私立大学協会講演会

一条真也です。

金沢に来ています。
早朝、小倉から新幹線のぞみに乗り、京都へ。
そこからサンダーバードに乗り継いで金沢まで。
今日は、16時から「石川県私立大学協会」の総会記念講演で講師を務めたのです。


               まずは、「知の巨人」ドラッカーを語りました


会場は、わたしが客員教授をしている北陸大学の講義室でした。
北陸大学はもちろん、教育先進県として知られる石川県の私立大学の理事長、学長、学部長、教授の方々を前にしての講演ということで、わたしも緊張しました。
テーマは、「孔子ドラッカー」でした。
拙著『孔子とドラッカー』(三五館)の内容に沿って、お話しました。
最初に、「マネジメント」の話からスタートしました。
「マネジメント」という考え方は、ピーター・ドラッカーが発明したものとされています。
マネジメントの発明者としてのドラッカーは、経済学者ヨゼフ・シュムペーターの流れを受けて、「イノベーション」の重要性を説いたほか、「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」などのコンセプトを次々に世に送り出した、世界一の「経営通」です。
では、彼が発明したマネジメントとは何か。
ドラッカーによれば、まずマネジメントとは、人に関わるものです。
その機能は、人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることです。これが組織の目的なのです。


                  孔子の思想についても語りました


マネジメントとは一般に誤解されているような単なる管理手法などではなく、徹底的に人間に関わってゆく人間臭い営みなのです。
にもかかわらず、わが国のビジネス・シーンには、ナレッジ・マネジメントからデータ・マネジメント、はてはミッション・マネジメントまで、ありとあらゆるマネジメント手法がこれまで百花繚乱のごとく登場してきました。
その多くは、ハーヴァード・ビジネス・スクールに代表されるアメリカ発のグローバルな手法です。もちろん、そういった手法には一定の効果はあるのですが、日本の組織では、いわゆるハーヴァード・システムやシステム・アナリシス式の人間管理は、なかなか根付かないのもまた事実です。
情緒的部分が多分に残っているために、露骨に「おまえを管理しているぞ」ということを技術化されれば、される方には大きな抵抗があります。
日本では、まだまだ「人生意気に感ずるビジネスマン」が多いのです。
仕事と同時に「あの人の下で仕事をしてみたい」と思うビジネスマンが多く存在します。そして、そう思わせるのは、やはり経営者や上司の人徳であり、人望であり、人間的魅力です。会社にしろ、学校にしろ、病院にしろ、NPOにしろ、すべての組織とは、結局、人間の集まりに他なりません。人を動かすことが、経営の本質なのです。
つまり、「経営通」になるためには、大いなる「人間通」にならなければなりません。


              多くの大学関係者が集まって下さいました


今から約2500年前、中国に人類史上最大の人間通が生まれました。
言わずと知れた孔子です。
ドラッカーが数多くの経営コンセプトを生んだように、孔子は「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者でした。
彼の言行録である『論語』は東洋における最大のロングセラーとして多くの人々に愛読されました。特に西洋最大のロングセラー『聖書』を欧米のリーダーたちが心の支えとしてきたように、日本をはじめとする東アジア諸国の指導者たちは『論語』を座右の書として繰り返し読み、現実上のさまざまな問題に対処してきました。
わたしは、ドラッカーを最高の経営通、孔子を最大の人間通としてとらえ、両者の思想に大きな共通点を発見しました。
この発見をもとにして、経営の源である人間の心を動かすための「ハートフル・マネジメント」について語りました。
「人の心はお金で買える」と言った人物がいましたが、もちろん、人の心はお金で買えません。人の心を動かすことができるのは、人の心だけです。そんなことをお話しました。
敬愛する孔子ドラッカーの思想について話すことができ、大きな喜びでした。


             北陸大学フットボールクラブハウスでの懇親会


講演の終了後は、北陸大学のフットボールパーククラブハウスで懇親会が開かれ、わたしも参加させていただきました。
2面のサッカー場を一望できるクラブハウスは壮観です。そこで、おいしいお料理やお酒をいただきました。
私立大学のトップの方々とさまざまな意見を交換することができました。
ちょうど、わたしに話しかけてこられた方が、星陵大学の学長さんでした。
星陵といえば、昨日、星陵高校のOBであるワールドカップ日本代表の本田圭祐選手が母校を訪問し、大変な話題になっていました。
本田選手の奥さんが金沢出身とのことで、今日も金沢に滞在しているようです。
星陵高校はヤンキース松井秀喜選手も輩出したスポーツの名門校ですが、北陸大学にも卒業生が多数入学しているそうです。


                   北陸大学の大屋敷学長と


そうするうちに、100人以上いる北陸大学サッカー部員による練習がスタートしました。
ゼッケン6番をつけたわたしの教え子がシュートを決めまくっていました。
彼は高校時代から大活躍し、1年生ながら、すでにレギュラーなのだそうです。
フィールドを走り回る若者たちの姿をまぶしく感じました。美しく感じました。
ぜひ、彼らには何事にもベストを尽くし、サッカーにも学業にも(笑)頑張ってほしいです。
今日は、まことに有意義な一日となりました。
関係者のみなさん、本当にありがとうございました。


                  がんばれ!北陸大サッカー部


                    ハートフル・マネジメント


2010年7月6日 一条真也