『祝婚歌』

一条真也です。

ブログ「『母の日』と『金婚式』」に書いたように、わたしの両親が金婚式を迎えました。
結婚50周年の両親に、結婚23年目のわたしと妻はお祝いの言葉を述べました。
自宅に帰ってから、『祝婚歌谷川俊太郎編(書肆山田)を読みました。
本書は、結婚した若い人へ贈る言葉を集めた詩集です。


結婚を祝う言葉たち



1981年に刊行されて以来、本書は隠れたロングセラーとなっています。
それも、結婚した友人や後輩へのプレゼントとして人気があるようです。
わずか75ページですが、谷川俊太郎氏が選んだ国内外の祝婚歌が詰まっています。
また、今時珍しい箱つきで、装丁もしっかりしているので、そのままリボンをかければ、素敵な贈り物になります。
2100円とやや高めの価格も結婚祝いの品と考えれば手頃な値段に思えます。
こういう詩集を贈られて、「こんな使えないもの、贈りやがって!」と腹を立てる人はまずいないでしょう。必ず喜ばれます。
本書の中の詩で、わたしの心に残ったものを3つ紹介したいと思います。



「序詩」  谷川俊太郎


あなたがいる
私のかたわらに
いま
私がいる
あなたのかたわらに
  

花々にかこまれ
人々にかこまれ
星々にかこまれ


私はいる
あなたのかたわらに
いつまでも
あなたはいる
私のかたわらに





祝婚歌」 川崎洋


見えてくる
くっきりとした水平線
見えてくる
それはまだとてもぎこちない仕草だけど
あさぐろい手と
少しふるえている白い手との交叉
見えてくる
新芽のすかしの入った赤ん坊
親しい食器
だまっている時間
せっけん箱
光りのない時代だけど
たくさんのものが
今日から見え始める
今日は
その一番最初の日
初めの日





祝婚歌」 吉野弘


二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと



川崎洋の「祝婚歌」には、「せっけん箱」という単語が登場します。
ですので、この詩をブログ「結婚披露宴」で紹介したシャボン玉せっけん社長の森田隼人社長と有美夫人に捧げたいと思います。
詩といえば、三五館の星山佳須也社長がこよなく詩を愛しておられます。
三五館さんからは、『むすびびと〜こころの仕事』いう結婚をテーマにした本を出させていただきました。ぜひ、今度は「祝い」の言葉を集めた名言集を出さないかと言われています。また、「癒し」の言葉を集めた名言集も出さないかと言われています。
じつは、冠婚葬祭のお手伝いをさせていただく中で、わたしはこれまでに多くの「祝い」と「癒し」の言葉を集めてきました。
本書『祝婚歌』には、『祝魂歌』という姉妹本があります。
こちらは、死者に捧げる詩を集めた詩集です。いずれ、わたしが編むであろう『祝いの言葉』『癒しの言葉』は、自分なりの『祝婚歌』と『祝魂歌』となるかもしれません。
それにしても、言葉の力は偉大だと本書を読んで改めて思いました。


2012年5月14日 一条真也