでなく、動物についても詳しくなりました



1回戦は、「地上最強の男」である強矢鋼の相手はカバでした。
そこで、カバが鋼に対して「おいヒト、野生をなめんなよ」と言い放つ場面があります。
そして、カバは「俺達の闘いはお遊びじゃねーんだ」とも言います。
そうです。狂言回し的存在のオリバー君(なつかしい!)が本書で解説しているように、人間にとって「強い」ということは数ある価値の一つに過ぎません。
「強い」以外にも、「頭がいい」「金持ち」「美しい」「面白い」「権力を持っている」「芸術的才能がある」「性的魅力がある」などの価値を人間は大切にしています。
しかし、野生においては「強い」ということが唯一絶対の価値となります。
なぜなら、野生においては「弱い者」は「強い者」に食われます。
「弱い者」は自分の遺伝子すら残すことができないのです。


勝戦を制した地上最強の生物とは?



『地上最強の生物は誰だ!?』では、1回戦の模様までしか描かれていませんでした。
わたしはコミックの単行本を買い求め、その後の2回戦、準決勝、そして決勝戦の物語を読みました。どれも、すこぶるスリリングな戦いで魂が震えました。
先日、ついに最終巻である第10巻が刊行されました。
それで、早速アマゾンに注文して取り寄せ、ようやく今夜読了したのです。
いやあ、想像を絶する凄い結末でした。帯には「いま、奇跡が起きる・・・・・!!」と書かれていますが、本当に奇跡が起こるのです。
神話的というか、黙示録的というか、とにかくブッ飛んだラストです。
ネタバレになるので、決勝戦を制した地上最強の生物については触れません。



この作品は、完成までに丸7年かかっています。
著者は、第10巻の「あとがき」の中で次のように述べています。
「7年前は日本の格闘技界もまだ大いに盛り上がっていて、『今自分が面白いと思えるものって格闘技ぐらいしかないなあ』との思いから、理想の格闘漫画を描くつもりで本作の連載を始めたんだけど、まさか7年後の日本の格闘技界がこんなにもお寒い状況になっているとは思いもしなかった。私自身の格闘技熱も徐々に冷めつつあったけど、必死に己に火をくべてなんとか最後まで描ききることができた」
まったく、同感です。本当に、日本の格闘技界はつまらなくなりました。



さて、ブログ『力道山の真実』に書いたように、前回、DANに行ったのは力道山の命日である12月15日でした。そして、22日は力道山木村政彦が戦った「昭和の巌流島」の決戦が行われた日です。1954年12月22日、両国国技館で行われたのでした。
ブログ『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で、このプロレス史最大の謎と言われる戦いについて詳しく書いています。
 


また、今日はあるニュースを知りました。昨日、「まだら狼」の名で知られた元プロレスラーの上田馬之助(本名・上田裕司)さんが21日午前10時7分、呼吸不全のため大分県臼杵市内の病院で死去したというニュースです。
上田さんは、1958年に大相撲の追手風部屋に入門しました。
60年にプロレスへ転向し、力道山率いる日本プロレスに入団、その後は新日本、全日本などで悪役として人気を集めました。96年3月に交通事故に遭い、それ以来、頸椎損傷により車イスでの生活を送っていました。


上田さんは、「インドの狂虎」ことタイガー・ジェット・シンとの凶悪タッグで、アントニオ猪木を苦しめました。ジャイアント馬場大木金太郎吉村道明山本小鉄星野勘太郎、そして上田馬之助さんと亡くなり、全盛期の日本プロレスの生き残りは猪木と坂口征二くらいになってしまいましたね。
現在は、プロレス団体IGFの会長を務める猪木は、上田さんの訃報を聞いて、「同じ時代を過ごし、闘いを通じて信頼しあえた友人の旅立ちを見送るのは、大変つらい気持ちです。謹んでお悔やみを申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈りいたします」とコメントしたそうです。上田さんは71歳だったそうです。合掌。


2011年12月23日 一条真也