ハートフル・シティ講演

一条真也です。

昨日も今日も雪が降って、北九州は寒いです。
そんな中、今日はリバーウォーク北九州内にある「北九州芸術劇場」で講演しました。
テーマは、「ハートフル・シティを目指して〜日本一の“思いやり都市”をつくる〜」です。


北九州芸術劇場で講演しました



わたしの講演は、13時半からスタートしました。
雪にもかかわらず、会場には多くの方々が集まって下さいました。
本日、「北九州はもうすぐ半世紀〜私のまちの『これまで』と『これから』〜」というイベントが開催されました。「北九州ミズ21」の第12期活動発表会です。
わたしは、そこで基調講演を務めたというわけです。
北九州ミズ21とは、女性の視点を市政に反映させ、住みやすく、魅力ある、そして活力に満ちた街づくりを効果的に進めるために、意見・提案を行う会合です。
北九州市は、もうすぐ半世紀を迎えます。
北九州市は1963年に誕生しましたので、わたしと同じ年なのです。
「ハートフル」をスローガンとしている北九州市ですが、わたしが「ハートフル」という言葉の産みの親であることから基調講演の講師に選ばれたわけです。


ハートフル・シティについて話しました

最初は、孔子ドラッカーから



まず最初に、孔子ドラッカーの考え方を紹介しました。
そして、そこから北九州市の未来についてお話ししました。
ブログ「心の環境モデル都市」で紹介したように、今月3日、国は2010年度の「環境モデル都市」の取り組状況に対する評価結果を発表しました。
全部で13ある「環境モデル都市」を5段階評価した5指標についてスコアを算出したところ、北九州市が平均値で最も高い得点となったそうです。
北九州市は、日本一の「環境モデル都市」というわけです。かつては「公害の街」として知られ、1960年代には北九州の大気汚染は国内最悪を記録しました。
なんと「国内最悪の大気汚染」から「日本一の環境モデル都市」へ変身したのです。
これは、「禍を転じて福となす」ということに他なりません。
最悪の状況を迎えたからこそ、そこに強い危機感が芽生え、どこよりも前向きな「環境」への取り組みが可能になったのでしょう。


禍を転じて福となす!



わたしは、北九州市はもう一度、この「禍を転じて福となす」を実現すべきと考えます。
いま、全国の人々に「北九州市のイメージは?」と聞くと、必ず返ってくる言葉が2つあります。ずばり、「暴力団」と「孤独死」です。
かつての「公害」に代わるネガティブ・キーワードであると言えるでしょう。
しかし、末吉興一前市長が見事に環境モデル都市へと変身させたように、また現職の北橋健治市長が日本最大の暴力追放運動を成功させたように、残る「孤独死」の問題も必ず解決できると信じています。


隣人祭り」についてもお話ししました



現在、北九州市では「隣人愛の実践者」こと奥田知志氏が理事長を務められるNPO法人北九州ホームレス支援機構の大活躍で、日本で最もホームレスの人々や生活保護受給者の支援が盛んな街となっています。
詳しくは、ブログ「隣人の時代へ」ブログ「脱生活保護へ・・・」などをお読み下さい。
また、わが社もサポートをさせていただいている「隣人祭り」の開催は年間で500回を超え、日本で最も隣人祭りが盛んな街にもなっています。
日本一の「環境モデル都市」となった北九州市は、これから「心の環境モデル都市」をめざすべきだと思います。暴力のない街、孤独死のない街、そして思いやりにあふれた「助け合い」の街にしたいです。


「思いやりの時代」について



ブログ「北九州へ!」にも書きましたが、東日本大震災で被災された東北の方々がたくさん北九州に来られています。わたしは、被災者の方々のみならず、日本中の高齢者の方々にも北九州市に来ていただきたいです。
現在、全国には約470万人もの独居老人が分散しています。
それらの方々の中には、孤独死をする危険性が高い方も多いです。
そういった方々に北九州に参集していただき、余生を過ごしていただきたいのです。
高齢化先進都市である北九州市は、高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきだと思います。



そこで、大事なポイントは「孤独死をしない」ということです。
そのための受け皿として、わが社は「隣人館」をどんどん作っていきます。
その他にも、隣人祭りをはじめとした多種多様なノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。そうなれば、「北九州にさえ行けば、仲間もできて、孤独死しなくて済む」というふうになるのではないでしょうか。
全国の独居老人には、どんどん北九州に移住していただきたいと真剣に願っています。


人は老いるほど豊かになる



もともと、わたしは北九州市を「高齢者福祉特区」にするべきだと訴えてきました。
そして「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」をイメージし、そのモデルとして高齢者複合施設である「サンレーグランドホテル」を北九州市の八幡西区に作りました。いわゆるセレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。


