就労支援記者会見

一条真也です。

沖縄と違って、北九州は雪が降って寒いです。
今日は、13時から北九州市役所の記者会見室で記者会見がありました。
国や市の担当者、大学関係者、そして企業関係者が臨席し、わたしも参加しました。
「若年稼動被保護者に対する伴走型就労支援事業」についての記者会見です。

記者会見のようす



隣人愛の実践者」ことNPO法人北九州ホームレス支援機構の奥田知志理事長からの支援要請を受けて、わが社は「就労自立」と「社会的自立」という2つの自立を目指すためのお手伝いをさせていただくことになったのです。
キーワードは、「インターンシップ」。これは「就業体験」を意味する言葉です。
この事業は、厚生労働省の平成23年度 社会福祉推進事業に認定されています。
この種の事業を行政ではなく、NPO法人に任せるのはきわめて異例だそうです。
いわゆるパイロット事業で、今回の北九州市が全国初の試みです。
北九州で成功すれば、全国の自治体でも実施していくそうです。


記者会見で話す奥田理事長



その就労支援の受け皿として、わが社が名乗りを上げたわけです。
ここまでの支援協力に至るまでの経緯を説明したいと思います。
まず、わたしが紫雲閣の現場で葬儀も行えず、見送る方が1人もいない「孤独葬」の増加傾向に心を痛めると同時に、危機感を感じました。
そして、平成22年7月、ホームレス支援機構と恊働で、人間の尊厳を保てるような葬儀のお手伝いを行うホームレス支援策をスタートしました。
同時に、ホームレス撲滅のための支援金の寄付や募金箱の設置等を始めました。
このあたりは、ブログ「ホームレス支援」に詳しく書きました。平成23年秋、奥田理事長よりホームレス支援機構が事業の一環として厚生労働省から受託する、今回の若年稼働被保護者の就労支援事業の支援と協力の依頼を受けました。それから、わたしが若年稼働被保護者に対する伴走型就労支援事業検討委員会の委員に就任しました。
そして、このたび、わが社に4名のインターンシップの受け入れを決定したわけです。


わたしも、記者会見で発言しました



記者会見には、NHKや新聞各社の記者が集まりました。
わたしは、「なぜ、サンレーが支援するのか」について以下のように説明しました。
「弊社は、一昨年の平成22年よりホームレス支援機構様の事業への支援をさせていただいており、その関係で今回の支援要請を受けました。確かに就労可能な若年層の生活保護受給というのは大きな社会的問題です。当初は、当社の場合はそのほとんどの社員が接客サービスの最前線で働いており、受け入れることができる部門があるのかという点では、確かに躊躇する気持ちもありました。しかし、企業の社会的責任、社会的使命と思って、受けさせていただくことにしました」
そして最後に、「奥田理事長の熱意に打たれたという部分も大きかったです」と付け加えました。だいたい、「フリーター」とか「ニート」といった負のラベリングが良くないと思います。「働かない」のではなく、「働けない」若者たちが多数存在するという現実を知るべきです。そして、社会的存在である企業はもっとその受け入れに協力すべきです。


就労スキルやモチベーションの向上を図ります



インターンシップ(就業体験)の受入方針は、基本的には依頼の主旨である「就労自立」と「社会的自立」という2つの自立を目指すためのお手伝いをさせていただくということになります。しかし、わたしとしては、サンレーグループの営む接客業を通じて、社員やお客様とのふれあいの中で、社会や人とのつながりを持つ練習をしていただければと思っています。つまり、社会に出る「ならし」の場を提供するというイメージで今回のインターンシップを進めていきたいと思っています。
現在、すでに4名の方の受け入れさせていただいています。
そのうち2名がホテルの清掃部門、2名が葬祭部門での備品等の管理業務や施行の補助業務に携わっていただいています。
内容は、実際の業務経験に加え、朝礼やミーティング等により、就労スキルやモチベーションの向上を図ることができればと考えています。さすがに、いきなり接客サービスの最前線というわけにはいきませんが、いずれの部門も十分にお客様との接触の可能性はある仕事ですので、毎日緊張感をもって取り組んでいただいています。
ここから「血縁」でも「地縁」でもない「職縁」というものが生まれます。
そこから、社会への入口に通じていけば素晴らしいと思います。


記者からの質問を聞く


また、わが社と同じく、薬局チェーンのサンキュードラッグさん、そして生活協同組合連合会・グリーンコープ連合さんが今回の就労受け皿になっています。今日は、グリーンコープ連合の田中裕子会長も来られており、名刺交換させていただきました。
ブログ「生協と互助会」に書いたように、生活協同組合と冠婚葬祭互助会は「ハートフル・ソサエティ」実現のための相互補完的な存在であると思います。
ですから、今回のような社会福祉事業のサポートに生協であるグリーンコープ連合さんと互助会であるサンレーが真っ先に名乗りを上げたことは必然であると感じました。
わが社は、創業以来「人間尊重」すなわち「冠婚葬祭を通じて良い人間関係づくりのお手伝いをする」をミッションとして事業を行っていますが、今回の就労支援事業はまさに「人間尊重」そのものであり、「良い人間関係づくりのお手伝い」につながることなので、心からお手伝いさせていただきたいと思っています。
今回の基本理念の中に、地縁、血縁、社縁につぐ「第4の縁」による連帯という言葉がありました。そして、奥田理事長は「赤の他人の支援が必要」ということを強調していました。ここでいう「赤の他人」とは「隣人」の同義語に他なりません。
また、ブログ「新春座談会『無縁社会』」で紹介したパネルディスカッションでは、奥田理事長もわたしもともにパネリストとして参加しました。
そして、「無縁社会を乗り越えるために」活発な議論を交わしたばかりです。


企業も社会利益を追求する時代へ・・・・・



今回の就労支援を受けさせていただくことになったのも「縁」です。
この縁を大切するためにも一生懸命取り組んでいきたいと思います。
かつて北九州市は「孤独死」で全国的に有名になりました。
しかし、今度は日本一の「社会福祉先進都市」を目指すわけです。
「禍転じて福となす」をもじって、「孤独死転じて福祉をなす」というところです。
また、わたしは記者会見で「企業は利益を追求する存在であるとされています」と述べました。そして、「たしかに、企業は利益を追求しなければなりません。しかし、これからは営業利益や経常利益だけでなく、社会利益を追求する時代です。そして、社会利益を追求する企業こそが社会に必要な存在となり、発展していくことができると信じています」と発言しました。このプロジェクトに関わる全ての方とこの思いを共有できれば、必ず事態は日本を良くする「世直し」の方向へ進んでいくと確信しています。
そう、これも「天下布礼」プロジェクトの1つなのです。


北九州市役所の食堂でランチを



さて、今日は久々に北九州市役所の地下1階の食堂で昼食を取りました。
A定食(チキン南蛮定食)を選んだのですが、480円という安さに驚きました。
昔、この食堂には18歳の頃によく来ていましたが、じつに30年ぶりです。
食堂の様子が30年前とまったく変わっていないことにも驚きましたね。
あの頃を思い出して、懐かしい気分に浸ってしまいました。


2012年1月25日 一条真也