天下布礼をめざして

一条真也です。

今日は、松柏園ホテルで講演を行いました。
テーマは「天下布礼をめざして」です。
200名近い参加者の方々が会場の「ザ・ジュエルボックス」に集まりました。


約200名の方に集まっていただきました



参加者の多くは、わが社が日頃から親しくさせていただいている方々です。
そのような方々の前で話をさせていただくのは初めてですが、続いて開催される佐久間進会長の喜寿祝いおよび北九州の賀詞交歓会に先立って、特別に企画されたのです。
わたしは約1時間、「天下布礼」について語りました。
天下布礼」とは、冠婚葬祭業の経営、本やブログの執筆、講演、大学の教壇に立つことなど、わたしの一連の行動を貫くキーワードです。
それは、「人間尊重」思想を広く世に広めることです。
わたしは、冠婚葬祭ほど価値のあるものはないと心の底から思っています。なぜなら、何よりもまず、万人にとっての大問題である「結婚」と「死」に関わる仕事だからです。
結婚は最高の平和である」や「死は最大の平等である」というお話もしました。


天下布礼をめざして」について講演しました



それから、『葬式は必要!』(双葉新書)に代表される儀礼必要論も話しました。
約7万年前にネアンデルタール人が死者を埋葬した瞬間、サルがヒトになったともいわれ、葬儀は人間の存在基盤とも呼ぶべき文化です。
孟子は「人生の最大事は親の葬礼なり」と述べ、共産主義の生みの親であるマルクスにもっとも影響を与えた哲学者のヘーゲルも「親の埋葬倫理」を唱えています。
あらゆる宗教や哲学が肉親を弔うことの重要性を説き、古今東西、親が死んで、葬式を出そうと思えば出せるのに金がもったいないからといって出さなかった民族も国家もまったく存在しません。そんな前代未聞の存在に日本人がなってしまったら、これはもう世界の恥どころではなく、人類史上の恥です。
薬物禁止キャンペーンのコピーである「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」にならえば「冠婚葬祭やめますか、そして人類やめますか」というところです。
わたしは自分の職業や立場に関係なく、本気でそう思います。


平成心学塾の塾長として話しました



また、『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)をもとに血縁の重要性を、『隣人の時代』(三五館)をもとに地縁の重要性を説き、タテ糸とヨコ糸から「人間の幸福」が実現することを訴えました。それから、マスコミ報道などで、みなさんが非常に興味を持たれている「隣人館」についても説明しました。


グリーフケアについても話しました



さらには、『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)や『のこされた あなたへ』(佼成出版社)の内容に触れながら、月あかりの会あるいはムーンギャラリーといった、わが社のグリーフケアにおける取り組みについても紹介しました。
自分で言うのも何ですが、非常に盛りだくさんな内容になったと思います。


熱心に聴講される方々



もともと「天下布礼」とは、わが社の創業時に掲げていたスローガンです。
2008年、わたしが上海において再び社員の前で打ち出しました。
わが社の創立40周年記念として、全国の社員を3班に分けて総勢600名の上海旅行を行いました。いまどき、こんな大人数の社員旅行は珍しいそうです。
社員旅行どころか、歓送迎会や忘年会なども日本の会社から減っています。
どうも、会社というより社会全体が「人間嫌い」になっているような感があります。
急速なIT化が社会の「人間嫌い」化に拍車をかけているのかもしれません。
でも、わが社は冠婚葬祭を業とする会社です。
まさに人間を相手にするのが仕事であり、わたしたちが人間嫌いになることは絶対に許されません。それもあって、あえて大人数で中国の上海に旅行したのです。



言うまでもなく、中国は、儒教の祖である孔子の国です。
2500年前に孔子が説いた「礼」の精神こそ、「人間尊重」そのものだと思います。
上海での創立記念式典で、わたしは社員の前で「天下布礼」の旗を掲げました。
かつて織田信長は、武力によって天下を制圧するという「天下布武」の旗を掲げました。
しかし、わたしたちは「天下布礼」です。
武力で天下を制圧するのではなく、「人間尊重」思想で世の中を良くしたいのです。


鎌田東二先生にも聴いていただきました



わが社の小ミッションは「冠婚葬祭を通じて良い人間関係づくりのお手伝いをする」。
冠婚葬祭ほど、人間関係を良くするものはありません。
そして、わたしたちの理想はさらに大ミッションである「人間尊重」へと向かいます。
太陽の光が万物に降り注ぐごとく、この世のすべての人々を尊重すること、それが「礼」の究極の精神です。だから、わたしは「礼」の精神が誕生した中国の地で「天下布礼」という言葉を持ち出したのです。上海での記念祝賀会では、「摩天楼そびゆる魔都の宴にて 天下布礼の旗を掲げん」という短歌を披露しました。  


サンレーの使命についても説明しました



天下、つまり社会に広く人間尊重思想を広めることがサンレーの使命です。
わたしたちは、この世で最も大切な仕事をさせていただいていると思っています。
これからも冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをしていきたいものです。
また、わたしが大学の教壇に立つのも、本を書くのも、さらにはこのブログを書いているのも、すべては「天下布礼」の活動の一環であると考えています。
1500人近い全社員に直筆のバースデーカードとプレゼントを贈るのは「天下布礼」の原点です。みなさん、とても喜んでくれますし、礼状をいただくこともしばしばです。
誕生日を祝うことは、「あなたがこの世に生まれたことは正しいですよ」ということ。
いわば、その人の存在を全面的に肯定することです。まさに、人間尊重そのものです。
その社員のみなさんとともに、世の人々の良い人間関係づくりのお手伝いをさせていただく。「人間尊重」の輪が大きく広がってゆく。
天下布礼」の旗を持って、さらにこの道を進んでゆきたいと思っています。


2012年1月16日 一条真也