手話通訳の方も2人つきました



近代工業社会はひたすら「若さ」と「生」を謳歌し、讃美してきました。
しかし、高齢化社会では「老い」と「死」を直視して、前向きにとらえていかなければなりません。今こそ幸福な「老い」と「死」のデザインが求められているのだと考えています。
日本は世界でもっとも高齢化が進行している国ですが、その中でも北九州市はもっとも高齢化が進行している政令指定都市です。つまり人口100万人以上の都市でいえば、北九州市は世界一の超高齢化都市であるといえます。その多くの高齢者が生活する北九州市において「老い」が不幸だとしたらどうなるでしょうか?
北九州市は不幸な人間がもっとも多くいる世界一不幸な街になります。
しかし逆に、「老い」が幸福だとしたら、世界一幸福な街になるのです。



世界一幸福な街と世界一不幸な街。まさに、天国か地獄かです。
老い」のとらえかたひとつでこんなにも変わるのです。
それなら、わたしたちは天国を選ぶしか道はありません。
ですから、「老い」と「死」に価値を置く施設であるサンレーグランドホテル北九州市に誕生したことは多くの方々から評価されました。なぜなら、高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのものだからです。
こういった考え方そのものが、ドラッカーの「強みを生かす」という思想をベースにしていていることがおわかりいただけるかと思います。


みなさん、熱心に聴いて下さいました 



わたしは、北九州市は「老福都市」を、「助け合い都市」を、そして「隣人都市」を目指すべきだと確信します。平たく言えば、それは「社会福祉都市」ということになるかもしれません。そんな都市が日本にできるなんて素敵じゃないですか!
また、ここは非常に大事なポイントなのですが、震災の被災者の方々には地震が起こる危険性が低いことも北九州の大きな魅力の1つだと思います。
地震が起きると最も困る施設とは何でしょうか。
今でこそ原発が代表格ですが、昔は製鉄所でした。
なぜなら、製鉄所内には燃えさかる溶鉱炉があり、それが地震で倒壊したりすると大惨事になるからです。1901年に官営の製鉄所を日本に初めて建造するとき、大日本帝国は「最も地震が起きにくい場所」を徹底的に調査しました。
その結果、選ばれた場所こそ北九州の八幡だったのです。
すなわち、八幡製鉄所は災害に対する「安心」のシンボルなのです。
ぜひ、地震が怖いと思う方は安心して北九州に来られて下さい。
また、独居老人でも、どんな方でも、日本のどこかで困っておられる方、これからの人生に不安を抱いている方がおられたら、ぜひ北九州へ来ていただきたいです。
わたしたちが心より歓迎いたします。


有縁凧を掲げて、「縁」の大切さを訴えました



今日は、有縁凧も掲げて、血縁と地縁の再生を訴えました。
わが社は、「人間尊重」をミッションとして、さまざまな事業や活動に取り組んでいます。
これまで、「社会に良いことをしても儲からない」と言われていました。
しかし、これからは「社会に良いことをしないと儲からない」時代だと思います。
北九州市には、社会に良いことをしている企業がたくさんあります。
また、高齢者や被災者の方々を支える「思いやり」のある人々がたくさんいます。
北九州市は、きっと日本一の「思いやり都市」になれると思います。



泣いても笑っても、人生は1回きりです。後戻りはできません。
その人生を福岡で過す人もいれば、大阪で過す人もいれば、東京で過す人もいます。また、ロンドンやパリやニューヨークや上海で過す人もいます。
しかし、わたしたちは北九州で暮らしています。北九州で生きています。この街で生まれ、結婚し、子どもを産み、育て、それから老い、そして人生を卒業していくのです。
その人生を卒業するときに、「ああ、この街で生きることができて良かった」と言いたいものです。そのためにも、みなさんと一緒に日本一の「思いやり都市」をつくっていくことができたら、こんなに素敵なことはありません。


故郷の未来を話すことができました



以上のような話をさせていただきましたが、最後に盛大な拍手を戴きました。
じつは、今日は妻と長女も会場に来てくれていました。
わたしの講演に家族が来たのは、初めてではないでしょうか。
その他にも、会場には多くの友人や知人の顔も見えました。
わたしは、愛する故郷の未来について話すことができて感無量です。
外は雪が降っていましたが、わたしの胸は熱くなりました。わたしの話を聴いて下さったみなさん、そして関係者のみなさん、本当にありがとうございました。


講演後に北橋市長にお会いしました



リバーウォーク北九州の外に出たら、雪がやんでいました。
そして、ちょうどそこに到着した北九州市北橋健治市長とお会いしました。
北橋市長、ぜひ、ハートフル・シティを実現されて下さい!


2012年2月9日 一条真也