孔子講演

一条真也です。

金沢に来ています。
早朝、小倉から新幹線のぞみ14号に乗って京都へ、そこからサンダーバード15号で金沢へ。金沢駅には、サンレー北陸の東孝則常務とマリエールオークパイン小松の伊藤充支配人が待っていました。そのまま、わたしたちは新しい紫雲閣の建設候補地を見て回りました。それから、ホテルにチェックインし、北陸大学に向かいました。


約200人の学生を相手に講演しました



15時半から未来創造学部の1年生を対象に「孔子研究」の講演を行いました。
わたしは北陸大学の客員教授ですが、多忙のため毎月の講義は今年から免除してもらっています。そのかわりに、年に数回の講演を行うことになっているのです。
久々に大学の教壇に立ち、新鮮な感覚を覚えました。
総勢200名ぐらいまでが大教室に集まりました。
思えば、「孔子文化賞」を受賞してから初めての「孔子」についての講演です。
そして受賞後では、初めての北陸大学での講演となります。


「四大聖人」について説明しました

なぜ、孔子を学ぶのか?



わたしは、パワーポイントを使って講演しました。
まず、孔子の人物紹介や世界史的位置づけから説明しました。
孔子は、紀元前551年に中国の山東省で生まれました。
ブッダとほぼ同時期で、ソクラテスよりは八十数年早い誕生でした。
孔子ブッダソクラテスにイエスを加えて、世界の「四大聖人」です。
孔子は学問に励み、政治の道を志しましたが、それなりのポストに就いたのは50歳を過ぎてからでした。試みた行政改革が失敗に終わって、「徳治主義」という自らの政治的理想を実現してくれる君主を求めて、諸国を流浪したのです。
春秋戦国時代の末期であった当時は、古代中国社会の変動期でした。
つねに「天」を意識して生きた孔子は、混乱した社会秩序を回復するために「礼」の必要性を痛感し、個人の社会的道徳としての「仁」が求められると考えました。
多くの弟子を教えた孔子は、74歳で没します。
死後、彼の言行録を弟子たちがまとめたものが『論語』です。
そして、なぜ孔子を学ぶのか、その理由を説明しました。


現代日本の「無縁社会」について語りました



それから現代日本に話題を移し、「無縁社会」の話をしました。
年間に3万2000人が無縁死し、3万人が自殺する社会に日本がなってしまった大きな原因は、血縁と地縁が弱まったことです。
そして、その結果、あらゆる人間関係が希薄化しました。
わたしたちが生きる社会において、最大のキーワードは「人間関係」だと思います。
社会とは、つまるところ人間の集まりです。
そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。
そもそも「人間」という字が、人は一人では生きてゆけない存在だということを示しています。人と人との間にあるから「人間」なのです。
だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。  
ブログ「マイケル・サンデル白熱教室」に書いた特別講義の影響で、今日は学生たちに何度も質問を投げかけました。すると、みんな、しっかり答えてくれました。




わたしは、人類が生んだあらゆる人物の中で孔子をもっとも尊敬しています。
孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」です。
孔子は「仁」「義」「礼」「智」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者でした。彼の言行録である『論語』は千数百年にわたって、わたしたちの先祖に読みつがれてきました。意識するしないにかかわらず、これほど日本人の心に大きな影響を与えてきた書物は存在しません。特に江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、必読文献として教養の中心となりました。
そうして儒学は、武士階級のみならず、庶民の間にも普及したのです。



そして江戸時代の日本において、『論語』で孔子が述べた思想をエンターテインメントとして見事に表現した小説が誕生しました。
滝沢馬琴が書いた『南総里見八犬伝』です。江戸の大ベストセラーになりました。
その中に登場する八犬士が持っていた玉には、それぞれ「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字が浮かび上がりました。
この8つの文字こそ、孔子儒教思想のエッセンスとしてまとめたコンセプト群であり、わたしたち日本人が最も大切にした「人の道」のキーワードでした。


サンダーバード事件で「義」を語りました

「礼」とは「人間尊重」であると説きました



今日は、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」についての話をしました。
「義」の項目では、ブログ「サンダーバード」に書いた忌まわしい事件のことを話しました。今日は実際にサンダーバードに乗って金沢に来たので、話にも熱が入りました。
「礼」の項目では、孔子は高貴な人にだけでなく、障害者や高齢者などをはじめ、あらゆる人に礼を尽くしたことを述べました。
そして、「礼」とは「人間尊重」であると訴えました。


「信」の大切さを訴えました

「孝」についても熱く語りました



教室のクーラーが入っておらず、室内は30度以上あり、文字通り「熱気ムンムン」となりました。それでも、みんな、私語もせずに熱心に話を聴いてくれました。
学生たちは大学2年生の長女より1学年下なので、ずいぶん若く感じました。
今日の講演が、彼らがこれから生きるうえで何かのヒントになれば嬉しいです。
講演の最後には、みんなが盛大な拍手をしてくれました。
久しぶりに教壇に立ちましたが、いいものですね。
ブログもいいけど、やっぱりライヴは最高です。
どうか、孔子からのメッセージが彼らの人生を豊かにしてくれますように!


2012年6月13日 一条真也