『すべてを味方 すべてが味方』

一条真也です。

『すべてを味方 すべてが味方』小林正観著(三笠書房)を読みました。
表紙カバーには「たくさんの『メリット』があなたの人生に次々起こる!」と書かれ、また、帯には「『楽しみながら幸せ』になる“得”な行きかた」と大書され、「『人間関係』『仕事』『健康』『お金』・・・・・の悩みが“ゼロ”になる!」と続いています。


すぐ実践できる「最強の幸福論」!



本書の「もくじ」は、以下のようになっています。
はじめに:これで、「すべてが味方」になっていく!
第一章:楽しみながら幸せになる「得な生き方」、教えます!
第二章:まわりに“いい人ばかり”集まってくる人間関係の得する話
第三章:競わない・比べない・争わない――「心」も「体」も元気になるコツ
第四章:親・パートナー・子ども・・・・・大切な人との絆がもっと深まる話
第五章:「お金」「運」に好かれる――気がつけば、「ツキまくっている人」になっている!



「はじめに」で、著者は次のように述べています。
「私たち日本人は、長い間、“草食動物”でした。
けれど、明治以降、欧米の生活様式が入ってきて、私たちの体は肉食型の食生活に影響を受けるようになりました。『競うこと』『比べること』『争うこと』『抜きんでること』・・・・・無理やり闘う方向に変化させられていたかもしれません。体と心にたくさん負担がかかったのでしょうか、江戸時代には少なかった病気がずいぶん増えてしまいました」
著者は、日本に古来からあったのは、目の前の人が全部「味方」という考えであったと述べます。だから日本は「和」の国だったのであり、このあたりで元にすべきであるとして、著者は述べます。
「『競わない』『比べない』『争わない』で生きる。『すべてを味方』にする。『すべてを味方』にしようと思って生きていると、いつの間にか『すべてが味方』になっています」
著者のこの言葉に、本書のメッセージは凝縮されていると言ってよいでしょう。



第一章「楽しみながら幸せになる『得な生き方』、教えます!」の冒頭で、著者は次のように述べています。
「将来こうなったらどうしよう、ああなったらどうしよう、過去に違う選択をすればよかった・・・・・・そんなふうに思いわずらう人は多いようです。
けれど、それはまったく無意味なことなのです。私たちにできるのはたったひとつ。<念を入れて生きる>ということだけです。
“念”という文字を分解すると、『今』の『心』になります。
『今』の『心』とは、今、目の前にいる人、目の前にあることを大事にする心のこと。
つまり、<念を入れて生きる>とは、『目の前にいる人を大事にし、目の前にあることを一生懸命やりなさい』ということにほかなりません。お釈迦さまも、『過去を追うな、終わってしまったことに縛られるな。まだ来てもいない未来にわずらわされるな。今というこの一瞬、今日というこの1日を大切にして生きよ』と、おっしゃっています」



釈迦といえば、著者は次のようにも述べています。
「お釈迦さまの最初の悟りといわれているものに、『縁りて起こる』すなわち“縁起の法則(理)”があります。この縁起の法則というのは、『すべての現象は、無数の原因(因)や条件(縁)が相互に関係し合って成立しているものであり、独立して存在するものではない。すべてのものはこの法則に従っている』というものです。
人間関係に置き換えると、『人は自分の人生を自分の思いでつくれると思っているがゆえに、苦しむ。人生は自分の思いでできあがっているのではなくて、自分の思い以外のまわりの人々のおかげで全部が成り立っている』とお釈迦さまは悟ったのです」
この“縁起の法則”から言えば、この世に存在するすべての人々も相互に関係し合っているのであり、「無縁社会」など妄言にすぎないことがわかります。
そう、社会というものは最初から「有縁」なのです。



