論語三昧

一条真也です。

今日は、次女が通う小学校の父親参観日でした。
ブログ「父親参観日」に書いたように、昨年は参加しました。
でも、今年はわたしが足を骨折しているので行けませんでした。小学校最後、つまり、わたしの人生においても「最後の父親参観日」だったので、大変残念でした。


                今日は『論語』ばかり読んでいます


ブログ「サンデー・ガーデン」を読むと、昨年は参観日から帰った後、ランタナやエンゼル・トランペットやチェリーセージやメドゥセージ、それからアマリリスが咲く自宅の庭でハリーと遊んだことを思い出します。そのハリーも、今はもういません。
長女も大学生になって、この家を出ていきました。
この1年の間に、わたしの周囲の環境がずいぶん変化したことを痛感します。
参観日には、わたしの代理で妻に行ってもらいました。
留守番のわたしは、書斎で『論語』をずっと読んでいました。
今秋刊行予定の著書『世界一わかりやすい「論語」の授業』(仮題、PHP文庫)で取り上げる『論語』の言葉を選ぶためです。また、7月に新装版が出る『孔子とドラッカー』(三五館)の一部を改稿するつもりですので、その関連部分のチェックもしました。



書斎にこもって『論語』を読み返していると、今のわたしのためにあるようなメッセージが目に飛び込んできます。たとえば、「子路」篇にある次の言葉など。
「速やかなるを欲するなかれ、小利を見るなかれ。速やかならんと欲すれば、則ち達せず。小利見れば、則ち大事成らず」
これは、「あせってはならない。そして、目先の小利に惑わされてはならない。あせると成功できないし、小利に惑わされると大きな仕事は成し遂げられない」という意味です。
まさに、骨折で動けない状況にあるわたしのための言葉だと思いました。
東北の被災地に向かう直前に骨折したため、自分としても非常に心残りでした。
鎌田東二先生などが被災地を回り、また福島で大規模な祈願祭を計画されていると知り、何もできない身としては強い焦りがありました。
また今は出張に行けないため、東京での業界の会議をパスし、伊藤忠商事や出版各社との打ち合わせなども先延ばしになっています。
仕事の面においても、焦りがまったくないといえばウソになります。
でも、『論語』のこの言葉を何度も口に出していたら、落ち着いた気分になりました。
たしかに、あせったり、目先のことに惑わされてもロクなことはありません。
しっかりと足を治してから、もう一度やり残したことをやればいいのです。



また、ブログ「死んだふりをする人」で書いたあの方へ贈りたい言葉も見つけました。
「雍也」篇に出てくる次の言葉がそうです。
「仁者は己れ立たんと欲して人を立て、己れ達せんと欲して人を達す」
これは、「思いやりとは、自分のためではなく人々のためにある。だから本当に思いやりのある人は、自分がやりたいと思っても他人にさせてやり、自分が手にしたい成果を他人に譲ってやる。それで人々が幸せになれるのならば、誰の手柄になろうと関係ないではないか。そう思えるのが思いやりのある人であり、真のリーダーである」といったような意味です。まさに、あの方にピッタリの言葉ではありませんか!
今朝の新聞の報道によれば、菅首相は夏退陣の意向を示したそうです。
リーダーがウソをついて前任者から「ペテン師」と呼ばれるなど言語道断ですが、本当に被災地の復興を心から思う気持ちがあるならば、自分よりももっと適任者に委ねるという判断をすべきです。「復興には責任がある」などと言っても、自分が担当して復興のスピードが遅れれば、一番困るのは被災者なのです。


                『論語』関連本もまとめて読みました


それにしても、『論語』は不思議な書物です。
もう48回も読み返して来ているのに、今日は今日でまた新しい発見がありました。
読むたびに発見があるのは、読者の環境や心境によって言葉の受け取り方が変わるせいだと思います。つまり、『論語』は読者の心を映し出す鏡のような書物なのです。
ですから、『論語』に登場する言葉には多様な解釈が存在します。
今日は、そんな『論語』についての解釈本も、いろいろと読み比べてみました。
父親参観に行けなかった今日は、まさに「論語三昧」です!
これまで、このブログでも多くの『論語』についての本を紹介してきました。
以下にまとめて紹介しますので、よろしければ、あなたも「論語三昧」しませんか?



論語金谷治訳註(岩波文庫
孔子伝白川静著(中公文庫)
論語力』于丹著、孔健監訳(講談社
修己知人の書「論語」に学ぶ』伊與田覺著(致知出版社
論語に学ぶ安岡正篤著(PHP文庫)
論語講義』全7巻・渋沢栄一著(講談社学術文庫
論語物語下村湖人著(講談社学術文庫
「論語」の話吉川幸次郎著(ちくま学芸文庫
論語の智恵 一日一話童門冬二著(PHP)
論語に帰ろう守屋淳著(平凡社新書
「論語」でまともな親になる長山靖生著(光文社新書
論語一語長尾剛著(かんき出版)
「論語」に学ぶ人間学』境野勝吾著(致知出版社
何のために論語を読むのか孔健著(致知出版社
論語活学渡部昇一著(致知出版社
脳は論語が好きだった』篠浦伸禎著(致知出版社
論語力齋藤孝著(ちくま新書



                    「孔子研究」の授業風景


また、わたしは大学で「孔子研究」の授業を担当しています。
学生さんたちの中には、多くの中国人留学生の人たちもいます。
中国の若者たちに『論語』についての講義をさせていただくことは、孔子に対する最大の恩返しだと思っています。学生さんたちに「礼」の精神を説くことは、わたし自身、大変良い勉強となっています。何よりも、尊敬する孔子の教えを若い方々に伝えられる幸せに心から感謝しています。
日々、孔子の生き方、『論語』の言葉からは多くの学びを得ています。
以下のブログ記事に、授業の様子や孔子への思いを書いています。

孔子からのメッセージ」(2010年6月22日)

孔子との対話」(2010年9月24日)

礼とは何か」(2010年11月8日)

孔子の言葉」(2010年12月1日)

孔子とその時代」(2011年5月11日)



                  孔子と心の対話がしたいです


足が治って東京に行けるようになったら、ぜひ訪れたい場所があります。
巨大孔子像のある湯島聖堂です。そこで、孔子と心の対話がしたいと思います。
6月22日には、北陸大学で「孔子研究」の授業が予定されています。
次回は、「孔子の思想」について教えることになっています。
なんとか、その日までに足が治るとよいのですが・・・・・。
でも、孔子も言うように、あせりは禁物ですね。



さて、孔子と並ぶ偉大な聖人といえば、なんといってもブッダですね。
わたしは、いま、『ブッダの考え方』(中経の文庫)という本も並行して書いています。
ここ数日、ブログ「映画『ブッダ』の感想」へのアクセスが非常に多いようです。
検索サイトでも上位にランクされ、「映画 ブッダ 感想」とか「ブッダ 映画 感想」などの検索ワードから、今も次々にブログへとアクセスされています。
今日の日曜日も、映画を観に行く人がたくさんいるでしょうね。
映画「ブッダ」はアニメですが、中国では孔子の生涯を描いた実写版映画が作られています。いつか、日本で「孔子」のアニメ映画を作ってほしいです。



2011年6月5日 一条真也