飢餓のない世界

一条真也です。

国連WFP協会から年末のグリーティングカードが届きました。
国連WFP協会とは、飢餓と貧困の撲滅を使命とする団体です。
赤いカップを持ってニッコリ微笑むアフリカの子どもたちの写真が使われています。
一緒に、2011年度の卓上カレンダーも送られてきました。


                  赤いカップは「いのち」の灯


12月になると、わたしには必ず読み返す童話があります。
童話の王様・アンデルセンの「マッチ売りの少女」です。
拙著『涙は世界で一番小さな海』(三五館)にも書きましたが、「マッチ売りの少女」という有名な童話には、あるメッセージが込められています。
それは、「マッチはいかがですか? マッチを買ってください!」と、幼い少女が必死で懇願していたとき、通りかかった大人はマッチを買ってあげるべきだったということ。
少女の「マッチを買ってください」とは「わたしの命を助けてください」という意味でした。
ここから、わたしは「義を見てせざるは勇なきなり」という言葉を思い浮かべました。
これは『論語』に出てくる儒教の教えです。
孔子は、「勇」を「正しいことをすること」の意味で使っています。



いま、約64億の人口を養うための食料が世界には十分にあるにもかかわらず、依然として飢えや栄養不良に苦しんでいる8億5400万人以上の人々がいます。
干ばつ、エイズマラリア、この三重苦にあえぐアジア・アフリカ地域では、5秒に1人の割合で5歳以下の子どもが亡くなっています。その原因は圧倒的に栄養不良だそうです。
そして、この子どもたち1人に対して20円あれば、彼らは1日生き長らえることができるそうです。つまり、わずかコーヒー1杯のお金で、10人以上の子どもたちを1日生き長らえさせることができるのです。この事実を、わたしは丹羽宇一郎氏(現・中国大使)の講演会で知りました。丹羽氏は国連WFP協会の会長さんでした。当時の丹羽氏は伊藤忠商事の会長でもありましたが、わたしが伊藤忠商事に招かれ講演させていただいたご縁で丹羽氏の講演会を聞かせていただいたのです。
そこで、マッチ売りの少女のように「わたしの命を助けてください」という心の叫びを発している子どもたちが世界にはたくさんいるという現実を知り、大変なショックを受けました。
わたしは、いてもたってもいられなくなり、社員にも相談しました。
そして、飢餓と貧困の撲滅を使命とする国連WFP協会に加盟させていただきました。
正式名称は「特定非営利活動法人 国際連合世界食糧計画WFP協会」ですが、わが社は評議員メンバーとして認めていただき、現在、世界の子どもたちの命を救うお手伝いをさせていただいています。



グリーティングカードには、次のように書かれていました。
「平素よりWFP国連世界食糧計画に多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
世界の飢餓人口は10億人から9億2500万人に減少しましたが、
依然として受け入れ難いほどの高水準に留まっています。
飢餓に苦しむ人々が希望と尊厳をもって自立への道を歩むことができますよう、
2011年も更なるご支援を心よりお願い申し上げます。
皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます」
そして、WFP国連世界食糧計画日本事務所代表のモハメッド・サレヒーン氏、特定非営利活動法人 国連WFP協会会長の安藤宏基氏の名前が連名で記されていました。



今年飢えている人が、世界で7500万人減ったのですね!
しかし、まだ9億2500万人も飢えているのですね!
この数字がゼロになる日をめざして、わたしたちは歩み続けなければなりません。
アフリカの子たちが持っている赤いカップが、マッチの炎に見えてきます。
そう、かけがえのない彼らの「いのち」の灯に見えてきます。


             「幸福」と「死」を考える、大人の童話の読み方


2010年12月11日 一条真也