孤独死の防人から

一条真也です。

孤独死の防人」こと中沢卓実さんから郵便物が届きました。
開封すると、中に2冊の冊子が入っていました。
『ともにささえ合う地域づくり ふるさと常盤平』(常盤平団地自治会)、『「孤独死ゼロ作戦」の取り組み 10年間のまとめ』(常盤平団地地区社会福祉協議会)の2冊です。


孤独死の防人」から送られてきた2冊の冊子



ブログ「常盤平団地」に書いたように、千葉県の松戸市にある常盤平団地は、かつて「東洋一のマンモス団地」と呼ばれました。
全国のニュータウンに先駆けて50年前に建設され、1960年(昭和35年)4月に入居開始された団地です。4、5階建ての中層集合住宅です。
抽選倍率は、なんと20倍を超えたそうです。若い夫婦と子どもたちであふれていた夢の団地は、半世紀近くの時間を経て、「孤独死」を招きいれてしまいます。
それは、2000年秋に起きました。72歳の1人暮らしの男性の家賃の支払いが滞ったために何度も公団から催促状が発送されましたが、何の連絡もありませんでした。
異常を感じた管理人は警察に連絡し、警察官がドアを開けます。
そこにあったのは、キッチンの流しの前の板間に横たわる白骨死体でした。
かつての「東洋一の団地」に衝撃が走りました。
住民たちは、「自分たちの団地から、孤独死が出るなんて!」「隣人とのつながりとは、そんなに希薄なものだったのか」「恥ずかしい、人に知られたくない」という気持ちをそれぞれ抱いたそうです。誰もが大きなショックを受けました。みんな、孤独死とは団地などではなく、特別な状況下で起こるものであると思い込んでいたからです。
しかし、さらに独居老人の多くなった常盤平団地で、孤独死が続きます。


常盤平団地の「孤独死予防センター」で中沢さんと



そこで立ち上がったのが、中沢氏を会長とする常盤平団地自治会のメンバーでした。
孤独死ゼロ」を合言葉に、崩壊したコミュニティを復活させるという目標を立てます。
そして、団地自治会を中心に、常盤平団地地区社会福祉協議会、民生委員が一緒になって、孤独死問題に対処するためのネットワークやシステムを作りました。
みなさんの努力が実って、常盤平団地孤独死は激減しました。
今では「孤独死防止のメッカ」とも呼ばれています。


孤独死について考えるブックガイド



中沢さんは、常盤平団地自治会長さんとして有名な方です。昔は「週刊サンケイ」の記者でしたが、今は孤独死問題における我が国の第一人者です。
これまで、ブログ『ひとり誰にも看取られず』、ブログ『孤独死ゼロ作戦』ブログ『団地と孤独死』と、これまで中沢さんについて書いてきました。
2冊の冊子には、ともに「孤独死」に関する本の紹介ページがありました。
「『死は生のカガミ』の視点から生きかたを示す」という見出しで、(社)高齢問題研究会が推薦書が紹介されています。もちろん、前記の3冊の本も紹介されています。
そして、わたしの『隣人の時代』(三五館)も、以下のように紹介されていました。
「『無縁社会』などといってバラバラ現象のみを指摘されている中で、人と人との有縁社会の在り方、人と人の絆の関係について本質を衝く」
非常にありがたいコメントで、とても嬉しかったです。


孤独死講演会のようす

新春座談会「無縁社会を乗り越えて」



ブログ「孤独死講演会」に書いたように、2010年7月21日に中沢さんと一緒に「孤独死に学ぶ互助会の使命(ミッション)とは」という講演を行いました。
(社)全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の総会を記念しての講演会でしたが、200人収容の会場が満員になり、立ち見まで出る盛況ぶりでした。
あれから、早くも1年半、再び全互協の総会が明後日の18日に開催されます。
その記念に、ブログ「無縁社会を克服するために」で紹介したパネルディスカッションが行われます。画期的な内容になるのではと各方面から期待されています。
孤独死防止」から無縁社会の克服」へ・・・・・「相互扶助」を理念とする互助会の新しい社会的使命が18日に浮き彫りになることを願っています。
今日は、15時半から松柏園ホテルで講演を行います。
演題は、「天下布礼をめざして」です。


2012年1月16日 一条真也