礼業の時代

一条真也です。

朝粥会の終了後、「平成心学塾」を開催しました。昨年の春季例大祭東日本大震災の直後で、その後の平成心学塾でもその話をしたことを思い出しました。
最初に、佐久間進会長がいつものように講話をしました。
会長は、やはり東日本大震災1周年の話題について話しました。


佐久間会長の講話



今月11日、つまり「3・11」の日、会長は午前5時に起床したそうです。
それから、ずっとテレビ各局の大震災関連の番組を観たそうです。
それはじつに午後11時まで続いたそうで、「こんなにテレビを観たのは生まれて初めて」と言っていました。ブログ「九州からの祈り」に書いた会長自身の帰泊難民としての経験からそれだけの関心が湧いたようです。
また、江戸しぐさの「子育てしぐさ」の話に触れました。
そして、「思いやりの作法」の視点からの教育論を展開しました。
最後は、新渡戸稲造の『武士道』などに言及し、現代日本人には「人に迷惑をかけない」「弱い者いじめをしない」などの『良心の掟』が必要であると述べていました。


平成心学塾で話しました



続いて、わたしが話をしました。
まずは、先月28日に授賞式が行われた「孔子文化賞」について話しました。
孔子文化賞」といえば、「ムーンサルトレター」第80信で、「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生が次のように書いて下さいました。
「Shinさん、『孔子文化賞受賞』、まことにおめでとうございます。本当に素晴らしい快挙です。心よりお慶び申し上げます。義兄弟の受賞、わがことのように嬉しく思います。
『礼』に対する『礼』を持った対応。そして、『仁義礼知信』の『五常』のど真ん中に位置する『礼』を中核に、『知』においては60冊を超える書籍を出版し、『義』においては『義』兄弟の契りを結ぶばかりではなく、『葬式は、要らない』という風潮に敢然と異議を唱えて本来の『義理』の大切さを訴え、『隣人祭り』によって現代社会の只中に『仁』と『信』を取り戻そうとしてきたShinさんの活動が、高く評価されたのですよ。
まことにおめでとうございます。ほんとうによかったです。
お父上とご家族を始め、サンレーの社員もみな大喜びだと思います」
心ある祝いの言葉を寄せて下さった鎌田先生には、心より感謝いたします。
鎌田先生の言葉のように「サンレーの社員もみな大喜び」してくれました。
今朝、わたしが松柏園ホテルの男性トイレに入ったところ、そこで作業をしていた清掃スタッフの方からも、「社長、このたびは、おめでとうございます」と声をかけられました。
その言い方が本当に心がこもっていて、とても感激しました。


受賞理由について説明しました



今日は、孔子文化賞の受賞理由についても説明しました。
わたしは、これまで著書で孔子の精神を紹介してきました。
孔子の思想そのものを紹介した本としては、『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)がありますし、『論語』の入門書としての『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)もあります。この2冊は、いずれも昨年上梓しました。
しかし、この2冊以外にも、孔子の思想が登場する著者はたくさんあります。
葬式は必要!』(双葉新書)、そして『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)、さらには『隣人の時代』(三五館)といった、いわゆる「有縁社会再生三部作」をはじめとして、わたしの本にはすべて孔子の精神が溢れているように自分では思います。


「礼」について話しました



さらに言えば、わたしのすべての活動の背景には孔子の「礼」の精神があります。
「礼」とは、わが社の事業である冠婚葬祭の根本となるものです。
それは「人間尊重」の心であり、その心を世に広めることが天下布礼ということです。
天下、つまり社会に広く人間尊重思想を広めることがサンレーの使命です。
わたしたちは、この世で最も大切な仕事をさせていただいていると思っています。
かつて織田信長は、武力によって天下を制圧するという「天下布武」の旗を掲げました。しかし、わたしたちは天下布礼です。武力で天下を制圧するのではなく、「人間尊重」思想を実践することによって世の中を良くしたいのです。


わが社の仕事は「礼業」だと述べました



これからも冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをしていきたいものです。
また、わが社が隣人祭りを開催するのも、わたしが大学で教壇に立ったり本を書いたりするのも、すべては天下布礼の一環であると考えています。
天下布礼の新たな第一歩として、わが社は「隣人館」をオープンしました。
孔子文化賞はわたし1人でなく、社員全員で受賞したと思っています。
これからも孔子文化賞の名に恥じないよう、「礼」を求めていく覚悟です。
世の中には農業、林業、漁業、工業、商業といったさまざまな産業がありますが、わが社の関わっている領域は「礼業」ではないかと思います。
「礼業」とは「人間尊重業」であり、「ホスピタリティ・インダストリー」の別名です。



また、「礼」といえば、最近のいくつかの儀式や式典についての話をしました。
ブログ「大僧正のお別れ会」で紹介したウ・ケミンダ大僧正のお別れ会の荘厳さ、ブログ「東日本大震災1周年」に書いた1周年追悼式での天皇陛下の素晴らしさ、そしてブログ「小学校の卒業式」に書いた保護者代表の謝辞の裏話についても披露しました。


最後に、「卒業式」について話しました



そして、卒業式というものは本当に深い感動を与えてくれると述べました。
それは、人間の「たましい」に関わっている営みだからだと思います。
わたしは、この世のあらゆるセレモニーとはすべて卒業式ではないかと思っています。
七五三は乳児や幼児からの卒業式であり、成人式は子どもからの卒業式。
そう、通過儀礼の「通過」とは「卒業」のことなのです。
そして結婚式も、やはり卒業式だと思います。
なぜ、昔から新婦の父親は結婚式で涙を流すのか。それは、結婚式とは卒業式であり、校長である父が家庭という学校から卒業してゆく娘を愛しく思うからです。
そして、葬儀こそは「人生の卒業式」です。最期のセレモニーを卒業式ととらえる考え方が広まり、いつか「死」が不幸でなくなる日が来ることを心から願っています。
葬儀の場面で、「今こそ別れめ いざ さらば」と堂々と言えたら素敵ですね。


2012年3月19日 一条真也