一条真也です。
今朝の「朝日新聞」には、もう1つ興味深い記事がありました。
「就活イメージ先行強まる」という記事です。
2012年度の大学生・院生の就職人気ランキングが掲載されています。
「朝日新聞」2月1日朝刊
このたび「2012年 大学生就職先人気企業ランキング」を発表したのは、就職情報会社であるダイヤモンド・ビッグアンドリードです。
記事には、「近年は大手・安定志向が強いが、就職活動の幕開けが10月から12月へ2カ月遅くなったことで、CMなどでおなじみの有名企業に人気がさらに集まった。同社は『就活はイメージ先行の傾向が強まっている』とみている」と書かれています。
調査は、昨年11月から今年1月にかけて就職活動中の大学3年生と大学院1年生に実施し、計7048人が答えたそうです。その結果は、以下の通りです。
2012年就職先人気企業ランキング
(カッコ内は2011年の順位。―は30位までのランク圏外)
■文系(男子)
1 (1) 三菱商事
2 (3) 住友商事
3 (6) 三井物産
4 (2) 三菱東京UFJ銀行
5(15) 伊藤忠商事
6 (4) 東京海上日動火災保険
7 (8) 丸紅
8 (7) 三井住友銀行
9 (5) みずほフィナンシャルグループ
10(10) 三菱UFJ信託銀行
■文系(女子)
1 (2) 東京海上日動火災保険
2 (1) 三菱東京UFJ銀行
3(14) JTBグループ
4 (3) みずほフィナンシャルグループ
5(16) 三井住友銀行
6 (7) 住友商事
7 (8) 明治グループ
8(12) オリエンタルランド
9 (9) 三菱UFJ信託銀行
10(18) 三井物産
■理系(男子)
1 (1) 東芝
2 (4) 日立製作所
3 (3) 三菱商事
4 (2) ソニー
5 (5) 住友商事
6(11) パナソニック
7 (8) NTTデータ
8 (7) 三井物産
9(18) JR東日本
10(22) 伊藤忠商事
■理系(女子)
1 (1) 明治グループ
2 (2) ロッテ
3 (4) 資生堂
4(12) 森永製菓
5 (―) 日清製粉グループ
6 (―) NTTデータ
7 (8) カゴメ
8 (9) 花王
9 (5) サントリー
10 (3) 味の素
これを見て、まず思ったのは「やっぱり東電が入っていないな」です。
昨年、10位以内だった東京電力が今年は100位圏外となりました。
福島第一原発事故以来、予想していたことではありますが。
それから思ったのは「ついにマスコミが消えたか」ということです。
以前は、新聞・テレビ・広告などのマスコミの大手企業がズラリとランキング上位に名を連ねていました。それも、昨今のIT革命で各社は存亡の危機に立たされています。
相変わらず人気が衰えないのは、商社と銀行です。
記事のタイトルの「就活イメージ先行強まる」ですが、これには異論があります。
なぜなら、これまでも学生はずっとイメージ優先で就職先を選んできたからです。
わたしは、何度か就職活動中の学生さんたちを対象に講演をしたことがあります。
学生さんたちに、どういう業界や会社をめざしているのかと聞くと、現時点で一番栄えている企業、脚光を浴びている企業が常に上位を占めていることに気づきます。もちろん、そうした傾向は今に始まったことではありません。
たとえば、昭和20年代に大学を卒業した人々の多くは、砂糖、石炭、合繊などの分野の企業を志望しました。そして有名大学を出た天下の秀才たちが入りました。
30年代に入ると、鉄鋼や造船といった重工業に人気が集まりました。
40年代には銀行や商社などが、50年代になると、それまでは低く見られていた保険や証券などの業界が、高額のボーナスなどの魅力もあって、名門大学出の秀才たちが続々と就職しました。
しかし時代の変化とともに、かつての花形産業は次々に勢いを失っていきました。
当時、最難関の会社に意気揚々と入った人々は、その後サラリーマンとしてあまり充実感が味わえなかった人も多かったように思います。
本来、大学生というものは「未来」が最大の資産です。
よって、誰よりも未来を読むべき存在であるはずです。しかし、常に実態より遅れた世間の、マスコミにつくられたイメージに踊らされてきました。それも、いま見えている現実が、あたかもそのままの状態で推移でもしていくように錯覚してきたのです。
しかし、少しでも物を考える人間なら、この世界に永遠に続くものなどないことがすぐわかるはずです。強大で不滅のように思われたローマ帝国でさえ滅び、栄華を極めて終わりがないように見えた唐王朝も終焉を迎え、万全の防御体制を誇った徳川幕府もいとも簡単に倒されてしまいました。
このような強大な権力でさえ衰亡するのです。
ましてや民間企業など、いつまでも巨大なままで存続し続けられる道理はありません。
学生さんたちが、しっかりの今後の社会を考えて、自分が価値を置くものを大切にできるような職種につき、自分が一番輝くことのできる企業に入られることを願っています。
2012年2月1日 一条真也拝