著者は、「幸せ」の本質についても次のように核心を衝きます。
「幸せというのは、今、自分が置かれている日常そのものです。
何も起きないことがどれほど幸せであるか、ということに、私たちはなかなか気がつきません。毎日が、ただ淡々と平凡に過ぎていくことが、実は『幸せの本質』なのです。
幸せというのは、何か特別なことが起きることではありません。
何も起きないことが幸せの絶対的な本質です。
幸せとは、いいことが起きるとか、楽しいことが起きるのではなくて、自分にとって、いわゆる面倒なこと、大変なこと、汗をかかなくてはいけないこと、神経を使わなくてはいけないことなどが、何も起きないこと。それこそが最大の奇跡なのです」



一連の著者の本では、「感謝」こそが「幸せ」への入口であると説かれていますが、本書でも「ありがとう」という言葉の力を次のように強調しています。
「私は、超常現象、超能力を研究してきて、今いちばん面白いと感じているのが<ありがとうの不思議>というものです。とにかく、心を込めなくてもいいから『ありがとう』を言い続け、それが2万5000回を超えると突然に涙が出てきます。
泣いて泣いて、涙が出尽くした後に言う『ありがとう』は、本当に心の底から感謝を込めての「ありがとう」になります。
その心の底から湧いてくる『ありがとう』の言葉をさらにもう2万5000回続けて、合計5万回の『ありがとう』を言い続けると、突然にある現象が始まるようです」



また、第二章「まわりに“いい人ばかり”集まってくる人間関係の得する話」では、「敵がひとりもいなくなる“無敵な生き方”」として、次のように述べています。
「私たちは、『相手を“変える”ためには説得し、ディベート(討論)をし、論理的に屈服させ、自分の意見を通すことが正しい』という教育を受けてきました。
そういう方法を、『西洋的解決法』と呼ぶなら、良寛さんの方法は『東洋的解決法』にほかなりません。問題に直面したとき、そこには常に、ふたつの解決法が存在するように思います。その問題を、相手を説得したり環境や状況を変えたりと『努力』で解決する方法と、<私>の中に存在する『徳』で解決する方法と。
さらに考えてみると、『ふたつの解決法』と言いましたが、本当の解決法はひとつしかないのかもしれません。それは、『西洋的解決法』が敵をつくり、恨みや憎しみを残すからです。一方、『徳』による解決は、恨みを残すどころか、相手を味方にしてしまうという、根源的、根本的、本質的解決法と思えます」



最後に、最もわたしが考えさせられたのは第四章「親・パートナー・子ども・・・・・大切な人との絆がもっと深まる話」に出てくる言葉でした。
「不満」がたちまち「感謝」に変わる魔法として、著者は次のように述べています。
「他人だったら、手を合わせて感謝するのに、なぜ夫や妻には感謝しないのでしょうか。それは、家族という名の甘えでしょう。
原点に立ち戻って、というより、原点よりもずっと前のほうまで戻って、夫も妻も、『この人は、もともとは他人だ』ということを認識する。
そして、この他人の男性が私に対して、たくさんのことをしてくださることに感謝。他人の女性が私に対して、たくさんのことをしてくださることに感謝。
お互いを他人だと思ったら、夫婦はそんなにイガイガしません。
ケンカをしている夫婦というのは、夫のほうは経済的に食わせてやっている、妻のほうは家事をやってあげている、などと思っているのです。男性と女性は根源的に違うのだから、同じ価値観にはなりません。そういうのを目指さないほうがいい。もともとは他人だと考えると、人間関係がうまくいくと思います」



うーん、この考え方には正直、感動しました。
夫婦がお互いを「この人は、もともとは他人だ」と認識する。
それによって、感謝の気持ちが生まれてくるというのは至言です。
この発想は、すごいです。これを思いついた著者も、すごいです。考えてみれば、「そ・わ・か」といい「う・た・し」といい、著者は発想法の達人だったのかもしれません。
本書は、わずか571円で「幸せ」になるヒントがたくさん得られる名著です。


2012年4月17日 一条真也