業務提携

一条真也です。

今日は、(株)はせがわの長谷川社長が、わが社を訪ねて来られました。
ブログ「日本人の『こころ』のために」で紹介したように、大学の先輩でもあります。
はせがわさんは仏壇製造・販売の最大手企業ですが、長谷川社長と一緒に甲斐専務、柴田部長も来られました。


               はせがわ社長と契約書を交換しました


今日は、はせがわさんとわが社の業務提携の締結日だったのです。
もともと両者はアライアンス契約をしていましたが、このたび、さらに結びつきを強める契約をさせていただきました。
お互いに契約書を交換し、固い握手を交わしました。
思いは一つ、日本人の「こころ」のために、です。



長谷川社長とは、いろいろなお話をさせていただきました。
ピーター・ドラッカーの愛読者ということで、サービス労働者と知識労働者に対するドラッカーの考え方について意見を活発に交換しました。
もちろん、仏壇についての意見も交換させていただきました。
仏壇は家の中の寺院であり、抽象的で難解だった仏教の「見える化」を成功させました。仏壇の中には仏像が安置されています。仏像の横には、儒教をルーツとする先祖の位牌があり、仏壇そのものが最も活躍するのは神道をルーツとするお盆です。
わたしは、神道・仏教・儒教の三つの宗教を貫く共通項こそ「先祖崇拝」ではないかと思っています。かの聖徳太子も「先祖崇拝」という共通項があったからこそ、三つの宗教を平和的に共存させることができたのかもしれません。仏壇という不思議な函は、神道にも仏教にも儒教にもアクセスしているマルチ宗教メディアなのです。



また、仏壇はマルチ・メディテーション・ボックスでもあります。
それは何でも取り込んでしまう函であり、そこには仏像や位牌はもちろん、経典、蝋燭、線香、花、茶など、それぞれ単独でも大いなる「癒し」のパワーを発揮するアイテムが所狭しと並ぶ。仏壇の前に座って手をあわせ、目を閉じれば、これ以上にリラックスできる時間はありません。
そして、仏壇はタイムマシンでもあります。はるか昔の先祖に思いを馳せ、最近亡くなった祖父母や両親を思い出し、未来の子孫のことを考える。それはニュートンデカルト的な時空を歪め、過去にも未来にも行き放題のタイムマシンと化すのです。



さらに、仏壇は最高の教材でもあります。
仏壇の前で親が手をあわせ先祖供養をする。
毎日その姿を子どもに見せることほど、教育的効果のある行為が存在するでしょうか。
仏壇の前で正座する両親を見て育った子は必ずや「感謝の心」という人生で最大の宝物を手に入れるはずです。
感謝することが身につけば幸福になれる。これは拙著『法則の法則]』(三五館)で紹介した「幸福の法則」です。



仏壇のはじまりは、日本書紀第二十九巻に「白鳳十四年(西暦六八六)に天武天皇が諸国の家ごとに仏舎をつくり、仏像、経巻を置けという勅令を出された」といった意味のことが書かれています。
これは諸国の家ごとに仏様をまつる建物をつくれということであり、当時の貴族は争って持仏堂をつくった。この持仏堂が仏壇の原型といわれ今日の仏壇へと発展していったのです。最古の仏壇は法隆寺の「玉虫厨子」といわれています。
有力者の間に仏堂を持つことが広まるのは鎌倉時代ですが、仏壇が一般民衆に普及したのは江戸時代。
仏壇が普及する以前は、一般民衆は家の中に、さまざまな形で氏神や祖先をまつる祭壇を持っていましたが、室町時代に「書院造り」という住宅形式ができ、それが床の間に変化したわけです。
この床の間が、遠い先祖をまつる神棚と、近い先祖をまつる仏壇になったのです。
床の間が部屋の畳より一段上になっていますが、これは仏様を床の間にまつっていたからで、今日、炉をおきますがこれも、仏画や三具足(花、火、香)をまつっていた名残といわれています。
床の間に掛軸や花器、お香異なる宗教を平和的に融合させて、最高にリラックスできて、タイムマシンにもなって、子どもが幸せな人生を歩む教育までできてしまう仏壇。
こんなすごいものを作った日本人というのは、本当にすごいですね!



わたしは、9月14日に新刊『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)を刊行します。
「先祖」がテーマの本ですから、もちろん仏壇の話もたくさん登場します。
はせがわさんのホームページも大いに参照させていただきました。
この本が多くの方々に読まれることによって、「血縁」の大切さを少しでも思い起こしてくれれば嬉しいです。
いま、幼児置き去り死事件や超高齢者の白骨発見など、痛ましいニュースが相次いでいます。日本人の血縁が崩壊し、「無縁社会」が到来したとされる今こそ、先祖と暮らすライフスタイル、すなわち仏壇のある暮らし、が求められます。
エコカー減税も終了するそうですから、今度は仏壇減税を検討してほしいと思います。
今の日本人に必要なのはクルマよりも仏壇ではないでしょうか。いや、本当に。


                  最後は固い握手を交わしました


2010年8月30日 一条真也